クモとの再会
それから二時間くらいだったのでちょっと休憩するか、と思って、僕は沙音華を振り返った。
「あ、どうした? 休憩? 私のおひざくる?」
「いや、それはいいや、休憩はするけどね」
僕はいつの間にか水着になっている沙音華を日常を感じながら眺めた。
……あ。
やばい嘘だろ。
沙音華の肩にクモがついてる。さては天井からぶら下がって着陸したな。
教えるか教えないか迷うな。
教えると……騒ぐ絶対。
教えないと……見つけた時に驚いて騒ぐ絶対。
でも気づかないままクモがどこかに行くかもしれない。
よし、教えないことにしよう。
と決めた瞬間、沙音華が自分の肩を見た。
あー、やばい。
「たいせクモおおおおおおおおお!」
「落ち着いて僕が取るから」
「ついてるついてるついてるついてる!」
「取ってあげるから待って」
「ほら、普通に再会したじゃん! くっついてるし!」
「おんなじのかはわかんないよ。てか、あれ? どこに行った?」
沙音華のところまで行く間の数秒で消えた。
「え、どこ? 私もわかんない? むむ、胸の間だったらどうしよう?」
「そんなところ逃げないだろ」
いや、でも結構クモにとってはいい感じの隠れ家か?
「たいせ探してよ〜!」
「探してるよ」
「水着の中ものぞいていいから」
「それはのぞかない」
「のぞきたくないの?」
「いやのぞきたいけどね、あ、ミスった。違うとにかくクモはそんなところにはいない!」
あ、ほらいた。沙音華の背中についてる。
僕はクモをつまむと、窓をさっと開けて外にばいばいした。
「逃したよ」
「よかった〜。やっぱりクモ本当にやだ」
「小さくて別に何もしないのに」
「でも足が多いよなんか。昆虫の3分の4倍だよ」
「それが多いことの表れかは微妙だな」
沙音華はとりあえず落ち着いたように机に腕を乗せた。
僕も沙音華が落ち着いたことに一安心。
と穏やかな雰囲気になっていたところで沙音華が言った。
「でも、たいせ、やっぱり私の水着の中のぞきたいとか思ってるんだね〜私のどこを見たいのかな」
「いやあれはクモをとるためにならなんだってするということの表れであって……」
なんでクモをとってやった僕が慌ててる状況なんだよ。
「ま、たいせがへんたいなこと考えてるのはいつも知ってるし」
しかもなんでそんな余裕で僕のこと把握してるアピールしてんだよ。
……とにかく、ゆっくりと休憩をしたかったのにクモのせいでそれができなかったのでつらい。




