デパート
僕と沙音華は、各駅電車に二駅乗って、目的地の最寄り駅に着いた。結構でかい駅で、中途半端に田舎なのに、本当になんでもある。
そこの駅直結のデパートに行くというのが、僕と沙音華で電車の中で決めた買い物プラン。
ちなみに、そのデパートの隣に、でかい予備校がある。
僕が通う予備校と同じくらい大手の予備校だ。
そのライバル予備校が主催する模試を受けるとき、僕はきっとこのデパートの隣に来るんだろうなと思う。
しかし、今日は楽しそうな人で賑わっているデパート。
沙音華は駅の改札を出て目の前にあるエスカレーターに乗ってデパートに突入。僕も沙音華を追ってエスカレーターを登りきった。
人が当たり前のように楽しく買い物をしている。
勉強してないで楽しんでいる人ばかりの空間には久しぶりに来た。
いつも帰りの中の電車では誰かしら勉強してるし、予備校の近くでご飯食べても、必ず勉強している人がいる。
世の中、勉強している人だらけなのだ実は。だから僕は浪人したのかなあ。
「雑貨見に行きたいー。あ、あとお揃いのなんか買おう!」
「お揃いか……」
沙音華とお揃いのものか、何にしようか。
「これもこれもこれもすごい可愛いねー! たいせほら」
僕は言われて見てみた。おしゃれな小物入れがたくさん並んでいた。その中の三つを沙音華はとって見せる。
沙音華にはとても似合いそうで、可愛さの偏差値は72くらいだろうか。最難関大学の合格ラインも超えそうな偏差値である。
と、何かを測るとき偏差値化してしまう浪人生を頭の中でふっとばして、僕は言った。
「どれも超いいと思う」
「そっかー。それだと逆に迷う!」
「値段はこれが一番安いな」
「値段はいい。私お金持ちだから、家庭教師まじでお金入るし、教えてる子可愛いし。ちゃんと宿題やってきたたびにえらいこちゃんなでなでぽんしたくなるもんね」
「そんなかよ」
僕も毎回ちゃんと予備校の予習復習やってるからえらいこちゃんなでなでぽんしてほしい。まあいいやそんなこと言ってる暇あったら早くA判とんないとな。
結局沙音華は悩んだ挙句、一番高いやつを買った。
機能性も考えて選んだっぽい。
「うーんと。思ったんだけどさ」
「おお」
「幼馴染との合格お守り的な感じで、お揃いの文房具買おうよ」
「おお、心強い」
合格してるもんな沙音華は。
「シャーペンとか?」
僕は提案してみた。
「シャーペンかあ……普通だね〜」
「でも鉛筆だと合格鉛筆っていうのがあるからもっと普通になるぞ」
「そうねえ」
沙音華と僕はエスカレーターをさらに登って、本屋と文房具屋がある階に行った。
お読みいただきありがとうございます。
もしかしたら、これを読んでくださっている方の中に、受験生の人もいる可能性もあるのかなとなんとなく思いました。もしいたら応援してます!