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講習のお誘い

 買い物に行ってから日にちは過ぎて、今日は予備校の夏期講習締め切り最終日だ。


 僕は割と前に申し込み用紙を提出済みなので、授業が終わってすぐに、勉強しに家に帰ろうとした。


 なのに、受付のところで、山上先生に会った。


「おい、少し話があるぞ」


「話、なんですか?」


「夏期講習の申し込みだが」

 

「しましたよ」


「やる気があるのか疑わしいなってくらい少ないぞ」


「いや、別に講習とってなくてもちゃんと勉強しますから」


「落ちるやつだいたいそう言ってた。そう言って自信たっぷりに夏休みを迎えたのに、秋になるとなぜか成績が下がる人がいる。それで落ちる。わかると思うがそいつらは夏休み勉強しなかったんだ」


「僕はしますよ」


 なんかビジネス臭を感じる。そんなに講習とってほしいのかよ。もうこれ以上親とかに迷惑かけたら申し訳ないから本当に必要なのだけしか取らなかったんだけどダメだったのかな。


「この前会った時もなんか女の子と一緒に居ただろ。だいたい浪人中に恋愛してる人は落ちるからな」


「それ化学の時間に聞きました。あとあの人は幼馴染というか友達です」


「それならいいんだけどな。で、その子は大学生なのか?」


「そうですね。しかも……」


 僕は佐音華の大学名、つまり僕の志望校を告げた。


「なに! お前だけ落ちたの? ぷぷぷ」


「……」


 この山上先生って人。こんな感じのくせに、初回のガイダンスのとき、メンタル崩れがちな浪人生を優しくサポートしますとか言ってたよ。


 なんなんだろうね。まあこうやって僕を油断させない作戦なんだろうけど。


 そんなことされなくても油断しないからな。


 夏休みには第一回志望校別模試がある。


 それではちゃんと結果を残したいというか浪人生はさすがに残さないとあとから追い上げられるので。


「……でさ、もう少し講習とらないか?」


「いや、ほんとに大丈夫です」


「この、『俺の古文力が上がりすぎて困る』とかオススメだぞ」


「怪しすぎるそのラノベみたいな名前の講座……」


「じゃあ『微積計算のスキルで難関大入試数学無双』は?」


「ネーミングセンスないですね。とりません」


「はあ……まあいい。確かに講習とってなくても受かる人は受かる。そこは自由だ。だけどほんとにオススメだったんだけどなあ……」


 山上先生は残念そうに僕から離れて行って、受付のお姉さんとぺらぺら会話し始めた。


 やばい。電車一本遅くなる。


 今日は過去問英数一セット解きたいから急がないと。


 僕は予備校のでかいガラスの扉を開けて、駅の方へと急いで行った。


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