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沙音華は優しいんだ

「えええ! 女の子とふたりでおべんきょしながらご飯食べてたの? 夏期講習エンジョイ勢になってるよ、よくないたいせ」


「結構勉強すすんだぞ」


「そうならいいよ。私は別にその子と付き合ってもいいと思うし! うん思う!」


「……友達って感じだしまだ話すようになってからそんな日が経ってないんだけど」


「へー」


 沙音華はにやにやしてそして抱きついてきた。


「でも、わたしとこうやっているのもモチベ上がるし好きだよね?」


「いいな」


「よかった」


 沙音華は僕にだらりと脱力抱きつきをしてきた。


 二の腕が肩のところに来て、ちょっと掴んでみたい。


 しかし、気をとられるというよりも、安心して勉強できるなって気持ちになる。


 ほんと、入試の時も来てくれたらいいな。


 でも即失格になるな。




 それから、僕は奈乃さんと楽しく夏期講習で学力を成長させることができた。


 沙音華と過ごしている時間より、奈乃さんといることの方が多くて、沙音華が納得いかない感じにになっていた。


 でも沙音華は沙音華で、サークルのメンツでたくさん遊びに行ったりしてて、浪人生が見たくなくなるくらい羨ましすぎる大学生活を送っているようだった。


 でも、それはあんまり話さない。


 多分僕がうらやましくなりすぎて萎えないように気を遣ってくれてるんだとおもう。


 沙音華はそういう風に色々と優しい幼馴染なんだ。ここのところ肩でふにってなってる二の腕と同じくらい優しく僕に接してくれている。


「ありがとう」


「え? どうした? いつもよりも気持ちいい理由でもあるの? あ、もしかしてわたしが柔らかくなったからかな……それだったらもっと痩せないと!」


「違うよ。いつも思ってる」


「あ、そうなんだ……ありがと」


 後ろで沙音華がいつもより控えめに言った。


 僕は夏期講習のテキストを広げた。


 ちゃんと勉強して、毎日成長しないと。


 合格して、沙音華と一緒の大学に通いたい。


 そういう気持ちが強くなったから、僕は集中して問題文を読み始めた。


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