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魔王会議

 あれから別の上位世界から侵略しに来た魔王軍は姿を現さない。


 あの日、俺が倒した竜騎士兵団とやらは歩兵隊としては魔王軍最強だったらしく、そんな軍が連絡を一切寄こすことなく消えていった事に警戒したのだろうという結論で一旦は様子見になっている。


 相手の戦力は竜騎士兵団を除いて9つの軍団が存在するらしい。

 この情報は前に俺が生け捕りにしたリザードマン、人竜族だったか?そいつがペラペラと喋ってくれた。


 どうやら、俺の事が相当にトラウマになったらしく、俺が姿を見せただけでだんまりを決め込んでた奴が呆気なく口を開いた。


 異世界にいる魔王軍の残りの数は9つ。


 1つ目は海などの海戦特化の海獣遊撃団。

 2つ目は山岳や森林などに特化した山賊集団のような忍魔死殺団。

 3つ目は盗賊団のように街を荒らしまわる強欲の魔人団。

 4つ目は魔法に特化して攻撃してくる天魔法神団。

 5つ目は物理攻撃に特化した豪鉄破兵団。

 6つ目は獣人を主体として構成されている獣王進撃団。

 7つ目は人を操り精神を狂わす夢魔暗黒団。

 8つ目は不死身と言われる死霊骸兵団。

 9つ目はこれらの軍に入団出来なかった出来損ないの集まりである混濁悪汁団。


 それぞれの軍団には指揮官たる将がいるらしいのだが、竜騎士兵団はこの中でも最も気位が高くプライドが高い軍団ゆえに他と馴れ合わないから知らんらしい。


 なんつうか……最初に出会った時もそうだが、結果良ければ全てよしを地で行くようなアホだな。

 ただまあ、戦闘面でいえば馬鹿じゃない。あの時生き残っていたのも運ではなく仲間を盾にする咄嗟の判断能力のおかげだった。

 だからこそ、将の位にまで昇りつめられる事が出来たのだろうが……。


「んで、肝心のトップの情報はねえのかよ?」


 ばさりと情報の纏められた紙をテーブルの上に放り投げ、対面に座る魔王様に問いかける。

 ここは魔王城にある会議室の一つ。

 俺の他にも、この場に集まった幹部連中がそれぞれに資料を手にして今回の議題について話し合っていた。

 俺はその光景を見ながら出された紅茶を飲みつつ、目の前で優雅に紅茶を楽しむ魔王様へと視線を向ける。

 魔王様はカップを置き、ふぅっと息をつくと口を開く。……相変わらず顔の面は良い。


「それについては申し訳ないが、あの捕らえた捕虜からは何も情報を得られなかった。っというより、何も情報を持っていなかったと言った方が正しいね」


「おいおい、マジかよ。同僚だけじゃなく、自分の組織のトップの名前すら覚えていないのか、アイツは?」


「いや、恐らくだがあの捕虜は捕まった際の保険として何らかの技術でその記憶だけが抹消されている」


 魔王様の言葉を引き継ぐように、隣に座っていたフードを被っていた者が言葉を発する。

 そいつは四天王の1人であり、魔法専門の殺し屋でもあるセレスティア・アーメル。

 額の一本角が特徴的で、エルフのような薄緑色の髪を持つ妙齢の女性。見た目こそ若いが実年齢は200歳を超えているとかいないとか……。


「奴はこれまで素直に話してくれていたのだが、自分の組織の長の名前すら言えないというのは可笑しいということで尋問を続けた結果、奴の会話がチグハグだったので私の魔法でも調べたのだが、脳に何らかの異常をきたしている。これは魔法ではないと断言できないのだが、恐らくは次元の海を渡って来たように、我々の知らない未知の技術が使われている可能性が高い」


 お手上げとばかりに両手をバンザイして降参のポーズを取るセレス。


「なるほど、敵のトップは強い上に用心深いってわけか……」


「厄介な敵だね。それと同時にいやらしい敵でもある」


「……?そりゃ、どういうこった?」


 厄介ってのは理解出来る。だが、いやらしいってのはどういうことだ?


