表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/46

19.『メガラニカ遺跡の謎』part 4.

「ふむ……こうして見ると、この町も寂れたもんだな……」


「ベアトゥス様は、賑やかだった頃のことをご存知なのですか?」


「ああ、この国が滅びる()()()()()()()()()()()だからな」


「ふぇえ?!」



 な、何から何まで理解に苦しむことばかりだよぅ!!


 さっき、町に出る許可をメガラニカ王にもらいに行ったら、案外サクッとくれた。主に勇者様が交渉してくれたので、私は被害者と認定されたらしい。半分寝ながら二人の様子を見ていると、王からまた文字が流れ出ていた。




<なーんだ、意外と使えるなァ。この調子で、このクソ勇者があの娘と恋仲になってくれたら、どっちか人質にしてこき使うって手もアリになるねぇ。ってことは、アレをこうして……いや待てよ、あっちをこっちに持ってきて……>




 このクソ王……ゲスの極みが過ぎる。まさかピーリー君も好きな人を人質に取られてる系なのかな……? とにかくベアトゥス様のご機嫌を損ねないように、間違わないようにしなければいけない。と思っていたのに……


 初っ端からすげえの来ちゃったよ……え? この勇者が国を滅亡させたってこと? と、とりあえず何でもウェルカム! 情報、ゲットだぜ!!



「今の王の先代にあたるメガラニカ王に、俺は仕えていたのだ。この辺一体を脅かすドラゴンを倒せという命を受け、まあ倒したまでは良かったのだがな……」


「良かったんですか?」


「これが結果としては良くなかった。そのドラゴンは、この国を温める役割を持った地竜だったのだ」


「ええ?!」


「まあ、俺様もそんなことは知らんし、なにより王の命を実行しただけなのでな」


「で、でも……」


「ふむ、お前、なかなかいい反応をするではないか」



 うっ……盛り上げモードが仇になりそう。もう少し抑えていったほうがいいのか? 急に(あご)クイをされて、頚椎が逝くかと思った。仲良くなろうって姿勢を示さなきゃいけないから、反抗せずに目を伏せて照れでごまかす。



「あまり……こういうのはまだ……」


「……ッ! そ、そうであったな……許せ!」



 あっぶねー……首プランプランで任務続行とか、某ライオンに噛まれた女優さんみたいになるとこだったわ……この勇者は、いろんな女性と肉食系の付き合いをしていたようだ。つまり、真逆の清純派キャラでプラトニックラブを目指していけば、免疫がないのでアドバンテージがとれるのではないか? まずは、いつもの技が通用しない的な違和感を与えて、自信喪失からの混乱を狙うしかない。でも混乱させすぎてバーサク状態になったら詰む。ふぅ……薄氷を踏むような難しさだ……


 それはそうと……ピーリー君はどこにいるんだろう。この勇者もモバイル転送装置持ってるかな? と思ったら、どうやら持ってなさそう。いろいろ制約もあるっぽいし、ガハハ系筋肉には、おいそれと渡せない代物なのでしょうか。王のモヤモヤモノローグから察するに、目の前の筋肉おじさんは最新機器使えない系勇者っぽい。



「あ、あの! あっちに行ってみましょうか!」


「そ、そうだな、歩こう!」



 何だか気まずい感じになってしまい、私はホムンクルス姫やアイテールちゃんと一緒に開いた、恋愛セミナーのことを思い出していた。あの時ほかに何やってたっけ……? いやいや、アレは中身が元日本人のライオン公爵様向けのモテテクであって、この筋肉勇者には通じないって……それより情報収集だって……



「ベアトゥス様って……おいくつなんですか?」


「年齢か? 23だが?」


「ごふッ!」


「どうした?!」



 と、年下?! ちょ、おじさんだと思ってた! 髭のせい?! わ、若者なの……? でも中世だと普通に大人か……急に混乱してしまい、挙動不審になる。年上の人だと思ってなんか避けちゃってたけど……ア……いやないな。やっぱり私も公爵様みたいに人間を特別視しているんだろうか? でもキャラデザはロンゲラップさんが一番好きなんだぁ!! ついでにいうと声も! あと、私に興味ないとこも好きなんです!! あと……あと……うぅ……何でここに来て恋愛脳が発動しているんだ……落ち着け……でもいたいけな若者を騙すようなことするのも、ちょっと精神的に()()わね。


 いや、おじさんだから騙していいとかは思わないけど、どうせおじさんは人生の酸いも甘いもいろいろ経験してるし、傷が浅いだろうみたいな固定観念はあるかもしんない。そんで、若者を傷つけたら傷が深そうって気もする。実際は個人差なんだろうけど……いやいや、まず傷をつける前提をどうにかしろ。私ってちょっとサイコパスなのかもねー。目的のために演技できるしなー。友達にも人非人って言われてたしー。頑張って気を使ってるのに冷たいって言われてたしー。


