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俺が求める青春の形とは、一体何なのだろうか。  作者: ダンテ
第一章 各々の日常の高校生活編
2/15

第2話 私の高校生活とは、一体なんなのだろうか。

第一話の別視点からのお話です。時間軸は同じで、第一話と深く関連しています。

________

「…………。」


 何も考えずに、私こと高橋彩華は教室全体をぼーーっと眺める。

 ーーー黒板に落書きをして遊んでいる男子5人組、

 その隣には大勢の後輩女子に囲まれている前田君、

 そして窓側の前方の席辺りで恋バナで盛り上がる

 私がよく知る女子3人組とか…。ーーー


 なんだかいつもの日常を見るのも久しぶりな気がする。

 夏休み明け初日って何だか懐かしいような不思議な感覚になるよね。

 たった二か月しか経ってないはずなのに。


「おはよう、高野。」

「おう山上か、おはようさん。」


 私は、たった今教室に入ってきた勇作君を見つけた。

 教室に入ってきた途端に山上君に挨拶されていたけど、

 あんまり見たことない組み合わせだなーって思った。

 山上君といえば眼鏡をかけていて、とにかく真面目そうな見た目をしている男の子だから、

 勇作君みたいなキラキラしたタイプの人とはあんまり話さないと、私は勝手に思っていた。

 人って見た目で判断しちゃいけないんだね。


 勇作君は山上君と軽く挨拶すると、

 特に何もすることもなく窓側の列の前から4番目の席に座った。

 ーーー勇作君のことをなるべく気にしないようにしようと思っても、

 どうしても目で追ってしまう。

 私はいつからこんなに彼の事が気になっていたんだろうか。

 私は特に意識することもなく、自然と彼に惹かれていたような気がする。

 少なくとも高1の後期には既に彼の事が大好きだったんだと思う。

 そんな彼のしぐさ、言葉使い、表情のわずかな変化の一つ一つを見るたびに、

 私は心をくすぐられるみたいな感覚に陥る。

 でもそんな感覚は全然嫌じゃない。むしろそれを心地よいと感じている私自身がいることに、

 私はびっくりしている。本気で人に恋をするまではこんな感覚は分からなかったし、

 そもそも知る機会もなかったんじゃないかと思っている。

 恋がこんなにも私を変えてしまうものだったなんて、思ってもいなかった。

 自分は恋をしても無頓着な女だと思ってたのに、とんだ見当違いだったみたいだね。ーーー


「-----ってば!」

「彩華~~~!!」

「わっ!!」


 考え事をしてて呼ばれていることに全く気付いていなかった私に、

 一人の女子が私にふくれっ面で話しかけてきた。


「な、何かな?、理紗。」

「何かな、じゃないよ!さっきからずっとあなたの事呼んでたんだけど!」

「ご、ごめん。」


 この子の名前は加藤理沙。

 私とは高校一年生からの関わりで親友と呼べる友達だ。

 彼女は高1からのクラスメイトで、勇作君の事もよく知っている。

 理紗は、私が勇作君のことが好きなのを知っているから、よく冷やかしてくる。

 私はその度に全力で止めさせようとするけど、そのリアクションを面白がられて

 いて中々やめてくれない所とかちょっとだけ困っている。

 けど、相談事には親身に乗ってくれる所とかもあるし、

 頼りになることがとても多いこともあって、とても信頼している。


「まぁいいけど。ところで何考えてたの~?高野君の事かな?」

「違うよ…。」

「やっぱり。彩華っていつも高野君の事になるとホントに周りの声とか聞こえなくなるよね~。」

「私の話、聞いてないじゃん…。」


 最初から分かってるんだったら、わざわざ聞かないでほしいとか思ったりした。

 ホントに理紗はそういう意地悪な所があるんだよね。

