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俺が求める青春の形とは、一体何なのだろうか。  作者: ダンテ
第二章 文化祭準備編
11/15

第11話 復讐の誓約

勇作視点。かなり時間が飛んで12月になっています。よろしくお願いします。

__________

 __________

 12月1日、18時40分頃、新宿駅西口付近


「…あぁ。寒い…。」

「…折角のデートなのにそんな事言ってないでさ~、勇作君。」

「寒い事には変わりないだろ。…それに何?お前今、デートって言わなかったか?」

「うん、言ったけど。違うの?」

「違うだろ…。これから残った仕事を消化しにいこうってお前言ったじゃん。」

「まぁまぁ~、それもそうなんだけどさ~。」


 それもそうって…。余った仕事をこなす方が間違いなくメインなんだよなぁ…。

 てか今日の学校での作業時間の内で仕事が終わりきらなかったから、

 放課後にやろうって話になったんだよな…。全く…。

 回ってくる仕事の量があまりにも多いんだよ。

 普通じゃ考えられないような数の仕事を実行委員会本部から回されてくるし、

 それの提出期限も2日後とか異常に短いのもザラにあるもんだから、

 正直やってられない。マジでブラックにも程があるんだよ。


「…で?今日はどこで仕事するんだ?」

「う~ん…。…普通にいつものスタバとかでいいよね?」

「毎度だな。じゃあ早速行くか。」

「うん。」


 そして俺達は凍える北風を受けながら、騒がしい新宿駅を背に歩き出した。

 ___________

 18時50頃、新宿駅西口スタバ店


 スタバに着いた俺達はいつも2人用テーブル席に座ろうと思ったが、

 あいにくその席は既に埋まっていたので、その2個隣の4人用テーブル席に座った。

 俺達2人にはちょっとだけ広いような気もするが、スペースがある分には特に問題ないだろうな。


「よっと…。じゃあ私何か買ってくるから。勇作君は何がいいとかある?」

「いや特にないな。彩華に任せるわ。」

「分かったよ。でも何が来ても文句言わないでよ?」

「言わないよ。」

「約束だからね。じゃあ私のカバン見といてね。」

「任せろ。」

 

 そう言った彩華は席にカバンだけ置いて、カウンターの方に歩いて行った。

 このスタバは9月の時に彩華と一緒に来てから

 それからは週一くらいで来ていて既に10回は来ていることになるが、

 相変わらず俺には合わないようでどうも気が落ち着かないのである。

 やっぱ俺にはこういうオシャレな空間は向いてないんだよな。

 まぁ知ってましたけどね。

 そして俺は自分のカバンから今日の余った仕事の資料を机の上に出して、

 何が残っているのかの確認を始めた。

 そして10分くらいして彩華が席に戻ってきた。


「おまたせ~。待たせてゴメンね。」

「いや、そんなには待ってないから大丈夫だ。」

「なら良かった~。」


 そう言って彩華は机に抹茶フラペチーノとキャラメルマキアートを置いた。

 あぁ、やっぱりね。いつもこれだもんね。彩華さんったら抹茶フラペチーノ大好きだもんね。


「勇作君はキャラメルマキアートで良かったかな?」

「あぁ。いつもこれ飲んでるしな。」

「そうだね~。…っていうか、もうだいぶ一緒に2人でスタバ来てるよね~。」

「そうだな。結構な数来てるな。」

「ね~。」


 そう言うと彩華は俺の向かいの席ではなく、何故か俺の隣の席に座ってきた。

 しかも何だか距離が近いような気がする。

 そういうのマジで勘弁してくれないでしょうか。心臓に悪いんですよ。


「何故隣に座るんだ。」

「いいじゃん別に。それより仕事しようよ。今日の分終わらなくなっちゃうし。」

「いや、お前なぁ…。」

「何か問題でもあったかな?」

「…。特にないです…。」

「うむ。」

 

 そうして俺達はいつもの様に結構真面目に仕事を始めた。この光景ももう見慣れてしまったな。3カ月前の俺からすれば、まさかこれが習慣化するだなんて思ってもいなかったな。


 ___________

 20時30分頃、新宿駅西口スタバ店


「ふぅ…。終わったね~。」

「あぁ。意外と早く終わった方だな。」

「そうだね~。」


 学校で頑張ってきたおかげで今日は2時間もかからずに終わらせることが出来たな。

 てか学校の多目的会議室よりも、このスタバの方が

 静かで集中出来る説は大いにあると思うけどな。学校うるさいんだよな、マジで。


「まだ21時にもなってないしね~。…じゃあここでゆっくりしてく?」

「うーん。俺は帰りたいような気もするけどな。」

「え~。そんな事言わず…、…あれ?」

「ん、どうした彩華…。ってお前らは…。」


 顔を下に向けていた俺が顔を上げると、そこには見慣れない驚くべき2人が立っていた。


「彩華と高野君ね。久しぶりだね。」

「あ、玲奈じゃん、それとその隣にいる男子は?」

「……………。」


 現れたのは玲奈と俺が知らない男子だった。てかどうしてスタバに玲奈がいるんだ?

