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少年は世界を救わない  作者: 怠惰猫 Zero
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第一話 異世界召喚

 はじめましての方ははじめまして、そうじゃない方は二度目まして、作者の怠惰猫でございます。

 軽ーい気持ちで書き始めたので文章が稚拙という点に関してはご容赦ください。

 退屈と形容するしかない日常が俺は嫌いだ。

 少なくとも一般的な人生を送ってきた気はない。

 けれど常軌を逸した人生を送ってきた気もない。


 同じ10代というくくりでなら5割弱、総合的な割合でなら6割弱の人間が経験したとされているありふれた経験。

 日本人の半数前後が経験あり、そういう意味ではある意味では一般的な経験。

 遠回しに説明すれば『ありふれた不穏』で直球に言えば『いじめ』とされる下らない経験だ。


 小学校に入ってすぐ、教育者が偉そうに宣う『過ちを犯すな』『違反すれば注意しろ』そんな今となっては守る方が頭の可笑しい、上辺だけの言葉を信じて俺はいじめられた。

 性悪説が正解の人間に性善説を信じて、教師の言う『困ったことがあれば味方になる』なんて業務上の言葉を頼りに独り『善』を解いて周囲全てに裏切られた愚かな俺。

 その影響があって人間心理の真理を知った俺は周囲からすれば性根の歪んだ見方しか出来なくなったワケだが――

 そんな俺の性格が俺自身好きではある。

 あのまま進めば必ず人に騙されて痛い目を見ていただろうからそういう意味では感謝をしていたりするのだ。

 例え暴力を振るわれ暴言を吐かれ冤罪を受け物を奪われ隠され裏切られていても、過去に戻れたとして俺はその過去を無くそうとは一切思っていない。

 どこぞの腐り目主人公風に言えば『本物』を手に入れた、どこぞのロリコン主人公風に言えば高い『人間強度』を手に入れることが出来た。


 え?

 友達?

 ……友達の定義があまりよく分からないが日常的に会話を行う血縁のない人間という基準で言えば男友達が三人、女友達が二人ほど。

 まあ、もっとも、自ら進んで話しかけるかと言えばそうではないからその基準を入れるのならば友達はゼロではある。


 閑話休題まあそれはさておき、変わらない日常というのはどうしようもなく壊したくなるものだ。

 例えば世界中にダンジョンが生えたり、例えば東京タワーに赤い竜が刺さらないかと密かに楽しみにしてみたり、例えば2029年に地中海から酸素という元素が消失したりしないかと考えてみたり、例えば――

 などと挙げればキリのない非日常を妄想してしまう程度には嫌なモノである。

 かといって過去の経験から努力が無駄になるのが嫌で仕方がないから異世界の存在を信じても探す努力はしないまま。

 ここまで言って自分自身なにが言いたいか分からないのだが、一つ言えば『異世界に逃げたい』だ。


――――――――――


「太陽の黒点発見――なんてやってみたりしたいがそんな視力ないしなぁ。暇が売れたら稼げる自信があるのは同じだけど」


 生憎とそもそもここは河川敷ではなく授業中の教室だ。

 ラノベに出てきそうな生徒に人気はあるがあまり威厳のない幼女先生の授業中。

 え、真面目に授業受けろって?

 そりゃ無理な話だ、なんせプール後の授業でクラスメイトの大多数がノックアウト状態、当てられたら正解を答えられるが起きている人間ですら真面目に受けれていない授業を真面目に受ける気はない。


 え、そっちじゃない? 幼女先生とは具体的にどんな感じか、って?