 そこさえ直したら顔はモデルみたいに可愛いんだから、すぐに彼氏ができると思う。

 本人曰く、彼氏とか全く興味ないって言ってるけど絶対そんなことないと私は思っている。


「まあまあ、細かい事は気にしない!」

「てかさ~。彩華ってば、高野君に挨拶してこなくていいの~?」

「ふぇぇ!?」


 私は突然勇作君の事を言われて、びっくりしてしまった。

 ホントに不意打ちはやめてほしいんだよ。


「なによ、その反応。好きな人にくらい挨拶してこないとダメだよ。可愛い彩華を見せつけてくるんだよ!」

「う、うん。分かったよ。」


 私は座っていた椅子から立ち上がり、身だしなみを整える。

 勇作君の前では少しでも可愛く見られたいと思うから、

 なるべく直せるところは直して完璧な私を見せたいと思う。

 勇作君がどう思ってるのかは正直分からないけど、

 少しくらいは私を意識してくれていると思いたい。

 そして私は今いる廊下側の席から、窓側に座っている彼の所に歩き出して、彼の机の前に立った。


「おはよう! 久しぶりだね! 勇作君!」

「あぁ…。おはよう、高橋さん。」


 彼は驚いたと言わんばかりの表情をしている。

 今まで朝に彼に話しかけに行ったことは、高1から数えても多分10回くらいしかないと思う。

 彼の瞳の中の凛々しい光に吸い込まれてしまいそうになるけど、

 私は自分の最高の笑顔を意識しながら、彼に自分の言葉を伝える。


「勇作君に会えて嬉しいよ! 今日も頑張っていこうね!」

「お、おう。」

「私、夏休みの思い出とか、後で色々勇作君とお話ししたいな~。」

「そ、そうか。」

「うん!じゃあそろそろ私、席に戻るね! じゃあまた後でね!!」


 私は駆けるように彼の元から自分の席に戻った。

 するとそこには私の席に座って、気持ち悪いくらいにニヤニヤしている理紗がいた。

 もはやその表情は悪魔みたいだよ……。


「彩華ってばやるじゃん。あんな乙女な表情出来たんだ。」

「そ、そんなんじゃないよ。」

「い~や!彩華を2年見てきた私には分かるよ。貴女のあんな女の子らしい表情、初めて見たもん。」

「それ、褒めてるの?」

「もちろん!もし私が男で、女の子にあんな表情で話しかけられたら、速攻好きになっちゃうまであるよ!」

「そうなの…?」

「うん!!」


 まぁ、言いたいことはあるけど理紗がすごく嬉しそうなのを見れたし、

 悪い気分ではないのかもしれない。

 ホントにこういうあざとい笑顔や反応は、私は理紗に敵わないと思う。


「じゃあ、私は自分の席に戻るから!」

「うん。」

「また後で続き話そうね~!」


 理紗はそう言って手を振りながら、教室の真ん中の後ろの方の席に戻っていった。

 なんか今日の理紗、いつもよりテンション高かったな…。


ーーーキ~ンコ~ンカ~ンコ~ンーーー


 そして夏休み明けの初めての学校のチャイムが鳴る。

 なんだかこのチャイムの音も久しぶりな気がする。どうせまたすぐに慣れると思うけどね。


「おーい!席に就けお前ら~! HR始めるぞ~!」


 声をあげながら2年2組の担任教師である斎藤先生が教室に入ってくる。

 斎藤先生も普通にイケメンだし、大人の男性としてはカッコいいとは思うけど、

 やっぱり私は勇作君が大好きだ。

 そんな窓側に座っている彼は先生が教室に入ってくるのを見て、

 本気で憂鬱そうな表情をしていた。


「こんな青春、今しかないよね。今よりもっと楽しまないと…。」


 私は小声で独り言を呟いて微笑む。彼を絶対に振り向かせて見せる、と、私は自分の心に誓った。

そして今日も私は、この少し変わったいつもの高校生活を過ごしていく。-----


ーーーーーーー

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