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19.『メガラニカ遺跡の謎』part 1.

※長いので分割します。

「ど、どこなのここ……」



 目の前には、一面の荒野が広がっている。寒々しく、視界を(はば)むものは何もない。ピーリー君は、力なく膝に手をついて、皮肉っぽく呟いた。



「ようこそ、神国メガラニカへ。お前は今日からここで暮らすんだ」



 は? 暮らすって、どこで? 原始人だって洞窟に家とかあると思いますけど。こんな、どこまでも真っ平らな場所で、暮らせる人なんているの? なんて思っていると、ゆらりと目の前の風景が揺らいで、なんだか蜃気楼みたいに町が現れた。しかし、中世ヨーロッパとはいえない雰囲気。土と石の豆腐建築みたいな家が、いくつも連なっている。遠くの方に、一際大きな豆腐建築があって、ちょっと石柱で飾られてるっぽかった。何という豆腐国家……



「フン、助かったぜ。転送装置はもう()()()()()()()だ……」


「はぁ? ちょっと……!」



 今、転送装置って言ったか? ……つまり魔法じゃない? ピーリー君が握ってたボタンは、モバイル型の転送装置だったの? だとしたら、とんでもない科学力の発展した国じゃん!! 座標設定はどうなっとるんじゃ? 聞きたいことがたくさんあるんだけど、ピーリー君が答えを知っているかは謎だ。仕組みはわからないけど、一応使えちゃってるパターンかもしんない。いや、99%そんな気がする。


 サンドベージュの町に向かってスタスタと歩いていく少年に、仕方なくついていく。町に入るのに、なんか手続き必要かもしれないし。どこに向かうのかわからんが、目的地まではピーリー君に従うしかないだろう。食べれそうな木の実があるっぽい森が近くにあれば、逃げるって手もあるけど、ツンドラ感ものすごい真っ平な草地でどうしろってんだ! ジョコビッチみたいに草むしって食ってりゃ良いのか?!


 しっかしまあ……科学力が発展してる割に、酷くしょぼい町並みだ。とりま、寒いのでヒーター魔法を発動。もしかしたら魔法が使えない地域かもしれない……と心配したけど、問題なく使えた。ってことは、チョコも食べ放題だ。まあ、何とかなるだろう。


 こうなると、水魔法ができないってのが地味にキビい。ダメ元で今から練習しようかな……


 てくてく歩いていると、特に何の手続きもなく町に入れてしまった。気持ち的に少し余裕が出て、辺りを見回す。店っぽいのゼロ。豆腐建築だけが立ち並ぶ道。人通りも少ない。すべてが薄らベージュ色……この国の皆さんはこれで良いのか? なんか窓も、ガラスとかハマってなくて、穴オンリーっぽいんですけど……


 何となく物理&魔法結界を強化しておく。スキルってやつに効くかはわかんないけど。何もないよりはマシだろう。ヒーター魔法のおかげで一応はあったかいけど、およそ生命の息吹が感じられないせいで心が寒い。しばらく真っ直ぐ行くと、遠くから見えていたデカい豆腐にたどり着いた。建物の全面から漂ってくるやる気のなさが凄い。もしかして、中は最新技術バリバリのビルヂングってやつなのか?


 などと思いながら中に入るも、単なるベージュの世界だった。拍子抜け。



「ピーリー、どこまで行くんですか?」


「もうすぐ着く」



 飾り気のない土壁の廊下。天井だけはやたらに高い。高すぎて、上のほうは真っ暗闇だ。壁に松明の灯りがあるから、一応、廊下として機能しているって感じ。


 こいつに説明能力はあるんだろうか……? 聞きたいことはたくさんあるんだけど、さっきまでの感じだと、あんま答えてくれなさそうなんだよな……秘密主義ってよりか、単純に知らされていないって感じがする。ごちゃごちゃ考えながら歩いていると、ピーリー君からまた文字が出ているのに気づいた。




<とりあえず王に報告して……判定よかったら現在ランクの確認して……順位が上がったら今度こそヒュパティア様に……>




 王……? ヒュパティア……? そういや、何かポイント貯めてランキング上げると、成績上位者がどうのこうのって言ってたよな……ここって完全実力主義の国なのか……?


 とりあえず、行き先は王様んとこらしい。魔国の王様は話のわかるナイスミドルだったけど、こっちの王様は何系なんだろ?





⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘





「ピーリーか、よく戻った」


「ハッ! お言葉を賜り恐悦至極に存じます!」



 メガラニカ王は、思ったよりも若くて20代くらいに見えた。長い髪を後ろで縛っていて、服装は一応中世っぽい衣装みたい。謁見の間は、だだっ広いけどやっぱり土壁で、どっちかっていうと執務室みたいな雰囲気に見える。王の前には、譜面台というかプロンプターみたいな透明の画面がいっぱい並んでいて、机なしでiPadに囲まれてるみたいな謎の状況。メガラニカ王はといえば、忙しなく手を動かしてタップしたりスワイプしたりしてて、あんま人の話聞いてないっぽかった。と、トレーダーなのか……? 中世ヨーロッパ設定とは一体……



「戦果はあったのか?」


「ハッ! ()()()()()()()を回収してきました!」


「魔国に人間がいた……だと?」



 やっと手を止めて、メガラニカ王はこちらに目を向けた。何か……まあまあのイケメンみたいだけど、目蓋(まぶた)の下のクマがとんでもなくドス黒くて、目も若干死んでるような気がする。王冠は前に傾いて、ずり落ちかけてるのを直そうともしない。



「……おい、なんか言え!」



 小声のピーリー君に急かされて、私はメガラニカ王にご挨拶をすることになった。



「あー、えーっと……はじめましてぇ……何故か()()()()()()()()()、魔国の人間です。よろしくお願いしまーす」



 チョリーッス! とピースで敬礼。「何だよそれ!」と、ピーリー君がツッコミを入れてくる。んなこと言われたってねえ……こっちだって別に好きで来たわけじゃあないんだから。とりま様子見ですよ。この王がどこまで失礼なことされて怒るのか、はたまた怒らないのか。それとも出オチで即粛清か?! こっちは結界頼みだけど、初手はなんとか防げる気がする。……気がするだけだけど。


 メガラニカ王は、すぐに仕事を再開しながら「そうか」とだけ言って、あとは無言の時間になる。意外と無反応だった。こんな王が、あんな子供たちを雪山の廃墟に送り込んだってこと? なにゆえ……


 わけもわからずメガラニカ王の動きに注目していると、何故か王の後ろからもモヤモヤした文字がたくさん流れ出してきた。




<まずいな……ヒュパティアが限界だ……これ以上の負荷はかけられないから、今週はザクーの村が犠牲になる……>




 犠牲って……なんかヤバいのかな?



「あのー……ザクーの村って何があったんですか……?」


「おい、おま……!!」


「……ん? 君はスキル持ちなのか?」


「はぁ……わかりません」


「これまでに()()()()()()を受けたことがあるか?」


「……いいえ。たぶん……ない、と思いますけど……」



 答え終わる前に、急に立ち上がったメガラニカ王がずんずん私の方に歩いてきて、すれ違いざまに手を引っ張り別室へと向かう。やべ……ダイレクトに粛清か?!


 連れて来られたのは六角形の部屋で、やっぱり土壁。真ん中にどでかい水晶玉が置かれている場所だった。王が何やら操作すると、一気に電源が入ってヴォンッと音がした。



「そこ、座って」



 な、なんか怖いんですけど……私がチンタラしていると、メガラニカ王は腰に手を当ててため息をついた。



「だぁーいじょうぶだって! 座って、あご引いて」


「はあ……」



 ミロロロミロロロ♪



 私がおとなしく怪しい椅子に座ると、小さく電子音みたいなメロディが鳴って、私の頭の周りを謎の機械が回りながら飛んだ。これ……大丈夫系? 機械の雰囲気的に被曝量が怖い。結界効くといいけど……


 王は「なぁーんかボヤけてんな……」と呟きながら機械をイライラと調整していた。お? 結界効いたのか?





⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘





「結論からいうと、君のスキルは読み取れなかった」


「はあ……」



 しばらくひとりで待たされた後、何やら解析を終えたっぽいメガラニカ王が渋い顔で結果発表をする。さっきのはスキルテストってやつだったのね。インフォームドコンセントがまったくなかったので、何ひとつ納得も同意もできなかったけど。


 しっかし……私は部屋を見回す。謁見の間と、このテストルームは、箱は例の豆腐ベージュだけど、置いてある機器は最先端技術のオーラがすごい。基本的にモニターは、透明の板でなんだかお洒落だ。特にこっちのテストルームは大画面のモニターもあって、全体が水色っぽい世界で未来感がものすごい。壁は土だけど。



「君、なんで魔国にいたの?」


「川に流れ着いて……」


「まさか、()()()か?!」



 モチベーションが落ちかけていた王は、私の話を聞いて、また急に元気になった。忙しい人だなあ……でも転生かどうか、ちょっとハッキリしないし……私、前世のままの姿だし……わからない。それに、まだ死んでないと信じたい。だったら今の状況はなんだ? って聞かれると、知らんがなって感じ。メガラニカ王は転生者なの? それとも転生者の専門家??



「ねえ君、僕の仕事、手伝ってくんない? いいよね?」


「はあ……」



 嫌ですけど……少年兵を雪山に送り込むような王の頼みって、断れんの? 大体、何するってんだ。なんもできませんけど私。しかし、そんなやんわりとした拒否が通用するわけもなく、私はメガラニカ王の助手として強引に採用されてしまったのだった。




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