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14.『契約の儀式』part 1.

※長くなったので、分割します。

 号外!! 魔国王子殿下が妖精王女と婚約か!!





 その日、魔国にもたらされたニュースは一気に国中に広がった。真偽不明の噂だけど、ありそうっちゃありそう。


 もちろん、こないだのいざこざが事の発端である。



「……というわけで統率者たるロワがお呼びです……」



 私を呼びに来た執事さんのテンションが、ダダ下がりなのが見て取れる。この人すぐ落ち込むからなあ……きっとフワフワちゃんに迷惑かけたことが自分でも許せないのだろう。とはいえ、あれは厳密には赤髪の悪魔のせいといえるんだけど。そういやアイツ、どうなったんだ??


 とにかく王様んとこへGO。何だか外交的にいろいろ揉めてる最中で、戦争回避の苦肉の策で、政略結婚の話が浮上してきたんだとか。妖精王様は力が強いので、魔国としてもその意向を無視できないらしい。私たちも実際、無人島に飛ばされて大変だったしね。いや、亀か。



「魔国としては、内々に交渉して王子の婚約は避けたかったんだがな……」



 王様は困り顔だった。なんたって魔国の王子たるフワフワちゃんの結婚相手だもんね、もっと慎重に選びたいんだろう。



「敵もさるもの、このような飛ばし記事がばら撒かれてしまいましては……」



 王様の隣にいる、黒い棒みたいな大臣さんが一緒になって困っていた。何種族なんだろう……? まあそれはともかく、フワフワちゃん婚約の号外は飛ばし記事なんだとか。飛ばし記事ってのは、ダメな記者が取材とか事実の裏取りをせず妄想で勝手に書いた記事なんだけど、政治的には思惑通りの流れを作るためにわざと書かれたりもするっぽい。なかなか交渉が進まない魔国の対応に、業を煮やした妖精王様が仕込んだのではないか……と王様達は考えてるらしかった。いろいろ大変っスね……



「そこで教育係殿に相談があるんだが……我が王子にくわえ、妖精王女の教育係も兼ねてほしいのだ」


「はいぃ??」



 なんで私? え? どゆこと?? 王様のいうことにゃ、妖精王女様直々のご指名なんだとか。えー? えー? ヤダー。だってあの追い剥ぎ虫だよー? めんどくさいよー。私は保育園か! やだなーやだなー。そんなふうに思っていると……



「それでだな……妖精王女殿下の歓迎披露会に、そなたのチョコとやらを出してほしいとのことなんだが……」



 さらなる面倒が追加! しかも、王様と大臣さんが無言で私に注目してくる。さ、サンプルを出せと……?? うぅ……ギブミーチョコレートって言ってみろやコラァ! はぁ……まあいいけど……どうせもう色んな人にバレてるしこのチョコ魔法。……チャチャっとオッサン達に義理チョコを渡し、軽く打ち合わせ。王様達は、チョコ嫌いじゃないっぽかったけど、甘いの苦手みたいだった。くっ……せっかく出したのに……


 その後、知りたかったことを知って満足した二人を残し、恭しく礼をして後退りながら謁見の間を出る。某フランスの王立警察のドラマを真似して。これができるのがちょっと楽しいんだよねー。ドラマじゃイケメン主人公と面白上司が、小声でコントしながら退出してた。お辞儀しながら後ずさるから、ビミョーに格好良くないんだけど。でもフランスの人がやってるんだから、きっとこれが正しいんだろ、知らんけど……もうあのドラマも見れないんだな私。


 その時、うっかりあのドラマのテーマソングが頭に浮かんで、慌ててそのイメージを打ち消す。ヤベーヤベー、悪魔執事に見つかったら停止させられる……と思って辺りを見回すと、いつもならドアの前に控えてる執事さんは、どこかに行ってるようだった。セーフ!


