図書館とJS
「ねえ、小学生を目で追わない。警備員さんにロリコンだと思われて図書館追い出されるよ」
「僕はただ小学生がこっちに走ってこないか気を遣ってただけなんだが」
沙音華と行った図書館は、たくさんの小学生でにぎわっていた。
自習スペースは図書館の端にあり、そこの近くには子ども向けの本コーナーがある。
だからたくさんの小学生がいる地帯を抜けないと自習スペースにたどり着けない。
「ここコンセントあるじゃんやった!」
沙音華はパソコンを電源に繋いで早速起動。パソコンでレポートを書いてメールで提出する流れのようだ。
一方の僕は大人しく化学のテキストを広げる。
たくさんの六角形を見つめながら考え込む。
というか、この図書館。確かに吹き抜けになっていてとても開放感があるんだけど。
どうして子ども向け本コーナーの横に自習スペースを作ったのか。
小学生が僕の周りでおにごっこのような遊びを始めたんだが。
「あんまり集中できない?」
「いや、悪くはない。あんまり静かすぎるのも苦手だから」
「そっか。私が脱いでないと集中できないんだったらいつでも脱ぐから言ってね。今着てるのは下着だけど」
「それやったら、警備員さんに捕らえられて、それを見ていた小学生が学校に報告して、地域の不審者情報の手紙に堂々載ることになるな」
「そうだね〜」
そうだよ。流石入試を突破しただけあって理解が早い。
僕はテキストに意識を戻す……つもりだったのだが。
ごん、ごんごんごん
お尻の下が揺れるんですけど。
椅子の下を見てみれば小さなJSと目があった。
「こっそりここにいる」
「おお」
「かくれんぼしてるから」
「なるほど」
「としょかんのなかだし、しずかにね」
「ああ、はい」
図書館の中だから静かにしなきゃいけないのはそうだと思うけど、かくれんぼするのはどうなのか。
まあ小さい子にとっては図書館の棚は迷路みたいなもんなのかもしれない。
「ねえ、なんさい?」
「どうした。僕と話してると見つかっちゃうぞ」
「それもそうだね。でもわたしみつからないとひまだし」
「そうか。僕は十八歳だよ」
「じゅうはっさい? おねえちゃんといっしょだ。じゃあ大学生?」
うおおおお。すげえ僕にダメージをあたえること聞いてくるなこのJS。このテキストを見てほしいな。この六角形に色々生えた物質の謎を解き明かさないと大学生になれないんだからな。
「だ、大学生ではないな」
「じゃあおしごとしてる?」
「してないな」
「……」
「……」
「……あやしいひとなきがしてきた、にげるからばいばい」
JSは僕にそう言い残し椅子の下から急いで出て行った。
「あー! みっちゃんみっけた!」
「みつかっちゃった」
そしてあっさり見つかるJS。
そしてそれを見届ける、あやしいひと認定された僕。
JSにも怪しまれる浪人生。一刻も早く卒業したい。