チョコとおっぱい
「ねえ……おやつ食べる?」
僕が黙々と英語の長文の和訳にいそしんでいると。今日は二メートルくらい後ろにいる沙音華がポテチの袋やチョコレートを持って訊いてきた。
「ちょっときり悪いからもうちょい」
「じゃあ、食べさせてあげよっか。私が後ろから」
「いいですそれは。あと二行くらいで終わるから」
「じゃあ待ってまーす」
と言いながらポテチの袋を開けてばりばり大胆に食べ始める音がした。水色のおしゃれな水着が台無しになってそう。ていうか食べながら待つのかよ。
「……よし、終わった。まあまあうまく和訳できたぞ」
「試験だと時間制限があるからね……」
「わかってるよ。もっと構文早く理解できるようにしとかないとな」
僕は椅子から降り、部屋の真ん中の低いテーブルをはさんで沙音華と反対側に腰を下ろした。椅子に座るのとあぐら。どっちも座ってるは座ってるけど、座り方が違って、それだけで気分も変わる。
僕と沙音華はお菓子を分け合って食べた。ポテチはすでに結構減っていた。ついさっきまで沙音華は、ポテチを一度に三枚くらい口に入れる水着姿JDだったに違いない。
「泰成さ……あ」
沙音華がチョコレートを谷間に落とした。いやあ……そっちみるよね。ものが落ちた先を見るのは普通でしょ。浪人生は、落ちたという現実から目をそらさないことが大事だよね。
沙音華の谷間に指を突っ込むと、指が程よく柔らかく圧迫されるんだろうなあ……なんてな。僕の指は高級シャーペンの柔らかグリップ一筋だから。
「このままおっぱいに挟んどくと溶けるよねチョコ。あ、化学の問題になるかな」
「ならないな。早く食べろよ」
沙音華はチョコをおっぱいから拾い上げ、口に入れる。ポテチと違ってチョコはかわいらしく口に入れるんだな……。そして、さっきまでチョコがあった谷間。
「あ、チョコ拾ったのにまだ私のおっぱい見てるし。うわー! 変態たいせー」
「小学生のはやし立てかよ」
小学生とはかけ離れた大きなおっぱいを用いてるくせにな。
僕は沙音華のはやし立てをスルーして、自分でチョコを袋からとって食べた。
頭を働かせるには糖分は大事だしな。