 数値で言えば年齢が確か22歳と大学卒業してすぐの教師歴一年目、身長は143ほど。

 どうやって身長を知ったかと言えば、こっそり幼女先生――名前が確か夜桜桃子よざくらももこ通称桃ちゃん先生――の後ろに回って頭に30センチ物差しを立ててみたら身長170ほどの俺の頭を4センチほど上に端があったからだ。


「え、ええと~、重見しけみくん。これの答えをお願いします」


 と、そんなことを思い出していると数少ない起床(稀少)メンバーの中から俺が当てられる。

 これは仕方ない、順番にあてられるとはいえ起きてるのは俺含め五人、当てられるのは三度目だ。


「あ~っと……八分の八七、かね」


 まーったくもって板書を取っていなかったが問題はない。

 瞬時の暗算だから若干答えに自信はないが初歩の部類だからモーマンタイ。



「合ってます。けど……窓の外ばかり見ないでくださいね?」

「…………善処します」


 教科書を配られたらすぐに全部読んで問題を解く派だから教科書やら配布の問題集やらを真面目に解くつもりはない。

 だからか思わず政治家のような受け答えをしてしまった。


「勉強はしっかりしてますし頑張って起きてくれてもいるのであまり強くは言いませんが授業を聞いてくれると先生は嬉しいです」

「……適当でもちゃんと起きて答えるだけでもマシだと思うんだがね。……真面目と不真面目は何も言われず中途半端な俺は言われる、いつから学校は真面目度ではなく中途半端さで判断するようになったんだか」


 そういう教育方針が定められていることはなんとなく理解している。

 そもそも小学生の頃に正しさが正義ではなく数の多さが正義だったという時点で既に理解はしていた。

 これはただの独白でしかない。

 主人公フィクションに憧れて、いつしか癖になっていただけのありふれたモノローグ。

 言っている自分ですら聴き取り辛いほどの口のあまり動かない腹話術のような独り言だ。


「こんなことならやりがい求めて進学校にでも行きゃ良かったな……」


 近くて勉強せずに入れるからと適当な高校を選ばなければよかった、と遅まきながらに後悔しつつ雲だらけの空を見上げてその形に妄想を込める。

 それは地形だったり建造物だったり。

 漫画やラノベならカットされるであろう下らなさ過ぎるありふれた想像。

 本編ストーリーには到底関われないであろうフィクションじゃない現実だからこその一時だ。


(空ってずっと見てるとだんだん空と雲の違いが分からなくなってくるんだよなぁ……)


 白い雲と暗い雲が混在した空を見て一種のゲシュタルト崩壊に陥っているとにわかに周囲が騒々しくなる。

 空に集中しすぎてチャイムを聞き逃したのか、と考えながらとりあえず視線を黒板の方に向けるとそこにはまだ夜桜先生がチョークを持った状態で立っていて驚愕の表情で床を見つめていた。

 ミスディレクションのように自然と俺の視線は先生と同じ床へと向かい――俺は驚愕と歓喜に表情を歪めてしまう。


「は? なんだよこれ」

「誰かのイタズラ?」

「お、落ち着いてください!」


 周囲からそんな声が聞こえてくるが俺の意識には一切介入しない。

 俺の意識は俺自身の足元にも広がっているソレ。

 俗に言う『魔法陣』に向けられているのだから。


(教室全体に巨大な魔法陣が一つ、追加で個別に小さな魔法陣)


 周囲の喧騒が増える中で俺は二次元趣味でつちかった知識と冷静さで状況を分析している。

 爪先で魔法陣をこすり、そのまま垂直に脚を持ち上げた。

 当然のように魔法陣は一切掠れることなく顕在しており、天井からの投影ではないことを裏付けるように足元には一切影は出来ていない。

 机を退ければ現れた床の部分にも魔法陣は描かれていてそれは蛍光液などによるペイントではないことを証明している。


(よし! これはほぼほぼ百パーセント異世界召喚だな!)


