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18.『赤い糸と黒い集団』part 4.

「うー……心が寒い……」



 一面の雪景色と石の壁。私の目の前には寒々しい風景が広がっていた。あと枯れた草。ヒーターの魔法で寒くはないけど……心細い。待つって……一体いつまでなのかな? なんとなく久しぶりの待ち時間で、何をしたらいいかわからなかった。今、私にできることってなんかある? ……うーん、思いつかない。仕方なく壁際に雪だるまを並べる。6つくらいまで完成すると、なんだか背後に気配がした。


 え、これ、振り向いていいやつ……? 敵は今、騎士さんたちが追ってるはずだし……ま、まさか……



 パタタ……パタタ……パタ……パタ……パタ……コケッ



 あ、最後転んだ。ピエノ村の人が6人? 何だろ、なんかちょっとミニサイズ? 私の作った雪だるまを不思議そうに眺めている……ような雰囲気。こ、子供か……?



「君たち、ピエノ村の子なのかな?」



 雪だるまに集中していたピエッ子たちは、ハッと気付いたように私のほうを見た。……ような気がした。



 パタタ……パタタ……



 足首オンリーのピエッ子たちには顔も口もないけど、集まって何かコソコソ話し合っている……ように見える。暇だし、ちょうどいいから話し相手になってもらうか。何言ってるかわからんけど。こうして見ると、ピエッ子たちもなかなか可愛いね。こんなとこまで探検に来ちゃって、某少年探偵団なのか? 裸足で寒くないのかな? まさか……魔国ってみんなヒーター魔法ができる……? さっき私、偉そうにヒーター覚えた宣言とかして、恥ずかしい状況だったのかもしれない……うぅ……


 少しして、打ち合わせが終わったのか、代表のピエッ子がひとり前に出てきた。



 パタタ……パタタ……



 え、どうしよう。私、足話(あしわ)わかんないよ……もしかして雪だるまが欲しいのかな? と思って雪だるまを一個持ち上げると、パタタパタタ……とさざめきのように足話がはじまった。よくわからんけど、代表のピエッ子に雪だるまを乗せてみる。ピエッ子は喜んでいるようにステップを踏んで、みんなの輪の中でエッヘン! とちょっと偉そう。しょうがないので、みんなにも雪だるまを乗せてあげた。なんかに似てる……とさっきから考えていたんだけど、某珈琲店の長靴グラスにソフトクリーム乗ってるみたいな感じなのだった。


 何だかファンタジーな光景になっているピエッ子たちを眺めながら、こいつらチョコ食べるかな? などと考えていると、急に声が聞こえてきた。



「クソッ、こっちも固められてるのか!」


「ユルスルート! しっかりしろ!!」


「一か八か、突っ切る!」



 やっば!! まさか敵?!!



 私は焦って、外側の石壁から城壁まで、とにかく道幅いっぱいに結界を張る。飛び回るピエッ子たちを全員覆うくらいに、ピンクの半球がグワッと広がった。



「み、みんな! こっち来て! 私の後ろに隠れて!」



 私はピエッ子たちの言葉がわからないけど、ピエッ子たちは私の言うことがわかるっぽい。パタパタと集まってきて、私の後ろに移動してくれた。念のため、結界の隙間とか死角とかチェック。よし! とりあえず物理も魔法も防御できるはず。あとは、騎士さん達が来てくれるまで耐えられるかどうか……うぅ、キンチョー……


 でも、現れた敵さんは何だかボロボロだ。ギリ逃げてきた感じか……?



「おい女、そこを通せ!」



 ……あぁ、そうだよね……この世界に来て、初っ端フワフワちゃんと出会っちゃったから、失礼な扱いを受けるのは久々だわ……まあ、最弱一般人女性だから当たり前か……だが、断る。


 こいつらはすぐ襲って来なかった。交渉でどうにかしたいと思っているらしい。3人しかいないし、騎士さん達に散々やられて、敗残兵的なやつなのかもね。体力がないか、武器がないのかもしれない。何だかひとり重傷っぽいし。つまり、話が通じる可能性が高いということだ。



「あんた達、もしかして()()()()()()()()()()……?」


「はあ? お前には関係ないだろ!」


「関係あるって言ったら、答えてくれるのかな?」


「うるせえな、あんなごちゃごちゃしたとこなんか二度と行くかよ! いいからそこをどけ!」



 ははーん、おめーらか……私のお気に入りの店をぶっ潰してくれたのはよぉ……結界を解かないのは決定事項として、私が使える魔法といえば、火魔法と殺菌魔法とチョコ魔法だ。何ができるだろうか? こいつらにダメージを与える方法は……そう。




 こ れ し か な い !!!




「ピエッ子ちゃん〜! みんなでマシュマロ焼こうか〜!」



 私はサプライズチョコパを実行した!!


 手始めに雪で椅子を作って真ん中に焚き火を設置。枯れ草に火をつけて、キャンプファイアーの準備はOKだ。ピエッ子ちゃん達は器用に枯れ枝を拾ってきてくれる。たまにどんぐりの帽子が付いてるのが可愛らしい。いい感じの枝を6本選んで、それぞれにマシュマロをぶっ刺す。あいつらに見えるようにカメラ目線で。


 ピエッ子ちゃん達が枝を持てるのか、はたまたマシュマロ食えるのかわからんけど、正直そこはどうでもいいので、焚き火を囲むように枝を地面に突き立てた。いい感じに焼けたら、チョコソースをかけてハフハフしながら食す。雪の椅子に乗ったピエッ子ちゃん達は、楽しそうに飛び跳ねていた。貰った焼きマシュマロをどうするのかと思ったら、てっぺんからバッカルコーンみたいな触手が出てマシュマロに食いついた! マジか!! ……んーそうね、これもギャップ萌えかもしれない。



「な、何だよこれ……!!」



 敵さんが混乱している……狙い通りの反応だ。私の結界は、物理攻撃や魔法を一切通さないが空気は通す。そうじゃないと長時間引きこもれないからね。仕組みはわからんけど、ありがたい仕様だ。そんなわけで、香ばしい焼きマシュマロの匂いは、黒ずくめの敵にも届いたみたい。溶けたチョコもいい感じに匂いを漂わせている。あえて少し焦がして、風下の皆さんにおすそ分け。カップ1個しかないけど、チョコレートドリンクも作ったので、ピエッ子ちゃん達にお勧めしてみた。



 パタ! パタ! パタタ!!



 熱いから気をつけてねー! 最初の子が火傷しちゃったのか、ピエッ子ちゃん達は恐る恐るチョコレートドリンクの味見をしていたが、いつの間にか代わるがわるカップにバッカルコーンを突っ込んでわちゃわちゃしていた。人気のようで何よりです。



「何食ってんだよ! 俺にもよこせ!!」


「ばっ、ピーリー! 何言ってんだ!!」


「でもアイツら……クソッ!」



 興奮してるときって、アドレナリンとか出てて痛みも感じないんだよね。でもさ、落ち着いてくると事情は変わると思うんだ。そう、あんた達のようにボロボロだと……ね。ふふふ……あれ? 私、悪魔なのかな? わからん。



 でもさ、じゃあ……フルーツ屋さんをあんな風に潰す奴は一体何なんでしょうね……?





 大丈夫、単なる倍返しだ。





「君たち……何歳なの? 結構若く見えるけど」


「情報を引き出そうとしても無駄だ!」


「反抗期ってことは10代後半かな? 実家のご両親も大変でしょうね」


「親なんかいない……!」



 おっと、ストチルか? こいつらの事情はよくわからんが、こんなところに送り込まれるくらいだから、あんまり大切にされてないのかもね。いわゆる少年兵ってやつ? こんな子供を雪山に送り込むなんて、かなりやべえ組織だな……って、こいつらどこ中?



「あんたたち、人間なの?」


「な、何でわかった?!」


「馬鹿! ピーリー!!」



 なるほろ、主にこのチームのフロントマンらしきピーリー君が穴のようだ。チョロい。そんで、あのグッタリ系男子がユルスルート君らしい。もうひとりの名前はまだわからない。



「ユルスルート君……だっけ? その子、大丈夫なの?」


「な! 何で名前を?!」



 いや、おめーらがバラしまくってたからだろ……? と言ってしまったらガードが固くなりそうなので、あえて能力で暴いた感を出しつつ微笑んでみる。こういうとき、つい参考にしてしまうのが執事さんだったりするのは内緒だ。ストチルその1のピーリー君は、少しその目に怯えを見せつつ、ガクッとその場に膝をつく。そろそろどっか痛くなってきたのかな?



「お前……お前も人間なのか……」


「ピーリー! しっかりしろ!!」



 ストチルその2の名無し君が、ストチルその3のユルスルート君の重みに負けて同じように膝をつく。そろそろ精神が限界のようだ。


 ……どうしよ、これ。


 はっきり言って助ける気はない。私は執事さんのいう通りに戦わないで結界張ってるだけ。卑怯ってあの悪魔が言うんだから、なんか見知らぬ罠とか張られてるかもしれないし。よくある「愚かなり!」みたいな展開になったら嫌だしね。私ひとりならまだしも、美味しい焼きマシュマロを、バッカルコーンで金色(こんじき)の野に降り立ってるみたいにして堪能しているピエッ子ちゃん達に危険があってはいけない。……ってあれ? あ、熱いの? 食べれない? ちょっと冷ましてから……え、トロトロのところを行きたい? うーん……き、気をつけて……



「ミドヴェルト様、ご無事でしたか」



 ピエッ子ちゃん達にマシュマロの取り扱い方法をレクチャーしていると、黒モヤ騎士バージョンの執事さんがやっと来てくれた。ストチル3人組は、いつの間にか雪の中に倒れていたらしい。



「あ、すみません。ピエノ村のお子さん達が迷ってたみたいで……」



 パタタ……パタタ……



「なるほど、さすが教育係の本分ですね」



 目の前の黒モヤ騎士が、なんか笑ってる気がする……なにゆえ……? ちゃんと言われた通りに、結界張って時間稼ぎしたのにぃ! 納得のいかない私をよそに、騎士さん達はテキパキと黒ずくめの3人を回収する。



「ピーリー! ユルスルート! バールベック!!」



 古城の中で捕まったっぽい黒ずくめの2人が、意識のない3人組を見て叫んだ。名無し君は、バールベックという名前だったのか……しかし、この子ら、潜入に向いてなさすぎないか? いや、私が某最重要指名手配犯のドラマ見過ぎなのかな? まあ子供だしな……というか、人間なんだよな、こいつら……




 人間の国って……もしかして()()()()()なんじゃない……?







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