今川焼き
悲報
3週間連続投稿ならず
無念
電車で実家へと戻る。果たして何ヶ月振りか。下手したら半年以上か。もっと前から記録を付ける習慣を取るべきだったと後悔する。
駅の階段を降りていくと今川焼き屋が見えてくる。ああ、今日もやっていると安堵の息を漏らす。いつもそこそこ並んでいるので余程のことがなければ潰れないとは思うのだが。
今川焼きというのは溶いた小麦粉を丸い鋳型に流し込んで焼いたお菓子だ。中に小豆の餡が入っている。
回転焼き、太鼓焼きとも言うらしい。
ものによっては餡の代わりにカスタードなどのクリーム系のものが入っている場合があるが、それらは冷凍食品の形でしか見たことがない。探せば売っている屋台があると思うのだが。
幼い頃から母によく買ってもらっていた。味が好きだったのもあるが、職人たちが作っているところを間近で見るのが楽しくてしょうがなかった。
巨大な漏斗のような形をした道具のレバーを、カシャッ、カシャッと押すたびに勢いよく鋳型へと流し込まれる生地。長細い筒を縦半分に割ったような容器にこんもりと乗せられた餡がシュッ、シュッとリズミカルに同じ大きさで生地の上に乗せられる。表面がくるりとひっくり返せるほどに焼けた、餡が乗せられていない生地を上から丁寧に素早くかぶせる。そうして完成したものがパッパッパッとずらりと並べられていく。
この一連の流れは何度見ていても飽きなかった。今でもつい時間を忘れてじーっと眺めてしまう。
初めて今川焼きを目にしたあの時の私は魅了の呪文にでもかけられたのかもしれない。そしてその魔法は未だ解ける気配がない。最も、たとえそれが事実だとしても解こうとは思わないが。
今日も今川焼きを買う。地元に帰った時は赤餡と白餡を一個ずつ注文するのがお決まりとなっている。
ホカホカの状態が続いている間に、少しずつかじる。
優しい味だ。
そして実感する。私はここに帰ってきたのだと。
そういえば。
こし餡が入った今川焼きもあるのだろうか。粒餡しか口にしたことがない気がする。
そんなことを考えている間に包み紙は空になった。もう何も残っていない。いや、僅かな温もりだけが残されていた。
包み紙をまじまじと見つめる。
ああそうか。
私はこの温もりも好きなのだ。




