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外の運動の方がいいよ

 次の日から僕は予備校の階段を無駄に登り下りするのを実行した。


 例えば昼休み、一階に行くために一旦最上階まで行ってからまた降りるとか。


 授業後自習室に少し寄ってから帰ろうとなった時には、一階の受付まで降りて、最上階の自習室の番号札をもらって階段で最上階まで行くとか。


 あとは意味もなく登って降りて帰ってくるとか。


 それを行う習慣がついてしばらくしたある日、僕は予備校で放送で呼び出された。


 名指しで放送で呼び出されるのは初。


 高校の時だってそんなになかった。


 なんだろう。僕何かやらかした説が……。


 講師室に行くと、山上先生がいた。


「はいはい来たな」


「来ましたけど」


「最近、予備校を徘徊してるようだが」


「あ、そのことですか」


「そのことだ。女子生徒から、階段で怪しげな行動をしている人がいてもしかしたらスカートを下からのぞいたりしてるんじゃないかって報告があったんだが」


「えええええ! それ違います。僕はですね。運動不足を解消しようと思ったんですよわかりますかね。階段で運動しようと思ったんですよ」


「運動か」


「疑うなら防犯カメラかなんかで見てくださいよ。多分普通に登り下りしてますから!」


 なんという盲点。そういう風に思われる可能性は想定してなかった。


 でも確かに、階段を登るとき、前にスカートの履いた女の子がいて一旦抜かしたはずなのにまた降りる時すれ違って、また登る時に見かけたことがあったきもする。


 確かに怪しい行動だったかも。


 でも僕は運動のために速く登ってて、向こうは踊り場で立ち止まって喋りながら超ゆっくり登ってるんだよな。


 ていうか踊り場で喋るのも迷惑だよね。僕はただ登り下りしてただけだよほんとに。


「疑ってないぞ、今とても納得しているところだ。運動不足は解消すべきだな」


「そうなんだよかった」


「ただそれにしても、それをやり始める人が多くなると階段に人が殺到するし、外を散歩した方が気持ち的にもいいんじゃないか?」


「確かに。外の方がいいですかね」


「ああその方がいいよ」


「わかりました」


 僕はうなずきながら思った。


 予備校の外に昼休み散歩に行くのか……暑い。だるい。


 これがクーラーの効いた部屋で勉強しかしてない浪人生が引きこもり体質になる過程なのかもしれない。ちゃんと外でよ。


 

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