 移動先への懸念は大きいが、少なくともこのクソみたいな現代社会から逃げることが出来るというのは俺にとっては十分な話だ。


(さて、召喚された時どういう状況になる? 直接触れているもの? それなら寝ているメンバーは机ごと召喚、直接という括りなら裸足の奴以外は靴なしか? 服越しでの召喚もありで重量を考慮しなかったら地球丸ごと転移の可能性もあるな……)


 異世界召喚というのは物語フィクションならば深く考えないが現実となれば話は別。

 基本的には召喚時は荷物も一緒というのがテンプレだが現実は基準が分からない。

 人間だけならば全裸での召喚の可能性があり、眼鏡をかけている人間なら裸眼での召喚の可能性も大いにある。

 身に着けているモノも召喚されるのならばどこまでの基準で『身に着けている』と認識されるのかが重要だ。

 仮に直接接触というのなら今の時期で言えば下着やシャツ、ズボンなんかは一緒に召喚されるがベルトやブレザーなんかは召喚されない可能性がある。

 さっき言った眼鏡の奴ならば可能性としてはレンズがない可能性もある。伊達眼鏡にすらなれないフレームオンリー状態、眼鏡が部品含めて一つのオブジェクトとして認識されなければネジの部分などが消えるかもしれない。

 仮説だらけで検証するには召喚されるしかないから考えてもキリはないが考えないよりかは良いだろう。


(可能性は『全裸』『直接接触物』『重量制限ありで周囲の物ごと』『その他』、最後は可能性に上げて良いモンじゃないがな……)


 友人が帰りたいと願った時の助力になれるように少しでも状況把握をしておきたいと考えた俺はすぐさま立ち上がって右、前、右前で寝ている友人たちの鞄と自分の分も含めた体育館シューズを左肩に掛け、自分の鞄は右肩に掛けた上で中に入れてある三〇センチのステンレス定規とシャーペン二本、大量のシャー芯、手帳二冊、スマホ一台、ソーラーチャージャー二台、モバイルバッテリー三台、各種ケーブル二本ずつに腕ごと突っ込んで触れさせた上で腰を低く構えた。


「し、重見くん、なにをやっているのですか?!」


 先生からそんな声が掛かるが俺は無視して召喚の瞬間に備える。

 考え過ぎと思うかもしれないが召喚の瞬間に武装集団に包囲されている可能性があり、武力で従わせられるかもしれない。

 俺一人で戦えると自惚れる気はしないが相手側にある程度の危機感を覚えさせることが重要だ。


――――――――――


 そんなことをやって腰を低くしていると一瞬にして景色が切り替わる。

 何の前触れもなく、ページをめくったように、今までが嘘のようにクラスメイトの伏せる教室という光景から鎧姿の人間が左右で待機する玉座の間に。


(服は全て着ている、シューズも中身は入っている、掴んでいたものは全て入っている)


 机に突っ伏していた者たちが机や椅子を失ってそのまま地面に衝突し、痛そうに発する呻き声を耳に聴き入れながら大量の荷物を床に降ろし袖に定規を隠しながら周囲を警戒する。

 騎士らしきフルメイルの者たちが左右に大勢、背後に魔術師らしき男女が一〇余名。

 そして俺の向く方向に国王らしき男が一人。

 誰一人武器も杖も構えていないことから召喚直後の拘束は命じられていないことが明らか。

 つまり教師含めた自分たち三八名を生かすも殺すも視線の先の国王の命令に掛かっている。真っ先に警戒するべきは恐らく国王自身だろう。

 武力主義国家だとすると恐らく国王自身が国内最強、勝てるワケがないし明らかに警戒されている俺は向こうからも警戒されているはずだ。


「……王よ! どういうことか説明して頂けるだろうか!!」


 ゆっくりと近づいて来ていた宰相らしき老人をチラリと一瞥し、玉座にどっしりと腰を構える男に声高々と語り掛ける。

 俺の声と視線に教室での並びそのままだった皆が国王に視線を向け、先生も振り返って同じように国王を見つめた。

 言葉が通じる前提だが、これは一種の牽制だ。

 ラノベではありふれた話だがこういうシチュエーションでは国王の対応によってその後の行動を決める必要がある。

 体裁を考えず頭を下げてくる王ならば一先ず良し、偉そうに上から目線で命じてくる王ならば脱退も考慮しなくてはならない。

 宰相でもある程度は判断できるが最適解は集団の長、今の状況では玉座から見下ろす国王が適任。


「まず謝罪からさせて頂こう。我々の、国のみならず世界の都合で勝手に呼び出した上で重ね重ね申し訳ないが現状お主らを返す術を我らは持ち合わせていない。このことに関しても申し訳ないと思っている」


(ふむ……誘導したとはいえ王自ら頭を深く下げての謝罪。謝罪から入るのは為政者として他人と語る術か? 最後の部分、関して『も』というのは少なくとも表面上は様々なことに謝罪するつもりがあるという考えの表れか?)