 玲奈も顔は笑っているけど何か目の奥に冷たいモノを感じるし。

 しかも今20時半だぞ。こんな時間に一体何をしに来たんだろうか。


「ちょっと隼人が高野君に話があるって言うから来たの。」

「貴方達、大体ここにいるもんね。」

「……………。」


 隼人…?玲奈の奴、この男から俺に話があるって言ったよな?そもそも俺はまずコイツを知らないんだよな。パッと見では身長は見た感じ175cmくらいで、かなり筋肉質である事が見受けられる。しかもずっと下にうつ向いていている上に、一切俺に目を合わせてこない事に加えて一言も喋らないぞ、コイツ。一体何を考えてるんだ。


「…。ほら隼人ってば。黙ってないでさ。話があるんでしょ?」

「……。あぁ…。」


 その男は玲奈に諭されるとようやく顔を上げたと思ったら、その視線は俺の方には向かず単に真正面を向いていたといった感じだ。どうやら俺はコイツに相当によく思われていないらしい。それはコイツが醸し出している雰囲気からも窺えるほどだ。


「……高野勇作。お前に話がある。」

「……ついてこい…。」


 隼人と呼ばれていた男は、そう言い放ち体を180°反転させてゆっくりと歩き出し、俺に店の外まで同行を求めてきた。何故だ、何故そんな回りくどい事をするんだ。この場で話せる話じゃないのか?


「おい、待て。ここで話すんじゃダメなのかよ。」

「…………。」


 俺の言葉が聞こえたのかアイツはコチラを向かずにその場で立ち止まった。まるで意地でも俺の言うことなど聞かないと言わんばかりの態度だ。何だよ、その態度。俺までムカついてくるじゃねぇかよ。


「高野君。」


 すると座っている俺達の目の前にいた玲奈が、俺に『行かないとダメだよ。』と言わんばかりの雰囲気で俺の目をまっすぐ見つめてきた。…何だよ、お前まで。…コレは行かないとダメな雰囲気ですね。


「はぁ…。分かったよ。…行けばいいんだろ。」

「勇作君…。」

 

 俺はため息をつき席から立ちあがった。そして俺は立ち止まっているアイツよりも速く店から出ようと思い、早足で店の入り口まで一直線で歩いた。それを横目で見ていたアイツも同じく俺の後から1人でに歩いてきた。何だよこの感じ。この腑に落ちない感じが俺的にマジで気に入らない。クソッ、何で俺がこんな扱いを受けなくちゃならないんだよ。


 ____________

 20時45分頃、新宿駅西口スタバ店入り口前


「………。」

 

 コイツと玲奈の圧力に従い店の外まで付いてきたやった俺だったが、

 コイツは2、3分黙り続けていて下を向いてうつ向いてるのである。

 マジで寒いんですけど。今日6℃とかしかないんだぞ。

 そんな中何もせずに待たされること自体が拷問に近いのだが、

 それに加えてこの険悪という言葉で表しきれないほどに

 最悪の雰囲気に包まれている中で待たされている事が何よりの拷問なのである。

 …しょうがねぇな。埒が明かないし気に入らないが俺から話すか。


「…おい、俺に話があるんじゃなかったのかよ。」

「黙ってても埒が明かねぇし早く話したらどうなんだよ。」

「……。お前……!」


 それを聞いたコイツはいきなり顔を上げ俺を鋭く睨みつけてきた。何でだよ。俺はホントの事を言っただけじゃねえかよ。何で俺が睨みつけられなくちゃいけないんだよ。マジで意味不明だ。


「お前…。俺を覚えていないのか…?」

「…は?」


 やっと話し始めたと思ったら飛んできた言葉があまりに意外で、俺は拍子抜けしてしまった。…というか知ってるわけないでしょうよ。だってお前9月に転校してきたばかりじゃなかったでしたっけ?たった3カ月で同じクラスにもならなければ、知っているわけがない。


「お前のそのご都合主義な所は中学の時から何1つ変わってないな。」

「…中学って言ったか、お前?」

「あぁそうだ。俺はお前と同じ中学だった永田隼人だ。」

「…中2の文化祭でお前に濡れ衣をかけられた永田隼人だよ!」

「これだけ言われても思い出せないほど、お前はご都合主義ではないよな。」


 しれっと最後に煽りやがったなコイツ。…っていうか聞き捨てならない事が聞こえたな…。

 コイツが永田隼人だと?俺が知っている永田隼人は身長も150cm代で小さく、

 全体的に体が細身で運動なんか到底出来そうになく、

 何より一番に内気なイメージが強く残っていた。

 それに比べて今俺の目の前にいるのは、

 身長も高く筋肉質でいかにも喧嘩が強そうなヤンキーにしか見えない男だ。

 まるで同一人物とは考えられない。本気で言ってんのか?

