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買い物に行く

 沙音華がいなくなって、途端に普通の男子の部屋になった。


 まあ、あっちこっちに参考書が散らばっているんだけど。


 ちゃんとしまうのが面倒くさすぎて、机の周りや端に参考書タワーが積み上げられて、たくさん勉強しなきゃいけない気持ちになって、気持ちが圧迫されるやつだ。    


沙音華がいないとそういう気持ちになることが多いから、逆に言えば、沙音華が抱き着いてくると物理的には圧迫されても気持ち的には圧迫されてないってことだ。やっぱりおっぱいは柔らかいんだなあ。


 僕は、沙音華が僕の家から出たことを、玄関の扉が閉まる音で確認した。


 僕も出かけますか。


 実は、気分転換に買い物に行って、沙音華に何かプレゼントでも買おうと思っていたのだ。


 模試の結果が悪かったんだから勉強しろよって言われそうだけど、今回は正直悪かった理由がしょうもなさすぎる。


 何があったかといえば、解く科目を間違えた。


 マーク式模試の「数学①」という科目には、数学Iと数学I・Aがあって、同じ問題冊子に入っている。僕は数学I・Aを解かなきゃいけないのに、全力で数学Iを解いて、時間内に解き終わって大満足していた。


 その結果、合計点がめちゃくちゃ低くなってしまったのだ。


 本番でやらないようにしようと心の中で固く誓って頭を抱えていたってわけ。


 ほかの科目は普通って感じだったし、気分転換も大事だってことで、はい、僕も出発。


 僕は玄関の扉を開けた。


 駅の方へと歩き出すと、


「たいせ~」


 後ろに沙音華がいた。


「え? あれ? 友達と買い物は? あ、もしかして、明日の話だったとか?」


 驚いて、歩道で固まる浪人生になっていると、沙音華は首を振った。


「ううん。友だちに電話かけてたふりをしてた」


「え? 何のために?」


「泰成、一人になりたいのかな~って思って。だからぶらぶらしてたら、泰成、家から出てきてるの発見しちゃったし」


 そういうことか……もっと沙音華が出たのと、時間をずらせばよかった。


 これじゃあ、沙音華のプレゼント買いに行けないな。


「……で、どこに行こうと思ってたの?」


「え、えと……決めてない」


「決めてないの? てきとーすