表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/46

15.『テラリウム・シンドローム』part 1.

※長くなったので分割します。

「なるほどな、これでだいたいの資料は揃った」



 青髪メガネ悪魔のロンゲラップさんは、私の『歌』に興味があるっぽかった。いろんなカードを渡されて、その通りにイメージや言葉を思い浮かべる実験。歌の効果は念じる「言葉」によって発動するらしい。「歌」・「音」・「音楽」・「曲」・「調べ」っていう単語と、歌のジャンル名・歌手名などを思い浮かべると、ロンゲラップさんが頭を抱えて苦しみだす。逆に「今日はいい天気〜♪」と歌っても、キーワードが含まれていないから発動しない。鼻歌も同様……みたい。


 ……なんせ、実験はすごく大変だったのだ。





「あぐッ……くッ……ぐぅッ……!」


「はわわ……す、すみませぇん!」


「……問題ないッ……つ、次はコレを読めッ……」


「わわわわわかりましたぁ……!!」





 クールイケメンが苦痛に顔を歪め、床をのたうち回りながら、ペンを取って必死にメモする姿は、何かこう……すごく来るものがある。

 



 ……新しい扉が……開きそうだよ……




 人知れずそんな雑念を抱きながら、私はロンゲラップさんと『歌』の秘密に迫っていったのだった。あくまで真面目な話である。この『歌』は、人間である私にはまったく聴こえない。そんでもって、少し鈍感な魔物や妖精には、ただの素敵な歌に聞こえる。……らしい。


 フワフワちゃんが聴きたがったのは、こういったワケみたい。だけど、感覚が鋭敏な天使と悪魔には効きすぎて失神するレベル。これが、天使のオジサンをして、意識不明の重体に(おちい)らせている理由なのだった。エニウェトクさんは……実はもう目覚めたらしいんだけど、青髪&執事がタッグを組み、悪魔総出でボコって今は強制的に眠らせているんだとか。な、なんちゅうことをしてるんだ……まあしかし、あの悪魔は凶悪すぎて迷惑だから仕方ないか……ボコりを納得させられるレベル。


 ただエニウェトクさん曰く、『歌』からの目覚めはすんごく気持ちよかったらしい。……貴重なモニターのご意見だ。


 天使のオジサンのほうは、いまだ起きる気配ナシ。よき目覚めが訪れますように……





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜






「うるわしのおさなぎみたるわれがゆるしをこう、きょういくがかりどの、こたびのことまことにあいすまぬ」


「そうですね……素直に謝れて立派です。王子殿下もきっと許してくださいますよ」



 私は謝るアイテールちゃんに、できるだけ優しく接してるつもり。もうお付きの妖精さんもいなくなっちゃったし、妖精王女殿下とはいえ、心細いだろう。


 でも結構ヤバめの育ち方したっぽくて、この子のどこに地雷があるのか皆目わからないのだった。



「そ……それは、きょういくがかりどの()、われをゆるさぬといういみか……?」



 んなわけないじゃん……何でそんなマイナス方向にばっか行っちゃうのかなぁ……? でも実家じゃ、あのお付きの妖精とかにエグいプレッシャーかけられてたのかもね……こりゃあ、教育し甲斐があるかもしれませんぜ……とはいっても、児童心理学とか全然知りませんけど!



「いいえ、私はすでに王女殿下が本当はいい子だと知ってるんです。だから、許すも何も……それ以前に別段、怒ってないんですよ」



 とりま、あなたはよい子〜あなたはよい子〜と、こまめに暗示をかけていこう。褒めて伸ばす。自己肯定感とやらを育んでほしいものだ。アイテールちゃんはホッとしたように、私の肩に止まった。あの一件で(かば)ったせいか、すっかり懐かれたっぽい。……となると、妖精王様やお付き妖精の顔色ばかり伺ってたに違いないアイテールちゃんは、今度は私の動静をチェックするようになるってこと……? なんか不健全なのよね……依存されないようにしなければ。なかなか高度な案件かもしれない。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜






「ああ、ここに居たんだ。もう体調はいいんですか?」



 フワフワちゃんが王様に呼ばれていってしまったので、私は妖精王女アイテールちゃんとお城の庭園に来ていた。花がたくさん咲いていてまったく魔国っぽくはないけど、空から見たのと同様、お庭もいい感じにヨーロピアン。ただし今いるところは裏庭で、ターシャ系っていうか……野趣あふれる感じのラインナップになっている。アイテールちゃんお気に入りのスポットだ。


 そこに、大きな箱を持ってロプノールさんがやってきた。青ツノ金髪イケメンでエルフ耳なんだけど、イケメン過ぎず少し小さめで、持ってる箱のデカさに負けてる感がある。



「どうしたんですかぁ? それ!」



 急な第三者の登場にアイテールちゃんが人見知りを発動したっぽいので、私はお花越しに遠くからロプノールさんに声をかけた。勘のいいロプノールさんは、少し離れたところで立ち止まって、ちょっとだけ箱を持ち上げる。



「まだ安静にしてなきゃかと思って、暇つぶしのゲームです!」



 ロプノールさんは、私が10日ぐらい寝ていた間に異変に気づき、自分なりに情報収集していたらしい。まあ、毎日のように一緒にご飯食べてボドゲしてたしね、心配かけて申し訳なかった。ここんとこ、なぜか特別扱いで、ご飯は自分の部屋で食べてるから、私は大広間の食堂まで行ってなかった。だからロプノールさんは、私がまだ寝たきりで、暇を持て余してると思ったらしい。執事さんが何か企んでるっぽくて、ここ数日は何となく外に出にくい雰囲気だったのだ。



「いいですね、やりましょう!」



 不安そうなアイテールちゃんを(なだ)めながら、3人で近くのガゼボに行って、テーブルにゲームを広げる。何重にも積み重なった箱は、それぞれ砂と細かい道具がたくさんセットされていた。これはアレか?