 国王の言動に深く注意を払いながら同時並行で思考を巡らせる。


「え、は? どういうことだよ!?」

「そうよ! ちゃんと分かるように説明しなさいよ!」

「返せない、とはどういうことですか?」


 国王の次の反応を待とうとしているとクラスメイト達が好き勝手に喚き始めた。

 なぜこんな簡単なことが分からないんだ、と一瞬諦めたもののこの反応が普通だとすぐに気づいて少し面倒臭くなる。

 それは国王も同じだったのかそれとも俺がすぐに反応を返したことから全員が同じレベルだと勘違いしていたのかは分からないが、同じように一瞬だけ面倒くさそうに顔を歪めていた。


「この世界は今、魔人族の手によって滅びを迎えようとしている。数が多く一人一人の力も我ら人間を大きく上回っていてなす術がない。このままでは近いうちに人族は絶滅すると考えた我々は古代の秘術である異世界からの勇者召喚に乗り出したのだ」


(なるほど、つまり危機に瀕した今創り出した魔法? 魔術? ではなく昔から存在していた魔法術ということか。……とすると言語が通じているのはその時の影響か? また世界が危機に瀕した時、召喚した勇者に出来る限り訓練に専念出来るよう言語習得の手間を省くべく世界中の言語を無くしてまで人間の共通語を日本語に変更した、ということか)


 人間の言語を全て潰してでもそうするべきと考えた、ごくごく当然の考え。

 滅べば全ての文化が消滅するがこうすれば人間言語というごく僅かな文化の切り捨てだけで助かる可能性が高くなるのだ。


「……つまり我々異世界人には特殊な能力が備わった。そう考えてよろしいか!」

「ああ、その通りだ。世界の壁を越える時、その先の環境に適応するべくその人物には様々な適応処置が自動的に施される。その適応こそが魔人族を打ち滅ぼす希望となるのだ」


(実力がある者が召喚されるワケではなく、召喚された者が実力者になるのか)


 前者ならば自分たちは高校生の身だから一気に胡散臭くなる。

 お世辞にも実力があるとは言えない奴らの集団。

 強い大人など世界中に溢れているし若さを兼ね備えた存在で言っても俺たちは不適切だ。

 だが後者ならばある程度の納得は出来る。

 実力など関係なしに若い人間の中からランダム。

 日本中の学校の中から自分たちが選ばれる可能性はかなり低いがゼロではない。

 実際に選ばれた者はそのかなり低い可能性に的中してしまっているのだから。


「その特殊な能力というのはどうやって把握すれば良いのか教えて頂こう!」

「ああ、その者が配る物を指の腹で撫でた後で鍵言を唱えればよい」


 国王がそう言うとさっきワザと無視した宰相らしき老人が大量の金属板を全員に配る。

 サイズで言えば生徒手帳と同じくらいでシンプルな銀色の薄い板だ。

 ちゃんと裏表があるらしく裏らしき面は無地で表らしき面にはよく分からない花の刻印が施されている。


「皆様、指の腹で軽く表面をなぞったあとに『ステータスオープン』と唱えてください。それがステータスの確認方法でございます」


『ステータスオープン』


 宰相らしき老人が説明すると周囲から僅かにズレて重なった鍵言が響く。


「ステータスオープン」


 一応周囲の奴らに異変が無い事を確認した上で俺も板を指でなぞってからそう呟いた。

 中二病 一度は必ず 準備する(五・八・五)


 ワリと真面目とネタでミルフィーユしたいタイプなので温度差で風邪引かないください。

 あ、友人は次回。

 更新は途中から不定期! ( ´Д`)ノシ

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