周りの意識が高い
「あ、おお、こんにちは」
僕がそう返すと、その後輩は、僕に少し頭を下げて最前列に行った。
意識が高い。
意識が高すぎる。最前列なんて、先生から突然当てられるし、絶対落ち着かない気がする。
けれど、実力の高い人にとっては、居心地がいい位置なんだろう。
僕はついこの前返ってきた志望校別模試を思い出す。
数学が偏差値37の状態で、他の科目でなんとか稼いでギリギリB判定。
夏よりも成績が下がってしまっていた。
予備校の統計として、模試の数学の点数と本番の数学の点数は、他の科目に比べて相関関係が低いというものがある。
つまり数学はその時の問題によって点数が大きく変わってしまうということだ。
しかしそれにしても、偏差値37は明らかな実力不足。
なんとなく、思い出すたびに、嫌な予感がしてしまい、忘れようと思ってしまう。
実際忘れる方がいいのかもしれなくて、山上先生によれば、去年模試の成績ばっかり引きずって第二志望にも落ちしまった人がいるらしい。
でも、気にしないようにしようとしても、気にしないようにしようと思わないと気にしないことができないのならそれは気にしてるってことなんじゃないかと思って、なんだかよくありそうな悪循環に入った気持ちになる。
授業が始まる直前の頃になって、教室のドアから菜乃さんが入ってきた。
僕の前の席に座った。
「たいせいくんおつかれ」
「おつかれ」
このお疲れは日々の勉強に対するお疲れだ。
十秒ほどで菜乃さんが準備を整える。
やはり意識が高い。
昔少しふんわりした雰囲気だった菜乃さんも、最近てきぱきしてるし、あんまり無駄な会話はしない。
というか僕の周りの全人類がそうなってそうで。
周りのことがいちいち気になるのも模試の成績を気にしすぎるのと同様良くないらしいけど。
やっぱりそれも気になる。
きっとそれは結局、いくら自分の中で頑張っても、周りに勝たなければ、今の僕の目標は達成できないからだ。
それが受験。
これを考え始めると、正直、ちょっと疲れてくる。
やはり、去年も体感したように、厳しい戦いなんだ。
共通テストまで一か月と少しになって、そう強く感じる日々になりそうだ。