「箱庭っていうんです。これは昔からあるタイプのもので、こうして砂を自由に動かして……ほら、山を作ったり木を配置して、理想の庭が作れるんですよ」


「可愛いですね……すごく良くできてるなぁ……あ、こことか超リアル」


「やってみます?」



 ロプノールさんは、アイテールちゃんに笑顔で声をかける。私もそうだったけど、この人って、いつの間にか心にスッと入ってくるコミュ力の高さがあるんだよね。アイテールちゃんも手渡された木のフィギュアを持って、恐る恐る箱庭に置く。少し笑顔になってこっちを見るので、私も笑顔で返す。



「今、魔国ではこれと似たようなテラリウムっていうゲームが流行ってるんですよ。ただ、そっちは水魔法も使うし、ちょっと管理が大変なので……興味があるなら今度持ってきます」


「えー? 気になりますー!」


「わ……われもきになるゆえ、もってくるがよい!」



 アイテールちゃんの積極的な反応に、思わずロプノールさんと笑顔で目を合わせてしまう。ふふふ。フワフワちゃんも居たら良かったのにねー。魔国でのんびりできる面子(めんつ)勢揃いになったんだが……ま、しょうがない。今回は3人でこの砂バージョンの箱庭をやってみることにした。



「うーん……」


「…………」


「あ、失敗……」



 箱庭は、みんなでワイワイって感じじゃなくて、結構無言になっちゃうやつだった。でも不思議と無言でも気にならない。なんかこの砂遊びみたいな感じが、妙に思考の渦を呼び寄せるというか……


 こんな木のある公園、よく通りかかってたな……




 ……だからお前ってさ! …………! ……




 ん? 誰の声? 急に変なシーンが思い浮かんで、ふと我に返る。車のライトに照らされて逆光の人が何か叫んでるみたいだった。現実の記憶? いまいちハッキリしない。何となく胸の真ん中に(くさび)を打ち込まれたような鈍い痛みを感じる。嫌な思い出なんじゃないかな……せっかく忘れかけてるのに、わざわざ思い出してどうするって感じ。ナシナシ。それよか、もっと木を置いて良い箱庭作ろう! そんなふうに思って手を伸ばすと、ロプノールさんと同じものをつかんでしまう。



「あ、ごめんなさい……」


「いいよ、これ、使う?」


「うん、あ……ありがとー!」


「どういたしまして、フフッ」



 他愛無い会話。な、何だろ……なんか恥ずい。変な雰囲気になっちゃったので、あわててアイテールちゃんの箱庭を見る。人型っぽいのが二つと丸い石が置いてあって、妖精王女様はそこで考え込んでいるみたいだった。



「これは何かなー? 妖精王様と王妃様??」


「……われはもうわからない。われは……もっとふさわしきものからうまれたかった」


「え?」


「われは……ちちうえがたおったえのころぐさからうまれたゆえ……」



 アイテールちゃんが、涙を浮かべて猫じゃらしっぽいフィギュアを抱きしめる。な……なんか変なところにツボっちゃったみたいだぞ? たぶんそれは池に配置するガマの浦だと思うんだけど……まあ形状はエノコログサに見えなくもない。聞くと、妖精の王女は綺麗な花から生まれるのがデフォなんだけど、アイテールちゃんは雑草から生まれちゃったので肩身の狭い思いをしているらしかった。それであのお付きの妖精が変に頑張ってしまったのか……?


 でも、だからなのかな? 気位が高い人が多いという妖精の中でも、アイテールちゃんが素直で親しみやすい子なのは。フワフワちゃんとも仲良くなれたし、どう生まれようが悩む必要なんてないと思う。



「私は、エノコログサも可愛くて大好きですよ!」


「ほ、ほんとうか……?」


「僕も好きです。エノコログサは穀物の原種ですからね、昔はよく炒って食べたりしていたんですよ」



 で、出た! ロプノールさんの面白雑学!! 猫じゃらしって食べれたんだねー。私もたまに麦っぽいなーと思っていたわ……しかし、アイテールちゃんはやっぱり微妙な問題抱えてたようだ。今は平和だけど、妖精王様の手がまた伸びて来ないとも限らないし……これからも心配の種は尽きないだろう。



「……妖精の国から、またお迎え来ちゃうんでしょうか?」



 何の気なしに口をついて出た、私の失言に、妖精王女はこともなげに答えた。



「だいじょうぶじゃ、きょういくがかりどのには、ほうびとしてようせいおうの()()をさずけておる」


「へ?」



 にっこり笑うアイテールちゃんの話によれば、花びらチョコの褒美として、私には妖精王の加護があるらしい。だからあの時、お付きの妖精に殺されなかったっぽい。妖精王の加護があれば、妖精からの攻撃が無効になるとかなんとか。でもアイテールちゃんは妖精王じゃないのに何で……? と思ったら、魔国に行くと決まった日に3回まで使えるようにしてもらったんだとか。パパのクレカ使わせてもらってる的な……? 思いのほか愛されてるんじゃないのかな?


 と、とりあえず! これで一応、妖精にも無敵状態になったぜ!!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