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短編あれこれ

竜と涙と約束と。

掲載日:2023/10/31

 ポロポロと、夜を惜しむ朝露のように煌めきこぼれる。


 女の涙とは、そういうものだと思っていた。



 違ったな、思い切り。


 ぞうきんを絞っても、ここまでにはならんだろうと思うくらいドバドバと。

 顔中くしゃくしゃにして、真っ赤になりながら、目からも鼻からも体液を溢れさせている。まるで洪水。


 そんなに泣くと、後で目が()れるぞ?

 人間(ひと)の身とは、かくも弱いものだからな。


「もう泣くな」

「でも、でも……」


 嗚咽(おえつ)で言葉が震えている。


 可愛い、と、思った。

 異種族の女に対し、そう感じたのは初めてだ。


 地下遺跡の探検中、仲間に見捨てられた女冒険者。

 目の前の女の境遇は、それだった。


 地中の奥深く、飢えて死ぬだけだった儚い命が、私の前に転がり落ちてきたのは、単なる偶然。

 床の裂け目から転落し、最下層のこの場へ。

 私が封印された天然窟へ。


 無力な人間の娘。だが、私にとっては数百年ぶりに会話が出来る生き物。


 (いにしえ)に勇者に封印されて以来、暗い地下に閉じ込められていた私は、退屈しきっていた。


 話し相手として、女を()かそう。


 どんな豪剣でも通らない鱗に覆われた尾を、自ら断じ、糧食として女に与えた。


 歯が立たないという。軟弱者め。


 だが、それも最初の一口だけ。

 古代竜の身は、喰らうことによって大きな力を得る。

 肉を柔らかく潰し、飲み込ませた後は、食べれば食べる程、彼女の力は増した。

 もう自力で地下から脱することも可能だ。


 一方、私が封印空間から出るには、竜たるこの身を捨てぬ限り無理。

 しかし、遠き昔に立てた誓いのせいで、自死が出来ぬ。


 私は、目の前の女に希望を見た。

 存分に話した後は、私を殺してもらうのだ。


 私達はかなりの時をともに過ごし、そして私は満足した。

 だから、かねてからの思いを提案した。


 まさか断られるとは思わなかった。

 人間には忌み嫌われた竜だ。二つ返事で請け負ってくれるものとばかり。


 困ったな……。


「この身体を()てるだけだ。捕らわれているのだぞ? 何も出来ずに、このまま()ちていく。その時を早めるに過ぎん。終焉に向かう時間を独りで、この先何千年も待ちたくはないのだ」


 お前には我が身を取り込んだ力がある。私の命を絶つことが出来る。

 どうか私を(たす)けてくれ。


 切々と諭した。頼み事をするなど、以前の私には考えられなかったが、彼女を逃すと次はないかもしれない。


 女が折れた。

 

 そして。


 大粒の涙を、ボタボタと落としながら、剣を振り上げた。


(ああ。朝露ではなく、真珠玉だったか──)


 その思いを最期に、私の意識は闇に散じた。



 





 

母様(かあさま)、それでその竜はどうなったの?」

「必ずまた会おう、って約束してくれたわ」

「えっ、死んだのに?」

「そうね、ちょっと違うのかしら。魂の解放だと彼は言ったわ。次は人間(ひと)として生まれてくるって」

「ふぅん。会えたらいいね?」

「ええ」


 微笑んで軽い口づけを額に落とす女を──違う。母親だ、いまは。

 彼女を見送って、ベッドに潜り込む。


 人の寝床はあたたかい。


 今生(こんじょう)も、なかなか良き!




 お読みいただき有難うございました!

 あちこちのサイトで短いお話を書いているので、今回はノベプラ様から持ってきてみました(*´v`*)

 短編集にするか迷っていましたが、単独で。軽食がわりにおつまみいただけますと嬉しいです♪

 挿絵(By みてみん)

 ちなみに竜の力を得た女から生まれた子どもは、やはり超越した力を秘めてます。きっと。

 竜、抜かりなし!!


 ---

 ところで最初ハイファンタジーで投稿したのですが、周りの連載とタイトルを拝見していると…これは…純文学かヒューマンかも知れない。竜が出るからファンタジーって思ったんです( ;∀;) ←安易

 ジャンル迷子で落ち着くまでウロウロしてたらすみません。

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★直近の異世界恋愛な短編↓

『可憐な公爵令嬢が、婚約相手によって森に捨てられたという話だが。』

― 新着の感想 ―
[良い点] 今生『も』、なかなか良き。つまり前世も結構満足した死だったんだな、と 夫はいるのかな? 玉・・・ゲフンゲフン白子食べて受胎した系かと だって人外化してるからいろんな意味で人間が抱けると思え…
[一言] 竜であった時の記憶を持って、その女性の子供に転生しておきながら、 寝物語に己の話を聴き、挙句「会えたらいいね?」と宣う?! ‘今生も、なかなか良き!’じゃねぇよ。 良い性格してんなw
[良い点] 最後、おっ、てなりました。 ( *´艸`)
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