 魔国の城内は、そこそこ綺麗で高級な雰囲気があるんだけど、基本建材が石だからどうも暗め。絢爛豪華とは言い難い。でも、私はこのくらいの時代の雰囲気が好きかも。なんだか魔法がよく似合うというか。そういや妖精王国は、もっとファンタジーで曲線が多い建物ばっかりだった。葉っぱでできたみたいな家もあったし……シャンデリアも紫陽花みたいなのがあって、たぶんガラスで出来てるっぽい、すごく綺麗なやつだった。あんなに雰囲気が違うのなら、ゆっくり地方を旅してみるのも楽しそうだなぁ。


 そうだよ! 人生は面倒なことばっかりじゃないんだ。楽しいことを考えよう!!






☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜






 さて今日は、追い剥ぎ……じゃなくて、妖精王女ちゃんがやってくる日。


 私は一応、謁見の間の脇にほかの人たちと一緒に並んで立ってる。カーペットの道なりには儀仗兵さんが隙間なくビシッと整列してるんだけど、みんなとんでもなく同じ身長で同じ顔だ。クローンか何かなのか。全員、人間に近い雰囲気があるんだけど、尻尾があって足が鳥っぽいから魔族とわかる。顔はイケメン、足は鳥。ハーピー系??


 妖精王女御一行様は、しずしずと王様の前まで進んできて、遠目だとトロールかホビット系に見えるお付きの妖精さんが高らかに口上を述べた。



「ヒエロニウム・ウル・ファタジアII世の第一王女にして、朝露を輝かせる者、光ある妖精の国に降臨するかぐわしき花、すべての森に生きるものの命を守る聖なる杖、強き誠の魂から生まれし美しき緑星、そして火・水・土・木・風、五大元素をその手で操る者、来ませり、来ませり、アイテール・ウル・ファンタジア殿下、麗しの幼な(ぎみ)!!」



 一応みんなで歓迎の拍手して、私もそれに混ざる。それぞれ好き勝手に歓声をあげたりして、映画とかで見た感じのヨーロピアンスタイルだ。しかしナゲェ……口上長すぎ……これは確かにプライド高そうな感じするわ。それはともかく、追い剥ぎ……じゃなくて妖精王女ちゃんて、アイテールちゃんていうんだねー。なかなか可愛い名前ではないか。ははは。私はそんな子を教育できるのでしょうか。もう今から憂鬱。はぁ……やだなーやだなー。


 玉座のほうを見ると、王様の隣にちょこんと可愛く座っているフワフワちゃんもイマイチ元気ない。まあね、王子様なんだし、結婚は仕事よね……頑張れ、フワフワちゃん!! そんなことを思ってるうちに謁見はつつがなく終了。夜は妖精王女殿下の歓迎披露会があるので、私はチョコ係にならなくてはいけない。はぁ……


 私だってこの日のために何日も前から準備してたのだ。大量にチョコ出すの大変なんだからね! でもおかげさまでチョコ魔法はレベルアップしたらしく、普通の板チョコだけでなく、抹茶チョコ・ストロベリー・ラムレーズン・オランジェットのほか、某生ホワイトチョコにシングルモルトウィスキーを練り込んだ、例のアレも出せるようになったのだった。これ好きなんだよねー。これなら、甘いの苦手な王様と大臣さんも食べられるかな??


 あと変わったところでは、チョコ掛けポテチが出せちゃった。これはデカい。マシュマロ出した後、しょっぱい系も出せるかなー? と思ったら全然ダメだった。なにゆえ……? もちろん簡単そうなポテチもダメで、だから私はこの能力をチョコ魔法と呼んでいる。でもチョコ掛けポテチは出た。マシュマロもチョコに合うから出せたのかなぁ? いつかはカップ麺魔法も習得したい! チョコペ◯ングとか行けるのではないだろうか??


