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18.『赤い糸と黒い集団』part 5.

「人間がいたって、マジっスか?!」



 領主館に戻って私たちの報告を聞いたライオン公爵様は、古城から連行してきた黒ずくめの組織に興味津々だ。ストチル工作員君達は今、別棟で隔離されている。寒すぎるから地下牢行きは(まぬが)れたようだ。しっかし、やっぱ人間に反応するよね……この人。


 公爵様は、吸血鬼だったときから人間至上主義だ。人間ってだけで私に婚約申し込んできたり、婚約解消してもいまだに親近感を持って接してくださる。中身は何だか世間知らずの若者って感じだけど、まあ素直で真っ直ぐなところは、いつまでも失わないで欲しいと思う。いやしかし……オッサンになっても素直で真っ直ぐだったら怖いか……


 やっぱ、いつかは清濁合わせ飲む大人の余裕も身につけて欲しいものだ。公爵様がやらかしそうなことを、いくつか想像しながら、憂鬱なため息をつく。ホムンクルス姫のことも、ほぼ人間ぽいから好きって最初にポロッと漏らしてたし、もしマジで人間の女の子と出会ったらどうなっちゃうのか恐ろしい。いや、あれからだいぶ姫との親密度も上がったみたいだし、考え方は変わっていると期待したいね。ていうか、ご本人はケモ耳なんですけど。



「人間といいましても……()()()ですから」


「でも人間なんスよね?!」


「はぁ、まあ……そうですけど……」



 監視の騎士さんに注意するよう言っとくべきかな? 軽く頭痛を感じながらも、公爵様対応を続ける。この人は、ある程度納得させておかないと何するかわからんのよ……ホムンクルス姫にも相談しとくか……藪蛇か?



「公爵様、よく思い出してください。人間にもいろんな人がいますし、もちろん犯罪者もいるんですよ」


「すんません……わかってます。でもやっぱり……気になりませんか?」


「気になるも何も……私、襲われましたし」


「えぇ?!」



 実際は矢が(かす)っただけだけど。少し盛ってみた。まあ敵愾心(てきがいしん)はバリバリぶつけられたし、あいつらがもうちょっと元気だったらガチで襲ってきたことだろう。たしかあの時、突っ切るとか何とか口走ってたし。私としては、公爵様が変に同情して罪人どもを逃したりしなければそれでいい。フルーツ屋……というか、食べ物の恨みは深いのよ。そう、フルーツ屋さんの代わりに怒ってるんじゃない、()()()()()()()()()のだ!!


 私の中で、あいつらは半グレみたいな扱いなのかも。更生の可能性なんか探る気もねーぜ。ていうか、半分グレてる……? いや、人様に矢を向けるなんて、完全にグレてるだろ!! グレ終わってんだよ! もはや完グレだろ!



「とにかく! あいつらは加害者です。密入国の疑惑もありますし、公爵様はご自分の領内に敵国のスパイが(ひそ)んでいたことについて、責任ある行動を意識してくださいね」


「敵国って……どこなんスか?」


「わかりません、そこら辺は調査中です」



 何となく神妙な雰囲気になった公爵様を見て、まあまあ説得できたかなぁ……と思う。応接室を出ると、ホムンクルス姫が待っていた。あれ? またやきもち焼いちゃった?



「本当なんですの? 襲われたって?!」


「あ、まあ……ちょっと矢が飛んできただけですよ」


「矢ってあなた……お怪我はなくて?!」



 よくわからんが私は心配されてるようだ。ホムンクルス姫は結構優しい。人は悲しみが多いほど、人には優しくできるってホントだね。考えてみたら、前世では宮廷内でいじめられてたんだっけ。もしかして怪我とかもしてたんだろうか……?


 豪華なカーペットが敷かれた廊下を歩きながら、私たちはお互いの1日について話し合った。私はずっと城壁にいて、あんまりホワイトヘイブン城の中には入れなかったけど。瓦礫が多くて崩壊の危険性があるから、今後一般人は立ち入り禁止にするらしい。残念だけど、城内の探検は無理そうね……


 一方、ホムンクルス姫は、公爵様と連れ立って寒冷地の食糧事情について話を聞いたり、村々の生活を見学したりしたんだとか。寒くて山深い僻地にあるせいか、公爵領にはあんまり大きな街はないらしい。道中は控えめアプローチが効いて、公爵様とはいい感じだったっぽい。萌え袖は気づいてもらえたかわからないけど、裾掴みは少し空気が変わったのを感じたとかなんとか。


 そんなこんなで視察はお二人にとっていいデートになったようだ。締めは湖のほとりにあるレストランで、公爵様が釣った魚をシェフに料理してもらって一緒に食べたんだって。元々そういうサービスをやってるお店なんだとか。



「えー、いいですね。私も魚釣りしたいです!」


「あら、じゃあ今度お誘いしますわ。実をいうとわたくしも気になっていましたの」



 領地検分中、ホムンクルス姫は公爵様の釣りを応援しているだけだったので、公爵領滞在中にまたひとりで行ってみようと思っていたらしい。この人……結構スタンドアローン系だよね……いや、前世がアレだし、わかるけど。


 部屋に戻ると、暇を持て余した妖精王女ちゃんがご機嫌斜めで迎えてくれた。



「おそい! もう()()()はなくなってしまったぞ!!」



 いやいや……それ、食い過ぎだから……







☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜






 黒ずくめの皆さんは、全員がストチルってわけでもないっぽかった。私は同じ人間ってことで、通訳がてら取り調べに同席させてもらっている。なんか当たり前に言葉が通じてたから気づかなかったけど、もしかして自動翻訳の能力があったのかな、私……


 とにかく、魔国の皆さんは人間の言葉がいまいちわからんみたい。騎士さんは外国に派遣されることもあるので、結構トリリンガル以上の言語能力を持ってるのが普通っぽいんだけど、全然通じなかったんだって。やっぱ、数千年交流がないと、そうなるもんなのか?


