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俺が求める青春の形とは、一体何なのだろうか。  作者: ダンテ
第二章 文化祭準備編
8/15

第8話 大事な想い

彩華視点。これまでの話とは少し趣向が違っています。

時間的には第七話の続きで、第五話と深く関連しています。よろしくお願いします。

__________

 __________

 9月8日、22時00分頃、彩華宅玄関


「ただいまー。」


 私はたった今、恐らくお母さんしかいないであろう家に帰ってきた。

 今日は勇作君と2人でスタバで文化祭のイベント係の

 運営の事について詳しく話し合ってきたばかりだ。

 文化祭の幹部になれた事も嬉しいけど、

 勇作君と一緒にいることが出来る口実が出来たのが何より大きい。

 これからは遠慮せずに勇作君と2人の時間が作れるってことだよね。何それ、最高なんだけど。


「あら、誰かと思ったら彩華じゃない。今日は遅いのね。」

「お母さん。ちょっと今日は色々あったの。」

「勇作君とデートでもしてたの?」


 私のお母さんは妙に勘が鋭い人なのだ。

 私がどんなに勇作君への想いを隠そうと思っても、

 この人の前ではそんなハリボテな作り話はすぐにバレてしまう。

 というか、今までこの人に対して隠し事出来たことなんてない。


「まぁ、半分はあってるかな。」

「何それ。……まぁいいわ。」

「…じゃあ、私は自分の部屋に戻るから。」


  そんなよく分からないお母さんを横目に、私は自分の部屋に戻っていく。

 この家は東京のど真ん中にある一軒家で、私の部屋は1階の一番隅の部屋だ。

 割と家が広めなので玄関からだと私の部屋は一番遠いのだ。

 なんで一番手前の部屋をくれなかったんだろう。誰も使ってない物置部屋と化してるけど。


 ____________

 22時02分頃、彩華宅自室


「ふぅ……。」


 私は自分の部屋に入るなりため息をついて、ベッドの上に腰かけた。

 座った途端に自分の肩の力が抜けていくのが分かる。

 すごい色んなことがあった日だったな。

 まさか勇作君と2人でお出かけできるなんて最高だよ。

 でも今度は制服を着てじゃなくて、私服で色んな所にも行ってみたいな。

 放課後の限られた時間じゃなくて、1日全部使って思いっきりデートとかしてみたいな。

 あぁ、考えただけで楽しみだよ…。


 ~~~~♪♪


 私のスマートフォンの着信が鳴った。もう10時過ぎてるんだけど。一体誰だろう。


「ん、勇作君からのLINEだ!?」


 こんな時間に誰かと思ったらまさかの勇作君からのLINEだった。

 ど、どうしよう。いきなりハードル高いんだよ…。こういう時どうしたらいいのか分かんないよ…。


「とりあえず見てみる…?」


 私は恐る恐るLINEを開いて、勇作君からのLINEを確認した。


『夜遅くにゴメンね。今日の放課後はありがとう。』

『彩華と色々話し合えて結構タメになったよ、感謝してる。』

『それと2時間も引き止めちゃってゴメン。今度からは時間も気にするようにするから。』


 勇作君…。LINEでもそんなに相手の気を使えるのが流石だと思った。

 でも何て返したらいいのこれ…。


「とりあえず無難な返しでもしとけばいいのかな。」


『こちらこそありがとう。私は楽しかったから大丈夫だよ。』


 とりあえず正解が分からなかったので、当たり障りのない返答をしておいた。

 そしてすぐに既読マークが付いてビックリした。

 てか好きな人とのLINEってこんなに緊張するもんなんだ。

 女友達とだったら毎日のようにLINEはしているけど。

 一応返信はしたけど、勇作君に変な奴とか思われてないかな…。


 ~~~~~~♪♪


 1分くらいしてまた勇作君からの返信が来た。てか勇作君返信早いっ!


