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魔王様が俺に頼み込んできた件について

 再び10年の月日が経過した。今ではこのエリアの主としてこの地で君臨していた。

 俺の炎で焼け死なない魔獣はいないし、俺の氷で凍りつかない魔獣もいない。


 圧倒的な力はどんな存在でも呆気なく殺してしまう。

 それは街をも陥落させる天災級の超大型魔獣でさえそうなのだ。


 そんな異常な力を持った俺を避けるように魔獣達は俺の住処であるログハウスの周辺には巣を作ろうとはしなくなった。

 獣としての本能でそこが危険なのだと理解しているのだろう。


「やっぱ暇だわ……」


 最初の頃はまだ俺を餌として認識して襲ってくる魔獣や、慣れない過酷な環境に苦戦していた事もあったが、今ではそのどちらも取るに足らないものになっていた。

 こうなってくると後はもう自分を高める以外にやる事が無くなってしまったので、暇な時は能力の向上や前世の漫画知識の再現などで時間を潰している。


 このまま老衰するまで同じ生活かもなと割と絶望しながら日々を過ごしていると、最近感じなくなった俺の住処の周辺に生き物が侵入する気配を感じ取った。

 とはいえ、この気配からしてここら辺にいる超大型魔獣などではなく、俺と同じ魔族の気配だった。


 面倒事の気配はするが、このまま退屈に殺されるよりは幾分かマシかと考えて家の外で待ち構える。

 すると、少しして家の前まで数人の魔族が姿を現した。先頭にいるのは銀髪をした男性。

 そう、忘れもしない。あの日、あの大会で俺にサタンの名を授与した魔王だった。


 その後ろの魔族も俺の知っている知り合いで、最初に出会ったアレックスのオッサンと大会の決勝戦で戦ったオウルのオッサンだ。

 あと他にもいるが、そいつらは確か四天王のメンバーだったか?

 正直、そいつらに関しては勧誘以外に接した事がなかったので顔がうる覚えだ。


「おや、まさかこちらに気づいて待ってくれてただなんてね!」


 そう笑いかけながらこっちにやって来る魔王。後ろにいたアレックスのオッサンも「久しぶりだな~、ラグナ!」と手を振りながら近づいてくる。

 オウルのオッサンも「前に戦った時よりも成長したな!」と気軽に声を掛けてきた。


「よお!こんな辺鄙で物騒な地に揃いも揃って何しにやって来やがったんだ?」


 無礼千万な言葉遣いで出迎える俺だが、魔王の側近である四天王の連中は何も言ってはこない。

 そりゃ、こっちは魔界最強の男だからな。下手な事言って怒らせちまったら、自分の首だけじゃなく、魔王様の首まで一緒に吹っ飛ぶ可能性があるから誰も何も言えないんだよな。


「実は君に用があって来たんだ」


「俺に用だと。って、まあこんな所に魔王様が来るなんざそれ以外の理由はねえよな。まあいいや、話は聞いてやるから、とりあえず中に入んな」


 家の中に招き入れると、魔王達をリビングへと案内する。

 ここには俺以外は住んでいないからインテリア程度に椅子は3つしかないが、魔王以外は全員壁際に立って待機している。

 アレックスやオウルのオッサンの態度からして、これは態々俺に会いに来たわけでなく、この危険なエリアに来る魔王様の護衛として来たのだと理解した。


「んで、何の用だ一体?俺への用なんざ荒事の類しかねえだろうが、俺に何かしろってのか?」


「話が早くて助かるよ。単刀直入に言うと、君にはこの魔界を救って欲しいんだ!」


「「「「どうかこの通り!」」」」


 その言葉と共に魔王と側近の四天王が一斉に頭を下げる。


「あぁん?おいおい、待てよ。どういうことだ?魔界を救って欲しいだぁ?」


「困惑するのも分かる。これは魔界にとっても突然の出来事だったからね、とりあえずはこれを見て欲しい」


 魔王様がテーブルの上に置いたのはボロボロになった鎧の一部だった。

 その一部には見たことのない紋章が刻まれていた。

 俺も博学って程ではないが、それでも魔王軍や人間の王国軍の掲げる紋章の形ぐらいは把握している。


「どこの軍のものだ?俺の記憶にはねえぞ、こんな紋章は?」


「私にも詳しいことは分からない。だけど、突如としてこの紋章を持つ軍隊がこの魔界に侵略を仕掛けてきた。ただはっきりしていることは、敵の強さは圧倒的だということくらいだろう」


