表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/46

20.『空間をあらわすもの』part 3.

「お待たせぇ、ヒュパティアがなかなか離してくれなくってね」


「大丈夫ですよ、これからはじめるところですから」



 メガラニカ王と公爵様の会談はビッグ対談なので、一応しっかり会議室を借りてセッティングした。御前会議かってぐらい豪奢な内装に、どデカいテーブルとゴブラン織みたいな椅子がたくさん並んでいる。思わず土下座ごっこしたくなっちゃうね。


 どっちも転生者なんだけど、それをバラすと確実に推定10代シャイボーイの公爵様が()()()()()()()気がする。まあどうせバレるだろうけど、予測を確定させないことで王のほうに負荷をかける作戦だ。ちなみに公爵様には、メガラニカ王が転生者でクズ野郎だということを伝達済み。



「ストーカー公爵家の当主、ジャマナ・ストーカーです」


「メガラニカ王……といっても国はもう滅しましたが、メガラニカ・アストロラーべです。お見知り置きを」



 王の名前、はじめて知ったわ。まずは私の案を二人に共有してもらう。避難民には王城、公爵領、西の森の3つから希望を聞く。次に面接。これは私が一人ひとりチェック。選択した場所の説明をして、移動って感じ。ほとんどの人が王城を選ぶだろうけど、公爵領や西の森を選んだ人はかなり見所がありそう。忠誠心とか、向上心とか高そうって気がする。



「ふーん……西の森ねぇ……」


「魔国では年に一回、ミッドサマーのお祭りで狩りの大会を開くんですよ。その場所が西の森なんです」


「へぇ……それって西の森はかなり危険ってこと?」


「どうでしょう……魔国の人たちはみんな楽しそうに狩りに行ってたし、ベアトゥス様なら余裕かと思いまして」


「あいつを基準に考えないでよぉ……」


「でも、断られてしまいまして。ベアトゥス様は、お料理がしたいとのことです」


「……は?」



 余裕の笑いを絶やさなかったメガラニカ王が、唖然としたように固まる。



「え、なになに? マジそれあり得ないんだけどぉ〜? え、嘘だよね?」


「まあ、ご本人のご希望なので……」


「本人が良いというのならば良いでしょう、魔国では()()()()()()()()()()()



 公爵様がやっと発言してくれた。頑張ってくれー。王はちょっと正論に押されてるっぽい。人の悪意ばかりに注目してはいかんのだよ。公爵様の純真さに焼かれておしまいなさい。



「まあ、そんなわけで……避難民の中に魔物と戦えそうな人がいたら、ぜひご紹介いただきたいんです。もちろん無理にとはいいませんが、お手当は(はず)みます」


「そんな奴いたかなぁ……あ!」


「誰かいるんですね?」


「ディキスとグリハルバってのが確かこっちに来てるよ。あいつらはかなり強いはずだ」


「え? グリハルバさんて人間だったんですか?!」



 私は王都で出会った二人組を思い出す。たしか、あの無口のでっかい男の人がグリハルバって呼ばれてた。てことは……占いのお姉さんはディキスさん?



「ミドヴェルトさん、知ってるんスか?!」


「あ、ちょっと王都で助けていただきまして……」


「それじゃ、悪い人じゃないんスね」


「いやぁ、でも彼ら、仕事で()()()してたけどぉ?」


「え゛……」



 あ、ヤバい。公爵様が王に遊ばれてる……早くどうにかしないと。



「そのお二方に連絡する方法ってあるんですか?」


「一応優秀だし、馬鹿じゃなければ向こうから来るだろ」



 こいつって、言葉の端はしに何か嫌な感じ(にじ)ませてくんだよなぁ……メガラニカ王だった奴の後ろにあるモヤモヤを見ると、早く切り上げてヒュパティアちゃんとイチャイチャしたい的な文章がダダ漏れだった。そうですね、早く終わらせましょう。ディキスさんとグリハルバさんのことがわかっただけでも、まあ良かったということにしておこうじゃない。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





 メガラニカ王が退出すると、公爵様は私に振り返って叫んだ。



「何なんスかアイツ!!」


「まあまあ落ち着いて。聞こえちゃいますよ?」


「聞こえたって構わねーっスよ! むしろ聞こえろッ!!」


「まあ確かに、かなり性格は悪いですが、今は協力してくれているので我慢しましょう」


「アイツ……ミドヴェルトさんのこと()()したって……マジすか?」



 ん? そんなこと言ったっけ?? ある意味、監禁されてた気もするけど……まあ異世界じゃありがちなことだし、気にするようなことかな? キョトン顔の私に、公爵様は眉根を寄せる。魔車の時間があるので、二人で小走りになり、少し声を抑えながら会話を続ける。



「ちょっとぉ……ミドヴェルトさん、しっかりしてください! 俺、姫から聞いたんスよ?」


「ああ、まあ……そう言われたら、あれは監禁だったかもしれない……かな?」


「はぁ? そんな感じでいいんですか……?」


「うーん……どうもゲーム感覚が抜けないというか……新章はじまった! って思うと何でも受け入れちゃうんですよね……」


「ミドヴェルトさんて……メンタル激つよっスね……」


「ははは……」



 そんなことを言い合っていると、魔車が到着する。見送りに来たホムンクルス姫が公爵様に挨拶するのを見ながら、アイテールちゃんにチョコを用意してなかったことに気づく。慌ててチョコ魔法で花びらチョコを目一杯出し、近くにいたメイドさんに妖精王女様へのお届け物をお願いした。これだけあれば何とかなるだろう。


