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第4話~冒険者ギルド・下級魔法学校街支店~

ご興味を持っていただきありがとうございます。

この話も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

「学校長が一度このギルドにラビさんを連れていくようにとのことなので……お願いします!」


 フランシスが両手を合わせて頭を深く下げる。

 ザックさんに言われたため、どうしても俺にここへ入ってほしいようだ。


(いったい何の用なんだろうな……)


 冒険者を辞めてから一か月、いったい何の意図があって俺を呼び出すのだろうか。

 しばらくは冒険者ギルドに関わることは無いと思っていたので、本当に謎だ。


「どうか! どうか!! 私に免じて入っていただけませんか!?」


 思考していると、フランシスが俺の腰に抱き着き、必死に懇願してくる。

 ここまでされて無下にすることはできないと思い、渋々了承することにした。


「わかった。入るから離してくれないか?」

「ありがとうございます!! 中へどうぞ!!」


 フランシスは急に態度を変えてにっこりと笑う。


「はぁ……」


 俺はため息をつきながら扉を開けて室内へと足を踏み入れた。

 建物の中は思ったよりも広く、奥には大きなカウンターがあった。


「綺麗だな。なかなか清潔感のある所じゃないか」


 壁に掛けられたランタンの光がオレンジ色に照らす光景は、とても神秘的に見える。

 初めて訪れたギルドの中を観察していたら、カウンターの奥から大男が姿を現した。


「ラビか!? よく来たな!!」

「ローマン!? どうしてここに!?」


 俺とフランシスの前へ姿を現したのは、俺が元々居た街のギルド長であるローマンだった。

 以前と変わらず、筋肉隆々でトレードマークである白髭を優しく撫でている。

 その姿はまさに歴戦の勇士という言葉がぴったりであり、見るだけで圧倒されそうだ。

 ローマンは俺の姿を見て安心したように笑顔で歩み寄ってくる。


「てっきりお前のことだから絶対に冒険者ギルドには入らないと思っていたぞ」

「あいつを案内役に指名したのはあんただな? どういう事情があるんだ?」


 フランシスのことを顎で示しながら問いかける。


「あぁ、お前には俺から話したいことが山ほどあるんだが……まぁそれも含めて説明する。ひとまず座ってくれ」

「わかった」


 頷き返して、フランシスとともにカウンターの席に座ろうとした。


「……フランシス? どうした? 座らないのか?」

「はい。私は他の仕事があるので、一旦失礼させていただきます」


 そう言って頭を下げ、フランシスは冒険者ギルドから出て行ってしまった。


(仕事? ……そうか、今は下級魔法学校の職員って話だったな)


 試験の時にザックさんがそのように紹介してくれていた。

 これからもフランシスと会う機会があるのだろうと思いながら椅子に座る。


「──それで、話ってのはなんだ? できれば手短に頼むぞ」


 カウンターテーブルに両肘を置き、頬杖をついて聞いてみる。

 すると、ローマンは苦笑いを浮かべた。


「そんな邪険にするな。フランシスにもそんな態度だったのか?」


 ローマンが口にした言葉に、俺はため息をついた。


「フランシスにローマンと同じ態度をするわけがないだろ」


 はっきりと答えると、ローマンは腕を組んで楽しそうに笑う。


「仏頂面のラビも、かつてのパーティーメンバーは邪険に扱わないらしいな」

「そういう訳ではないんだが……」


 なぜか気まずい気持ちになり、頬を指で掻く。

 俺の反応を見て、ローマンはニヤリと笑った。

 そんな表情をされてしまうと、少し恥ずかい気持ちになる。


「そろそろ本題に入ってくれ」


 恥ずかしさを紛らわすように告げると、ローマンは一度だけ頷いた。


「そうだな。では単刀直入に言おう」


 少しだけ言葉を溜めてから、ローマンはゆっくりと話し出す。


「お前は新入生ではなく、下級魔法学校の教員として赴任してもらいたい」

「…………はぁ!? 魔法を使えない俺が……魔法学校の教師だって!?」

(何を言っているんだこの男は!?)


 あまりの衝撃的な話に思考が追いつかないが、これだけは断言できる。


(──あり得ない!!)


 何故なら俺は魔法を一つしか使えないからだ。

 それも、放出を一切しない【身体能力強化】のみ。

 そんな俺へローマンは教師になるようにと言っているのだから、正気とは思えない。


(どんな冗談なんだ?)


 俺はしばらく目を丸くしていたが、すぐに真顔になる。


「……何か裏があるのか?」


 率直な疑問を口にすると、ローマンは肩をすくめた。


「白銀級冒険者が下級魔法学校の新入生になるなんて国王に報告できないし、しても信じてもらえない」

「だから教師になれと?」

「そうだ。下級魔法学校の教員になるから、クエストへの強制招集は免除してもらった」


 ローマンは真剣なまなざしを向けてそう口にする。


(なるほど……そういうことならば納得ができるな)


 冒険者ギルドに所属する冒険者には緊急依頼という任務があり、指名されたら基本的に断ることは出来ないのだ。

 緊急依頼は高ランクになればなるほど増え、俺も数回招集されたことがある。


(ザックさんが教師になることを認めてくれているんだよな……)


 今の話でローマンがザックさんとも話をして、俺の対応を決めたことがうかがえる。


(ローマンだけじゃ、俺が魔法学校の教師になることを決められない)


 それに、新入生受付をした時のことを振り返ると、俺を他の新入生と同等に扱うのも無理があるのだろう。

 そこまで考えて結論を出した。

お読みいただきありがとうございました。

次回も書き上げたら更新させていただきます。

もしよろしければ、励みになりますのでブックマークやフォロー等応援よろしくお願いいたします。

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