『なら良かった。俺も楽しかったから、つい長話になっちゃったんだ。』

『じゃあ俺はもう休むよ。おやすみ、また明日。』


 こんだけの文章を1分弱で送れる勇作君…。恐るべしタッピング能力…。

 私も見習うべきなんだろうか。


『うん。おやすみ、勇作君。』


 私がそう送った後、既読が付いただけでその後の彼からの返信はなかった。

 もう少しだけ彼とお話したいとは思うけど、

 きっと彼も疲れているに違いないと思うからこのくらいにしようかな。

 でもさっきのスタバの時にLINEを交換して、

 その日の夜の内に彼の方から連絡をくれるだなんて思ってもいなかった。

 なんなら私から送ろうと思っていたのに。


「…さて、それじゃシャワーでも浴びようかな…。」


 私は部屋にカバンを置いて、玄関の近くのお風呂場に向かう。

 その途中のリビングでソファーに深く腰掛けたお母さんが、

 枝豆をつまみにビールを飲んでいるのを見かけた。

 私はあんな大人を見るとだらしないとか思ってしまうけど、

 大人になったらお酒の良さとかも分かるものなのかな。


 ___________

 22時20分頃、彩華宅お風呂場


「はぁ……、お風呂って最高だよね……。」


 私はとりあえず服を脱いだ後、いきなり42℃のシャワーの熱めのお湯でシャワーを浴びる。

 シャワーが心の洗濯とはよく言ったものだ。

 まさに1日の疲れをまるごと洗い流してくれるようなこの至福の瞬間…。

 どんなに疲れていてもこのお風呂の時だけは、全てを忘れて楽な気分になれる。

 私はこの瞬間の為に1日頑張ってると言っても過言ではないよ。


 そういえば彼は私と一緒にいてどんな風に思ってくれていたのだろう。

 楽しかったって言うのは聞いたけど。安心できる、とか気楽にとか思ってくれてたら

 私は嬉しいな。私はもちろん楽しかったし、とても心地よかったな。

 次はもっと彼に甘えてみたりしてもいいかな。

 そしたらもっと彼に私の事を意識してくれるよね。よし、次は今日の2倍頑張ろう!


