嗜好の変化
20歳を過ぎてから、段々とラノベやWeb小説に関しての好みが変わってきている。
中学生や高校生の頃はとにかく主人公が最強な無双ハーレムが大好物だった。
ヒロイン達は主人公にすぐベタ惚れになり、あらゆる敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく。
そんな爽快感のある作品を時間を見つけては読み漁っていた。
しかし大学生になってから、より正確に言えば自分もWeb小説を書くようになってからはあまりそのような傾向は見られなくなってきた。
別に嫌いになったわけではない。
今でも好きなことに変わりはないが、昔ほどの熱はない。
どのような変化があったのか自己分析してみる。
まず最初に、主人公のスキル。
10代のときは大量のスキルを獲得していく度に大なり小なり目を輝かせていたが、自分でも書くようになってからは
「こんなに沢山のスキル、とてもじゃないけど管理しきれない。書いたことの何割かは忘れてしまいそう」
と思うようになり、むしろ獲得数が少ない話に目がいくようになった。
さらに言えば、そもそもスキルという概念が存在しないストーリーを読んで「ああ、いいな」と感じ始めた。
ハイファンタジーを書くのが苦手だったのはこう言った考えを持っていたのも原因の一つだったのかもしれない。
次に、主人公の強さ。
いつも簡単に敵を倒せるのは安心感があるが、ドキドキハラハラといった感情は湧いてこない。
戦闘やそれ以外で登場人物が苦悩し、乗り越えていくところを見たくなってきた。
そして、ヒロインの数。
可愛い女の子は昔から好きなので、多ければ多いほど嬉しいのは今も昔も変わりない。
ただ、主人公と結ばれる女性は一人だけ、あるいは多くても二、三人程度が好ましく思うようになってきた。
体力的にも精神的にも、正妻や側室たちを不満を爆発させないようにバランス良く愛するのは至難の業だ。
それに気付いてからは主人公がモテモテになっても
「これから大変そうだな」
という心配の方が強くなり、羨ましさは感じなくなった。
そもそもハーレムは現実的に考えてほぼ有り得ない、と野暮な思考をすることもあり、一人だけを愛する作品にいつからか関心を持つようになった。
何故好みが変わったのだろう。
恐らく、中学高校の頃は思春期特有のこの世の全てに対する不満を気持ちよく何かにぶつけたかった。
もっと自分の思い通りになってほしい。
もっとみんなに注目されたい。
女の子に自分の全てを肯定されて、無条件に愛されたい。
ラノベを読んで主人公と自分を無意識に同一視することは上記の欲求を満たすには都合がよかった。
では、現在はどうか。
今の私は良くも悪くも現実が見えるようになり、理解できるようになってしまった。
世の中は思い通りにならなくて当たり前。
人間は自分が想像していたほど他者への関心はなく、何もしていないのに注目されることなどない。
縁も血の繋がりもない女性から無条件に愛されることなどなく、私が理想としていた関係は恋人や夫婦ではなく奴隷と主人という独裁的なもの同然だった。
早い話が、思春期という魔法が解けてしまったのだ。