「実は人間界へ私から極秘に使者を送ったのさ、でも結果は散々だ」


 やれやれと言わんばかりに顔を振って溜息を吐く魔王様。


 ……ああ、そういう事か。


「もしかしてだが、人間界側にも異世界からの魔王軍が進攻して、それを俺達側の勢力と勘違いしていると?」


「正解だ。相手は魔王軍と名乗っている上に次元の海から進攻を仕掛けているからね。まことに厄介な問題だ」


 頭が痛いと訴えるように眉間にシワを寄せる魔王様に、隣のセレスも同じような表情で溜息を吐いていた。


 確かに、それは面倒極まりない。

 仮にこちらが真実を伝えても信じて貰えないだろうし、下手をすれば……いや、下手をしなくとも何らかの手を打たねば敵対関係になることは必須か……。


「面倒くせえ事になってやがんな。んで、もし人間側からこっちに戦争を仕掛けに来たらどうする?あっちは質は低くとも数はウチの何倍もいるんだぜ?こっちに攻め込んで来る可能性は充分にあんだろうが?」


「う~ん、難しい話しだね。仮に相手側を傷つけてしまえば、その時点で交渉は非常に難しくなる。かといって無抵抗でいればこちらに被害が出る他に異世界の魔王軍の進攻による漁夫の利を搔っ攫われる恐れもある」


 確かに難しい話しだ。これはある種のトロッコ問題に似ている。

 共存を取るか破滅を取るか。今回の厄介な点はどちらにせよ、魔界側に不利が発生するという点だ。


「俺が直接人間界の王族とこまで殴り込みに行って話しを通すのが早いんだが、そうなると留守の間を狙われて魔界が侵略完了されてましたじゃ笑い話にもならねえな」


 それは、言外に自分以外では魔界を守れないと言ってるも同じ事だが、先の戦いはラグナがいなければほぼ確実に魔界は陥落していた。


 あの捕虜もラグナが重傷を負わせていたから今も拘束出来てはいるが、もし傷が回復し全快の状態ならば簡単に脱獄されている。

 そんな未来が簡単に予想出来るほど、あの捕虜は凄まじい力を秘めている。

 それは奴の肉体を魔法で検査したセレスが一番良く分かっており、その情報を他の幹部や魔王も知っているからこそ、ラグナの暴言にすら近しい言葉に何も言い返さなかった。


「いっそのこと、君が魔王になったらどうかな?」


「冗談きついぜ、俺はそこまで器のデカい男じゃない。それに、俺が魔王になれば1人で大抵片付くから、魔王軍はあっさり瓦解すんぞ?」


「なるほど、私としても長年付き添ってくれた部下を路頭に迷わせるのは忍びない」


 大根染みた下手な演技で大げさに嘆いて見せる魔王様に、周りが思わず苦笑してしまう。

 そのおかげで、先程まであった険悪な雰囲気が一気に払拭されて和やかな空気が流れる。


「さて、それで具体的にどう問題を解決するつもりだ?まさか、このまま事態が動くまで静観……なんて手を打つつもりじゃないんだろ?」


 マナー悪くテーブルに肩肘ついて顎を乗せながら質問すると、魔王様はニヤリと笑って見せた。


「勿論、そのつもりでいるよ。幸い、こっちには天下無敵の君がいる。なら、此処は一つ盛大に勘違いしたまま踊ってもらうとしよう」


「……はっ、流石は魔王様だ。んじゃ、俺はその間何をしてればいい?」


「簡単だ。前と同じ様にあの旧砦で寝泊まりしておいてくれ」


「……本当に簡単だな。でも、それだけでいいのか?」


「勿論さ、ハッキリ言って君を魔界の防衛以外での任に就かせられるほど、こちらの軍事力は回復仕切っていない。だから、君には徹頭徹尾あの砦から魔界を守っていてもらうよ」


「了解だ。なら、俺は持ち場に戻らせてもらおう」


 俺は席から立ち上がり、そのまま会議室を後にする。


「ああ、そうだ。一応、私が送った使者が向こうの情勢を調べたのだが、どうやらあちらの王都では勇者召喚の儀式を行うらしい。もしも、その勇者が魔界に攻め入った時は、それの対処を任せたい」


 扉を開ける寸前に背後から掛けられた声に、俺は振り向かずに手だけを上げて答えた。


「……また面倒な事を押し付けてくれるぜ」


 誰に言うわけでもなく、ポツリと愚痴を零しながら俺は魔王城から旧砦へと文字通り飛んで帰った。


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