 私はそう決意を固めて、そそくさにお風呂場から出て行った。

 まだ5分とかしか入ってないけど今日は早く寝たいし、もう上がることにした。

 早く寝ないと明日起きれなくなっちゃうしね。


 __________

 23時00分頃、彩華宅自室 


 お風呂から上がってドライヤーで髪をとかした後自室に戻ってきた私は、

 すぐにモコモコした部屋着用の洋服を着た。

 この服は去年に行ったハワイで買ってきたお土産の服だ。

 上下ともにユニコーンカラーの不思議な色をしていて、

 UネックのTシャツにホットパンツというよくある組み合わせの洋服だ。


 ~~~~ピピピピ!!


「ひゃっ!!」


 落ち着こうとした矢先、机の上に置いてあった自分のスマートフォンが着信音を鳴らして、

 いきなり震えだした。何なのよ、一体。電話?


 私は机の上に置いてあったスマートフォンを取って、携帯の画面を見た。

 って玲奈からだ。あの子から電話がかかってくるなんて3か月ぶりだ。

 玲奈は私の1年生の時のクラスメートで、2年で別のクラスになってからは

 あんまり喋ってなかったな。こんな夜遅くにどうしたんだろう。


『もしもし。』

『もしもし~、彩華ちゃん?夜遅くにゴメンね~。』

『うん、大丈夫だよ~。てか玲奈が電話してくるなんて珍しいね。』

『うん。ちょっと聞きたい事があってさ。』

『聞きたい事?』


 玲奈が私に聞きたい事って何だろう。

 私と彼女の共通の話題と言えば、勇作君の話か斎藤先生の話だと思うけど。


『そう。今日の学校での話なんだけどね。』

『うん、何かな。』

『夏休み初日にさ、3組に転校生が来たのは知ってる?』

『あぁ~、チラッとだけ聞いたけど。それがどうかしたの?』


 今の所全然勇作君関連の話じゃないな。

 というかそもそも私にすら関係なさそうな話に聞こえるんだけど。


『その転校生の子が永田隼人君って言うんだけど…。ちょっとその子がさ。』

『うん。』

『永田君はどうも高野君の事を知ってるっぽいんだよ。』

『うん、それがどうかしたの?』

『しかも永田君は高野君を恨んでるっぽいんだよ。』

『恨んでる?』


 勇作君を恨んでるってどういう事だろう。

 その転校生の人は勇作君を知ってるってこと、、だよね。

 何だろう。中学か小学校の同級生だったりするのかな。


『そうなの。今日の文化祭総括会議の時もずっと高野君を睨みつけてたし。』

『え?何で総括会議の事を知ってるの?』

『え?あぁ~私文化祭実行委員になったんだよ。永田君もだけど。』

『そうなんだ。私ったら玲奈に全然気づかなかったよ。』


 玲奈も3組の中から文化祭実行委員に選ばれたんだ。

 隣に座っていた勇作君に夢中で全然他の人にきづかなかった。

 というかその転校生の人も文化祭実行委員になったんだ。

 転校してきたばっかりなのにすぐに文化祭実行委員になるなんて。何か目的でもあるのかな。

 普通転校してきたばかりで文化祭実行委員なんてやらないよね。


『うん。私もイベント係だから彩華と関わる機会は増えるね~。』

『そうだったんだ。』

『うん。第3回目の文化祭総括会議で顔合わせをすると思うよ。その時はよろしくね。』


 玲奈は1年生の時はよく一緒に遊んでたんだけど、こうやってまともに喋るのは

 1年生以来かもしれない。結構話し上手な子だから、お話してて飽きないのだ。


『話が逸れたけど、まぁ何が言いたいかって言うとね。』

『うん。』

『これは私の予想でしかないんだけど。』

『多分永田君は高野君に復讐しようと思っているみたいなの。』

『うん。』

『だから高野君に何かあったりしたら、彩華が守ってあげて欲しいなって。』


 いきなりそんな事を言われても困っちゃうな。

 いざという時に守るって言っても、私なんかに守ることなんて出来るのかな。

 実際彼の方が頭も回るし行動力もある。私が見習うべきの彼の尊敬できる点だ。


『…私に出来ることはするけど。でも何でそんな事を私に言うの?』


 今思ったんだけど、どうして勇作君にではなく私に言うのだろうか。

 勇作君本人に警告してあげた方が効果的だと思うんだけど。


『彩華ってば、高野君の事好きなんでしょ?それなら守ってあげないとね。』

『う、うん。』

『彩華の事だし、相変わらず関係の進展とかもないんでしょ?』


 …なんか癪に障る言い方だ。どうせ彩華だし~とかよく言われるけど、

 私だってやるときはやる女なんだよ。

 まだその機会が無いだけで、そういう機会があったらマジで頑張っちゃうんだよ。


『まぁ…。』

『高野君に何かあったら彩華も困るだろうからさ。』

『事が起きる前に先に彩華に伝えておきたかったの。』

『そ、そうなんだ。』


 その転校生の人が勇作君に復讐を考えているだなんて、本当にあり得る話なのかな。

 でも、高2の9月にそこまで進学実積率が高くない新淵高校にわざわざ転校してくるだなんて、

 何かの目的があるのは間違いないと思う。


『うん。じゃあそれだけだから。』

『もういいの?』

『そうだね~。もう私も疲れたし眠いからさ。』

『分かった。じゃあ、おやすみ。』

『うん、おやすみ。』


 10分くらい玲奈と電話して私は、電話を切りスマートフォンを机に置く。

 何だかすごいムズムズする感覚に陥った。

 玲奈は何故勇作君に直接言わないでわざわざ私につたえてきたんだろう。

 それに何故その転校生の人が復讐を計画しているのかもしれないのに、

 それを止めないのかとか。気になる事が沢山あるけど、気にしても分からないことだらけだった。


「はぁ…。もう寝ようかな…。」


 明日も朝早いしもう寝ることにした。

 私は部屋の電気を消して、ベッドに横たわり掛け布団を被った。

 そして私は何もない真っ白な天井を見る。


「……っ。」


 そして私はふと彼の事を考えた。……彼にとって私はどんな存在なんだろう。

 ただのクラスメート?それとも友達?はたまた違う事を思っているのかな…。

 私という存在が彼にとってどれだけのウェイトを占めているんだろう。

 いつか彼にとって一番大事な存在になりたいな。一番そばで彼を支えてあげたい、

 と割と本気でそう思えるのである。

 絶対に彼を私に振り向かせてみせる。そう自分が決意したばかりだしね。


「…寝よう……。」


 私は目を瞑り眠りにつく。明日は今日よりもっと頑張ろう。彼の為に可愛い私を沢山見せよう。

 そんな事を思いながら、私の意識は深い夢の世界に誘われていった。

___________

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