 すまん、ベアトゥス様。やっぱり計画は続行させてもらう。ただ、私のほうが年上設定って明かしていいものなのか……うぅ……やっぱサバを読んどくか……



「お、大人っぽいとは思っていましたが、もっとお年かと思っていました……」


「この髭で怖がらせてしまったのか。では後で剃っておこう」


「ご、ご無理はせずに……」



 ギリ、嘘はついていない。年下筋肉勇者君を伴って、私はピーリー君の捜索に意識を戻す。



「この国の皆さんは、どちらでお食事をとっているのですか?」


「……この国だと? お前はどこから来たのだ?」


「え、あの……昨日、魔国のほうから連れてこられまして……よくわからなくてすみません」


「魔国に人間がいるのか?!」



 急にベアトゥス様が私の手をつかむ。あれ? 失敗したか? そういえば王も「魔国」と「人間」て言葉に過剰反応してた気がするけど……それにしても目力(めぢから)つよ。……あ、あれ? 私の答え待ちかな? 側から見たら、手を握りながら見つめ合う感じになっちゃってるんですが……急に恥ずかしくなって目線を外す。うぅ……私の負けってことでいいです。



「わからなくて……すみません」


「あ、ああ……いや、これは、尋問とかではないからな、無理に答えなくとも良い」


「はい……」


「この国ではあまり外食をする場所はない。腹が空いたなら戻ろう」


「……はい」



 これ以上粘っても、無駄に不信感持たれちゃうかもしんない。もしかしたらまた来れるかもだし、ここは素直に従ったほうがいいだろう。


 そう思いながら何となく来た道を引き返すと、路地に人が倒れている。あれ? あの髪型って……まさか!!



「ピーリー?! どうしたんですか?!」



 慌てて駆け寄ると、瀕死の状態でピーリー君が横たわっていた。ななな、何があったんだよ!?? 私の後から、ベアトゥス様が追ってきた。



「なんだ、知っている者か?」


「ピーリーです。私をここに連れてきた者です」


「では連れて行ってやろう」



 ヒョイと少年を持ち上げる筋肉勇者。ちょ、そんな雑に?! でも私じゃ運べないし、文句は言えないか……頭とか打ってないといいけど……





⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘





「ヒュパティアが……死んだよ」



 豆腐建築の砂壁に帰ると、謁見の間で王がぼんやりと床に座っていた。あんなに忙しく向かっていたモニターは、気にもせず放置されている。



「何!? それでお前、ヒュパティアをどうした?!」


「あっちにいるよ……」



 王が指差す方向に私たちも向かう。ベアトゥス様はピーリー君を抱えたまま、私が変な検査をされたテストルームの奥にズカズカと入っていく。そこには、寝台に横たえられた美しい女性の姿があった。なんかいろいろと管がつながったり切れ落ちたりしていて、王が頑張った痕跡が感じられるけど……



「ほ、本当に、死んで……?」


「お前は見ないほうが良い。この者をあちらに寝かせておけ」


「は、はい……」



 私はピーリー君の肩を支えるように担いで、手近なベッドに寝かせる。ふと見ると、部屋の真ん中のどデカい水晶玉の影に、光る丸いビー玉みたいなものが落ちていた。



「これって……」



 魂……ということはもう……


 思わずベアトゥス様のほうを見ると、呆然と女性の死体を見下ろしていた。仲良しだったのか……?



「うっ……ぐあっ……がほっ」



 目の前のピーリー君が、苦しそうに()せた。私はハッと我に返って、治療しようと試みる。なんか消毒とか……包帯、包帯は……? 慌ててオロオロしていると、ベアトゥス様がそっと私を押しのけた。



「退け、俺がやる」


「ベアトゥス様……一体何が……?」



 ベアトゥス様は勇者ってだけあって、傷の手当ては手慣れたものだった。ベッド自体にも何か機能があるらしく、ピピッ♪ と何かのボタンを押した音がして、ピーリー君が安らかな寝息を立てはじめる。



「お前……そういえば、名を何という?」


「み、ミドヴェルトです」


「俺は、()()()()()()()()()()()のだな……」


「…………」


「ヒュパティアはな……俺の妹だったのだ」


「え……?」



 ピーリー君が目覚めたらどっちみちバレるし、素直に名乗ってしまった。……それにしても妹? だから滅亡の引き金を引いた使い道のない勇者でも、呑気に昼寝して好き勝手できていたのか? この……王城みたいな豆腐建築の中で。


 私はかける言葉もなく、ベアトゥス様の背中に、ただ黙って手を当てる。私にも妹がいるけど、こんなことになったら、もう感情がどうなってしまうかわからない。ベアトゥス様からは何の感情も文字化しては来なかった。見上げると、大きな体を震わせて、音もなく涙を流していた。



「ふっ……く……す、すまぬ……いっ……今だけだ……」


「ええ……はい……」


「いっ……妹っ……だったのだっ」


「そうですね……」



 もうどうしていいかわからんので、ひたすら背中をさすっていた。あんまりベタベタされたくないかな? やっぱ、ひとりにしてあげたほうが良いのかも……


 よく、ドラマとかだと「二人だけにしてください」みたいなシーンあるよね。まあまあ時間が経ったので、そっと離れようとすると、号泣する勇者様に抱きしめられてしまった。まあ、これはヤバい流れではないし、しょうがない……



「すまん……」


「大丈夫ですよ」



 肩の辺りにベアトゥス様の頭が来てたので、両手でヨシヨシしてあげる。……失礼か? 背中のほうにも手を回したいけど……筋肉で届かないのよね。妹さんの死因て……やっぱ過労死になる感じかな? シンプルに王のせい……と言いたいけど、そもそもベアトゥス様が地竜を倒したのもあって、自責の念も相当あるのではないか。命令だとかいって気にしてない雰囲気だったけど、逆にそこにしか逃げ道がなかったのかもしんない。


 はぁ……まさか死人が出るとは……もうダメだろこの国……





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