 子供に無理強いしても、意地張ってガード固くなるだけだろうってことで、朝早くから居心地のいい暖炉の間に移動。めんどくさいけど、一人ひとり分けて事情聴取する。



「えー私は魔国で働いております、()()()()A()です。よろしくお願いします。一応、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「お前! 人間だろ!! なぜ魔物の側にいるんだよ!」


「そうですね……ご縁があったからでしょうか。ピーリー」


「クッ……」



 てめえの名前はもう知ってんだ。チョロ穴のピーリー君。私の勘では、こいつが一番口軽そうだったので、騎士さんに頼んで1番手にしてもらった。あと名前知らん2人組もチョロそうだったけど、まずはこいつだね。室内は暖かくて、お茶の香りも漂っている。雪の古城とは大違いの環境で、リラックスしてもらって心を折る作戦だ。北風と太陽みたいな、例のアレ。



「ピーリー、あなたは魔国に入国するにあたって、登録証などの手続きをしていませんね?」


「フン、知るか!」



 私は、モコモコモルドーレさんにもらったリストを順に確認していく。ざっと見て、こいつは5つ以上の法律違反を犯している。まったく、どうしようもない奴だ。しばらく質問を繰り返すと、ピーリー君のお腹がグゥーッと鳴った。



「ピーリー君。昨日のご飯は食べましたか?」


「はぁ? なんだよ、いきなり」


「実はあれ、私が頑張って作ったんです。美味しかったですか?」


「うま……まあまあだった」


「それは良かったです。ユルスルート君は別室で治療を受けています。もう命の危機からは脱したそうですよ」


「そ、そうなのか? どこだ!?」


「あなたは犯罪者として逮捕されたんです。身柄は拘束されますが、安全は保証されます。ほかの子も同様です。この話し合いが終わったら、朝ご飯にしましょうね」



 こいつはビビらせるより安心させるほうが口を割りそうだ。……と思う。ご飯は人間が好きそうなものを領主館のシェフにちょっとアドバイスしただけだけど、懐柔策として私が焼きマシュマロを追加したのは事実だ。気分的にチョコはまだあげたくない。……見ただけじゃ、こいつらがどの程度まで洗脳されてるか、どんな情報を持ってるかはわからないけど、何を考えてるのかわかれば対策はできるだろう。



「……じゃない……」


「ん? 何? 聞こえない、何か言いました?」


「俺は子供じゃない! 実用性の高いスキルだって持ってるし、この任務が終わったら「上位者」になれるんだ!!」



 ちょっと優しいフリして、こいつが気にしそうなことを煽っていこうと思ったら、初っ端で落ちた。さすがだね、ピーリー君。私が見込んだだけのことはあるよ、キミ。


 どうやら人間の国では、魔法じゃなくて「スキル」の能力者が存在するみたい。そんで役に立ちそうなスキル・ホルダーは「上位者」とかいう恵まれた地位を約束されるのだとか。才能とやりがい搾取の匂いがします先生……私はぐったりしながらも、なんとかピーリー君の自慢話に付き合ってあげた。この子、マジで可哀想なストチルなのね……はぁ……思わず自分のホットチョコを一気に飲み干すと、目の前の空腹男子が物欲しそうに喉を鳴らした。すまん、これも作戦なのよ。


 そんな感じで、ほかの子とも順次面談をしていく。バールベック君は結構口が堅そうで時間がかかったけど、一宿一飯の義理があるってことでゴリ押ししたら、少しだけ話をしてくれた。真面目か。二人組のほうは、女の子がネブラ、男の子はウーツという名前だと判明した。



「……焼きマシュマロ、もっとくれたら喋る……」



 ネブラちゃんは、暖簾に腕押し、糠に釘。食べ物に釣られて即、寝返った。地味な見た目とは裏腹に、竹を割ったようなサッパリとした性格だ。地元には嫌な思い出しかないタイプなのかもしれない。ご褒美にたっぷりのマシュマロとチョコファウンテンを出してあげたら、信じられないほどいっぱい食べた。痩せの大食いとはこのことだろうか……



「えー? ネブラ裏切ったの?! じゃあ俺もー!」



 ウーツ君は、ネブラちゃんについて来ただけみたいな雰囲気だったけど、軽過ぎてイマイチ信用できない。もしかすると、ただネブラちゃんと一緒に居たいだけの寂しがり屋さんなのかもしれないが。騎士さん達がいいって言うので、この2人は一緒にしておくことに。ネブラちゃんがチョコパ真っ最中だったので、ウーツ君も参加して大騒ぎしていた。あれ……? あ、ネブラちゃん……ごめん。ちょっとウーツ君のこと苦手だったのかな??


 ま、まあ……喧嘩はしてないみたいだし、大丈夫ってことにしよう……







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