「なるほど、っで、そちら側の損害は?」


「被害は魔王軍の一般兵が4割、それを指揮する将クラスの者が5人、……守るべき民が、6000人死んだ」


 出会った時に見せていた笑顔が噓のように悲痛に歪んでいた。

 魔王と呼ばれていようと、この目の前の男は善政を敷く為政者なのだ。


 だからこそ、こんな辺鄙で危険な場所に住まう俺なんかを頼ってやって来たのだろう。


「頼むぜ、ラグナ。襲われたのは魔王城付近の村まで襲われっちまってる。このままじゃ、俺の故郷にも侵略の手が及んじまう!」


「ワシからも頼む!今回の侵略はワシら銀翼の王龍も防衛に参加したのだが、ワシ以外の団員のほとんどが重傷を負ってしまった。今回はなんとか退けられたが、次はどうしようもないじゃろう」


 アレックスとオウルのオッサンも同じように頭を下げてくる。


「ああ、分かった分かった。俺みたいなもんにお偉いさん方がそう頭下げてくんなっての、居心地が悪い……」


 普段されない真摯な頼まれごとに、痒くなった耳をほじって了承の言葉を返す。

 これによって、ようやく魔王様も頭を上げる。


「ありがとう!君が加勢してくれたなら、奴らに対して勝機が出来る!!」


「そんなに強い相手なのか?そもそも、オウルのオッサンとこの銀翼の王龍っていったら、超大型魔獣の討伐履歴も何回かある腕は魔界一の傭兵団だろ。その大半が重傷ってどれだけ強いんだよ?」


 突如として湧いて出てきた軍がそんな武力を持っているものか?

 それにしても、痛手を受けたというにしろ少々被害の規模がデカすぎるな。


 魔王軍に加えて魔界最高峰の実力を持つ傭兵団も機能不全レベルにまで追いやられるか……。

 新しい人間達の軍って線は低いかもな。


 かつての昔、今の魔王の先々代の頃の時代には魔族と人間が戦争を起こしていたらしいが、先代の魔王と国王が和解することで相互不干渉という形で戦争は終結。

 今更、戦争をあちら側から仕掛ける理由がないはずだ。


 そもそも、人間側が能力の高い魔族と戦争を成立させれていたのは、魔族は繫殖力が低く数による持久戦による戦法を取っていたからだ。

 こんなゴリ押し染みた戦争は仕掛けてはこない……というか、これない筈だ。


 っま、最初に魔王も正体不明みたいなこと言ってたし、ここで考えても答えは出ないだろう。


「とりあえず、俺もその謎の軍の侵略に対して協力してやる。ただし!こっちから条件が2つある」


「なんだね?僕達に出来ることならば、可能な限り叶えよう」


 そう言ってくれる魔王に、俺は指を二本立てる。

 といっても、金銭だとか地位なんて俗物的な願いじゃない。


「俺が求めるのは1つ、俺の戦場には誰1人近づけるな。はっきり言って足手まといは嫌いだかんな。2つ目、これを機にとか考えて俺を取り込もうとなんて考える馬鹿を作らねえこと。この2つを守れるなら協力してやるよ」


「まっ、待て!あの軍隊を相手に1人で戦うつもりかい!?いくら君が強いと言っても「いや、それでいいと思いますよ」……っな!?」


 俺の提示した1つ目の条件に、魔王様は否定しにかかるが、それをアレックスが肯定の声を上げて遮る。

 アレックスは俺がガキの頃からの付き合いだ。俺が全力を出した際の強さも被害のデカさもよく知っている。

 オウルのオッサンも俺と直接対決した経験からか、なんとなく俺の強さを察しているようで何も言わずに目を閉じて俺の出した条件を吟味しているようだ。

 魔王様は、アレックスとオウルのオッサンの反応を見て、俺の提案が無謀であることを理解してくれたのか、言葉を失っている。


「……分かった。その条件を飲もう。ただし、絶対に負けないでくれ!これは魔界全土の命運が賭かった戦なんだ!」


 諦めたようにガックシと肩を落とす魔王様。そしてすぐさま顔を上げて、俺に対して真剣な目で負けるなと頼み込んできた。

 当然、こっちも最初(はな)から負けるつもりで戦争に加わるつもりもないし、俺の強さをもってすれば負ける可能性なんてこれっぽちもないってことを証明してやるつもりだ。



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