 中学の頃と何1つ面影がないんだよな。


「…。お前が永田隼人なのか?今のお前は口調や見た目から含めて全部が、俺が知っている永田隼人とは正反対なんだが?」

「…だろうな。…俺はお前に復讐する為内気な自分を打ち破ったんだよ。」

「は?俺に復讐だと?」

「あぁ。お前のせいで俺は中学校を謹慎処分させられた後、

 お前に復讐する為にあらゆる事をやったんだ。」

「お前との喧嘩に勝てるように1年間もボクシングをやった。そしてお前のいる高校に途中編入するために独学で猛勉強もした!そして何よりお前になめられないように内気な自分を変える努力をしたんだ!」

「…お前に復讐する為だけに俺はこの3年間、全力を尽くしてきたんだ。」

「そしてようやく掴んだこのチャンスなんだ。つまりこれを逃す手はないというわけだ。」


 コイツはそう話している途中も俺から一切目を離すことなく睨み続けてきていた。どうやら本気のようだな。というか中2の文化祭の話をまだ根に持ってたのかよ…。俺からしたらそこまで大した事じゃないと思っていたんだが。もちろん悪い事をしてしまったなとは思ったけどな。


「…いいか、高野勇作。1つお前に対して宣言してやる。」

「今年の12月に行われる文化祭にて、俺はお前に復讐を実行する。」

「お前が中学の時に俺に与えた心の傷を、今度はお前にも味わせてやる。」

「俺が受けた心の傷よりも更に深く、一生残り続けるトラウマを植え付けてやるからな。」

「せいぜい今の内に覚悟でもしておくといい。」


 黙って聞いてやっていたらずいぶんと勝手な事を言い張るもんだな、コイツは。何一つ面影が無い的な事は思ったが、その執念深い所はまるで変っていないな。


「お前な…。そんな事して楽しいのか?」


 俺がそう言うと永田は今日1番の不気味な笑みを浮かべて、俺に1歩近づいてきた。


「…あぁ、もちろん。お前が苦しむ所を見れるならそれより最高の瞬間はないだろうな…。」

「フンッ…。お前中々いい性格してるじゃねぇか。」

「強がっていられるのも今の内だぜ。」

「文化祭が終わった頃には、お前は俺に対して確実に恐怖を抱いているんだからな。」


 そう言った永田は一瞬だけ俺にガンを飛ばして店の中に戻っていった。そして30秒もしない内に店から出てきた永田は、玲奈を連れて新宿駅方面に早足で歩いて行ってしまった。一体何だったんだよ。こういう時どういう風に受け止めればいいのか分からないんだよなぁ…。


「勇作君…。」

「あぁ。彩華か。」


 すごく心配しているような表情をしている彩華が、俺と彩華の2人分の荷物を持って店から出てきた。そう言えば玲奈と彩華の2人は店の中でずっと待たせてたんだよな。一体どんな話をしていたんだろうか。とても気になる所ではあるが、今は聞くべきではないような気がした。


「玲奈から全部聞いたよ…。勇作君、文化祭大丈夫なのかな…。」

「うーん。分からない。でも…。」

「そんな事を考えていてもしょうがないし…。仮に本当に復讐されるにしても俺だけだろうしな。彩華が気にする事は何もないだろ。」

「………。」 

「勇作君が復讐されてひどい目に合っちゃったら、私……。」


 そう言うと彩華は下を向いてしまった。そうか…。俺にも心配してくれる人がいるんだよな…。

 その実感だけで俺の心が温まっていく気がした。


「…大丈夫だ。彩華。」

「…え?」

「…彩華。」


 そして俺は下を向いている彩華の両肩を両手で優しく掴んで、俺はまっすぐ彩華の方を見る。

 それに応えてくれるように彩華は顔を上げて俺の目をまっすぐに見てくる。


「何の確信もないけどさ。俺、何だかんだどうにかなるような気がするんだよ。」

「だからさアイツの復讐なんかは気にせずにさ、文化祭を成功させる事に集中してほしいんだ。」

「…勇作君。」

「だからそんな悲しそうな表情をしないでくれよ。悲しんでるよりも、笑ってる方が幸運が回ってくるしな。」


 そして俺は彩華の両肩を掴んでいた両手を離して、俺は笑顔を心がけて彩華に接していく。


「まぁ、何て言うのかな。うまく言えないけどさ…。その~。」

「要するに心配いらないって事だ。」

「フフッ、何それ。…でも勇作君らしいね。」

「そうだろ。」

「うん。」


 そして俺達はその後、おかしくなってしまってお互いに20秒くらい声を上げて笑いあっていた。俺にもよく分からないが、さっきまでこの場に包まれていたものとはまるで別の雰囲気だった。それは少なくとも心地の良いモノで、いつまでも大事にしていきたいような感じだった。


「…うん。じゃあとりあえず帰る?」

「あぁ…。」


 そして俺達は笑いあった後一緒に新宿駅までの道を歩き出した。

 俺達に待っている道の先にあるのは光なのか、はたまた闇なのか。

 それは俺はもちろん、他の誰にも分からない。

 でも一番大事なのは自分が明るい未来に向かおうと努力する事だ。

 その過程に何があったとしても、最終的に明るい道を掴めればいいんだ。

 俺はその考えが正しいと信じ続けている限り、きっとそれは正解であるはずだ。

 そう、それだけが唯一の心の拠所だったはずだから…。

 …………--

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