 カタログで見てずっと憧れてたルビーチョコと、青いケルノンダルドワーズも出せたらいいなーと思ったけど、食べたことないからダメっぽかった。現実世界で気合い入れて某サロン・デュ・ショコラに潜入した年に、興味本位でゲットしたカカオバターオンリーの白いチョコは出せた。でも嬉しくない。……味ないし。だけど一口大の平べったいキスチョコに花びらが乗ったデザインの可愛いチョコは嬉しい。……これはお気に入り。あのとき感動のあまり、ショコラティエさんともちょっと喋っちゃったし。妖精王女の歓迎パーティーにも合いそうな気がする。



「教育係殿、麗しの幼な(ぎみ)、アイテール王女がお呼びです」



 さっき長々とした口上を完璧にやり切ってた、お付きの妖精さんっぽい人が話しかけてきた。顔合わせきたー! え? ここで?? 心の準備がまだなんですぅ……やだなーやだなー。


 妖精王女のアイテールちゃんは、大広間の窓際で壁の花になってた。あれ……? てっきりもっと真ん中にいくタイプかと……この子も何か問題抱えてそうな雰囲気っぽい? 私の顔を見ると、アイテール王女はパアッと表情を輝かせた。さすが朝露を輝かせる者。……ちょっと可愛いじゃない。薄らグロさは相変わらずだけど、見慣れれば愛嬌ってやつだ。



「くるしゅうない、ちこうよれ」



 妖精王女ちゃんは、ヒラヒラと飛んでチョコの乗ったテーブルの上に降り立つと、花びらチョコを指さして言った。



「うるわしのおさなぎみたるわれがとう。これは、なんというものか。くるしゅうない、こたえよ」



 自分でうるわしいって言っちゃうのね……ははは。まあ、そう教えられてるんだろうけど。魔国の人は結構フランクだから、ここに来てはじめて宮廷っぽさ感じるかも。私も何となく手をくるくる振って、ははぁ……とやってみる。



「王女殿下、こちらは花びらチョコと申します」


「はなびらちょこというのか、きにいった。ほうびをとらす」


「ははぁ……ありがたき幸せ。王女殿下の益々のご清祥をお祈り申し上げます」


「うむ、さがってよい」



 うんうん、アイテールちゃんは、花びらチョコがお気に召したのね。すごく妖精っぽい気がする。期待通りの反応だ……しかし褒美ってなんぞ? まあ、くれるもんなら何でも貰うよ。折れた(くし)はいらないけど。そんなこんなで無事に盛大なチョコパ……じゃなくて妖精王女殿下の歓迎披露会は終わったのだった。






☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜







「ムー!!」


「まってたもれ! まこくのおうじでんか! にげてなんとする!」



 ここ数日、王宮内にいれば、毎日1度か2度はこんな場面に遭遇する。ははは。お子様達は鬼ごっこでもしてるのかな? ……いいえ、外交問題です。フワフワちゃんが完全拒否状態で逃げ回ってるのだった。そう、完全にイカ耳状態だ。くぅ……可愛い猫め。



「ムー! ムームー!!」



 フワフワちゃんは私を見つけると、すぐさま足元に滑り込んできて、妖精王女のアイテールちゃんを瞳孔の開き切った目で威嚇する。そ、そんなに嫌なの……? こ、困っちゃったね……



「きょういくがかりどの、おうじどののごようすは、いったいなんとしたことなのか?」


「えーと、いや……もう少し時間をかけてゆっくり仲良くなればよろしいのでは……?」


「そんなことでは、とうていまにあわぬ!!」



 んん?? どゆこと???



 アイテールちゃんはハッと口を押さえて、居住まいを正して何もなかったようなフリをした。いやいや……見てしまいましたよ? 妖精さん達は何かを隠しているようだった。また何か仕込みがあるのか……?





「うるわしのおさなぎみたるわれは、もうかえりたい……」

「いけません麗しの幼な君、あなたには妖精王女としての使命があるのです!」

「ううぅ……」


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