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第10話~バーバラの在校条件について~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

「すべての教員にはこのような個室が与えられているのですか?」


 ザックさんに職員用食堂の個室へ案内されていた。

 バーバラは先に到着しており、困ったように部屋の中をウロウロとしている。

 部屋には大きなテーブルが一台置かれており、椅子は八つ並んでいた。


「普通の教員はこの半分ほどの大きさじゃな。ワシは学園長じゃから、広めの個室なんじゃよ」

 どうやらザックさんの部屋だけ特別に大きいようだ。


(俺も職員だし、専用の部屋があるんだよな?)


 そんな疑問を抱いていると、ザックさんが軽く微笑む。


「さて、座った座った!」


 ザックさんからそう言われて、俺はバーバラの隣に座ることにする。

 反対側の隣には当然、ザックさんが腰を下ろしていた。


「バーバラ嬢、食事は?」


 席に着いたザックさんが魔法でティーカップを取り出し、ポットからお茶を注ぐ。

 温かい湯気と一緒に香ばしい香りが広がってくると同時に、俺のお腹が鳴る。


「私は大丈夫なので、ラビに食事をお願いします」


 俺を横目で見ながら、バーバラが気を使ってくれている。


「ハハハッ! では、まずは食事をすることにしよう」


 俺たちのやり取りを見ていたザックさんはおかしそうに笑う。

 そして指を一振りすると、テーブルの上に料理が並んだ。

 スープからは湯気が立ち上り、食欲をそそられる。

 目の前に現れた皿に載っていたのは厚みのあるステーキだった。


「ラビの好物の霜降りポークのステーキじゃぞ。遠慮なく食べるがいい」

「ありがとうございます」


 促されるままにナイフとフォークを手に取り、肉を口に入れる。

 すると肉汁が口の中に広がり、旨みが口いっぱいに広がった。

 塩味だけなのにとても美味しく感じられ、あっという間に食べ終わる。

 続いてスープを飲み干し、サラダを流し込む。

 一通り食べて落ち着いたところで、ザックさんとバーバラを見る。


「ごちそうさまでした。美味しかったです」


 ふたりに向けて礼を言うと、ふたりは驚いたような表情になった。


「と……とてもお腹が空いていたのね……」

「まだ食べられるなら、もっと用意させるが……どうする?」

「ステーキだけお願いします」


 俺の言葉を聞いて即座に行動を開始するザックさん。

 俺がおかわりをした後、ようやく本題に入ることになった。


「それで、お話というのは?」


 空腹も落ち着き、ザックさんが淹れてくれたお茶を飲みつつ、話を進める。


「うむ、実はバーバラ嬢の在校条件をどうしたものかと思ってな」


 その言葉に身構えるバーバラの様子を見て、ザックさんは苦笑する。


「そんなに硬くならんでもいいわい。ただ、四六時中ラビがバーバラ嬢の傍にいるというのは難しくなったのでな」

「確かに……ラビは……」

「それはそうですよね……」


 俺とバーバラは同時に頷く。

 俺が教師となってしまった以上、生徒であるバーバラとずっと一緒ということはできない。

 バーバラが授業を受けている時、俺も別の生徒を相手に授業をしているからだ。


(そうなると、他の場所にいるバーバラが爆発を起こした場合どうするか……だな)


 おそらく、バーバラの魔力放出による爆発を防ぐことができる人間は俺やザックさんだけだ。

 ザックさんでも、完全に防ぐことができるのか怪しいほど、威力が桁違いなのだ。

 俺がそんなことを考えている間にも、ザックさんの話は続いていた。


「この学校で魔法を使わない授業はほとんどない……バーバラ嬢、我慢できるか?」

「我慢……ですか?」


 その提案にバーバラは首を捻っている。


「そうじゃ。ラビが近くにいる時以外、魔法を使わないということじゃよ」

「まぁ……それなら……」


 ザックさんの話に納得の表情を見せるバーバラだったが、少し思いつめたように俯いてしまう。

 その表情はどこか暗い雰囲気を漂わせていた。


「……そうすればこの学校にいられますか?」


 消え入りそうな声で呟かれた言葉には、悲痛な響きが含まれていた。

 バーバラがどうしてそんな質問をしたのか理解できず戸惑っていると、代わりにザックさんが口を開いた。


「もちろんじゃ。座学で優秀な成績を残せば、卒業することだってできる」

「そうですか!」


 卒業という言葉を聞いたバーバラの表情がパッと明るくなった。


「じゃが、爆発で校舎や生徒に危害を及ぼした場合、問答無用で退学処分となることを理解しておきなさい」


 バーバラが念を押すように告げるザックさんの言葉に頷き、返事をする。


「はい、もちろんです」


 それに満足して、ザックさんはニコリと笑う。


「魔法を練習する時間はラビと相談して決めるといい。【あれだけの騒ぎ】を起こしたからもう防げるのじゃろう?」

「ハ……ハハハ……」


 ザックさんにそう言われ、バーバラが乾いた笑い声を出す。


「騒ぎ? なんのことですか?」


 俺は何のことかわからず、二人に尋ねることにした。


「王都の近郊で百回以上の爆発が観測された。お主たちじゃろう?」

「も、もちろんですよ……」


 ザックさんの答えに、俺も愛想笑いを浮かべることしかできなかった。

お読みいただきありがとうございました。

次回も書き上げたら更新させていただきます。

もしよろしければ、励みになりますのでブックマークやフォロー等応援よろしくお願いいたします。

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