わいわいする人たちがいるみたいだ
体育祭に行った日からもさらにたって、もう秋のど真ん中だ。
毎週のように演習を受ける日々なんだけど、それも結構慣れた。
ちなみに成績優秀者トップ3には、いつも榎咲がいる。
そして、僕は……なんと今回、始めて載った。
18位で。
僕は、だいたいこういう時は嬉しくなってしまうもんなんだと思う。
別にこの演習でいい成績を取ればなにか前進するわけではない。
けど、今日の僕は心なしかにやにやしていたんだろうな。
予備校をサボる人が増えたのと偶然が合わさって、最近隣に誰もいないことが多い。
広々とテキストを広げられて勉強の効率が上がるから、いいことである。
昼休み、榎咲が隣に弁当を置いて座ってきた。
「よお。なんかにやついてるぞ」
「あ、まあな。僕単純だから18位で喜んじゃってるんだよね」
「泰成18位だったのか、よかったな」
「まあよかったよ。でもできたら榎咲みたいに毎回トップ3になりたいな」
「え、俺毎回トップ3なのか」
弁当箱を開けながら驚いてる榎咲。
「やっぱり知らなかったか」
「見てないんだよな掲示板。でもそんな俺でも最近昼休みになると人が一段と減る理由は知ってるぞ」
「え、そっちは僕知らないわ」
でも言われてみれば、サボってる人がいるぶん少ないっていうのを通り越して、昼休みは異常に人が少ない。
「みんなどっか行ってるの?」
「そうだぞ、最近流行ってるんだよな、ニロホ」
「ニロホって…あの巨大休憩室のことか」
ニロホとは、二階ロータリー上ホールの略で、予備校のエントランス前の小さなロータリーの上に位置するホールだ。
ここでぺちゃくちゃ喋って授業をサボったりしてる一浪の人たちが、よく落ちて二浪するので、「二浪ホ」と呼ぶ人もいる。
というか会話上はほぼ同じ音なので、まあとにかくニロホだ。
そのニロホで昼休みのんびりしている人が多いということか。
「なんでみんな今の時期になってニロホに行くんだ?」
「そりゃあもう入試が近づいてて、昼休みしか楽しいときがないからだろ」
「なるほど、昼休みくらいわいわいやらないとやってられない的な」
「そう。それだな」
僕は考えてみた。榎咲は集中力がある方だ。かなり。
昼休みにわいわいやってない、今教室に残っている他の人を見ても、真面目で根気がありそうな人が多い気もする。
僕は集中力も根気もない。なのになぜ、昼休みをそこまで無駄に使わずに基礎知識確認をしたりできているのか。
それは、沙音華がいるからなんだなと思う。
沙音華がいるおかげで、ストレスが溜まってないんだな。
もちろん予備校で、榎咲や奈乃さんのように勉強をコツコツ頑張る人と仲良くなれたってのも大きい。
今更、勉強を進めて行く上で恵まれた人間関係だということに気づいた。
と幸せを感じていた僕だけど、ニロホでわいわいしている連中に絡まれることになる。