 魔車の旅はかなり有意義だった。なんせ王様に全権委任された私と、公爵領での決定権を持つ公爵様ご本人が揃っているのだ。公爵領の雇用を創出すべく、人間たちの居住区を作り、仕事を割り振っていく。領民が分離しないように、人間と魔国民のトリセツをレクチャーする施設を作り、週イチくらいでお互いに交流したり情報のアップデートをはかったりすることにした。いわゆる教会だ。メガラニカの宗教をいい感じに魔国の雰囲気とブレンドして、ちょっと本地垂迹(ほんじすいじゃく)みたいにしてごまかす予定。



「うへえ……何スかぁ? 神仏習合って……こええっスよぉ……俺、神様のことけっこう信じてたのにぃ」


「ふふふ……信じる心、それこそが神なのです……」


「うわ、怖え、この人……」



 公爵様が軽く車酔いしかけて来たので、ちょっと休憩することになった。宗教なんて正直イワシの頭でもいいのだけど、設定萌えとかシナリオ萌えとか教義以外の部分も結構重要なのだ。人に何を信じさせるか。勝手に使命に燃えて夢を追いかけてる人には宗教なんて必要ないけど、みんながみんなそうじゃない。自分が何をしたいかわからないまま、何となくつまらない毎日を生きている人だとか、答えが見つからなくて孤独な人だとか、何をやってもうまく行かずに暗闇に落ちそうな人だとか。そういう人には宗教が助けになる。人間、やることがあれば何とか生きていけるのだ。そのリハビリを助けるのが宗教なんだと思う。海自の金曜はカレーの日みたいに、曜日ごとに行くところがあれば、日々の生活にリズムができるんじゃないかな。……たぶん。


 騎士団とかだと物騒だけど、教会なら来ない人の家を心配したふりして訪問するのも自然にできる。善意の押し付けだけど、わざとやってんだから問題ない。人間が魔国に溶け込むまで、何世代かはかかるだろう。魔国の人とは絶対交わりたくないって人間もいるかも知んないけど、そういう場合は王様にも公爵様にも迷惑をかけられないから、西の森に行ってもらうしかない。


 西の森プロジェクトは、私の私財を投じて少しずつ進んでいる。今は執事さんにお願いして、開拓してもいい場所をリサーチ中。あんまり強い魔物がいなくて、景色のいいところを希望したんだけど、何だかいい感じな湖の()()()がもらえそうなことを言っていた。いくら強い人間がいても、魔物に囲まれたら終わりだから、魔物よけの敷地浄化と結界は必要だろう。話によると、湖にはいい感じの小島があるみたいだから、ボート遊びとかも楽しめそう。


 何なら人間のアジトにしてくれてもいいし、自由に生きてほしい。年イチで狩り大会の御一行様をもてなしてくれればそれでいいのだ。たまに抜き打ちで様子見に行くかもしんないけど、人死にさえ出さなければ問題ない。


 マーヤークさんからもらった50億Gは、結局魔国で消費するのがベストだと思うのだ。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





「ヒュパティア様、復活したんだ……」



 公爵領に着くと、早速ピーリー君たちと面談。ネブラちゃんとウーツくんの説得もあり、バールベック君もどうやら納得してくれたみたい。ユルスルート君はやっと起きられるようになって、祖国の滅亡と避難民プロジェクトを理解した。そのほかの皆さんは、それぞれに思うところがあるみたいだったけど、そこまでヤバいモヤモヤを垂れ流してる人はいなかった。まあ、今はあっけに取られてるだけかもしんないし、定期的に健康チェックと称してメンタルも確認しよう。


 寒いし栄養が行き届いていない人が多かったので、念のためみんなに殺菌魔法をかけて、風邪っぽい症状が出てる人は個室で様子見ってことにした。みんな疲れ果てていたせいか、意外と公爵領に残留したいっていう人が多かった。魔国って響きで、王城がどんなところか想像できなかったっぽい。あと、工作員組は西の森を希望してくれた。未定だけど、ディキスさんとグリハルバさんに任せたいと私が話すと、知り合いだったみたいでみんな一気に(なび)いた感じ。私もディキスさんに占いまたやってほしい。



「じゃ、いいですか? 帰りますよ?」


「おっす! オッケーっス!」


「あの……バイクじゃないんで、あんまり腰に抱き付かないでもらえますか?」


「す、すんません!!」



 帰りがけ、でっかい公爵様にまるで二人乗りみたいに巻き付かれたので、軽くビビって注意してしまった。ベアトゥス様にも素でアバラ折られてるから、デカい男恐怖症になってるのか、なんだか慎重になってしまう。公爵様は、ベアトゥス様より縦にデカいんだよね。アイドル体型だから細めともいえるけど、デカい=怖いになっちゃうのだ。とにかく頭の中に妖精王様と黄色い魔法陣を思い受かべると、周囲が光に包まれて、教会のステンドグラスの明かりが見えた。



「おお……マジで帰還した……」


「ミドヴェルト様、公爵様、今度は一体どうしたんです?」


「おわ! ロプノールなのか?! そ、その格好は……?」


「ほら話したでしょ、新興宗教の大司教なんです」


「あ、そ、そっか……立派になったな」


「ありがとうございます。公爵様もご婚約おめでとうございます」


「お、おう……」



 何だか気まずい感じになっているけど、こっちの避難民もチェックしたいので、私は席を外した。やっぱあの二人にはあの二人の空気感があるもんね。さっきの公爵様はまさに、成長した息子に気まずさを覚える父親って感じだったし。新しい関係に馴染めるといいけど。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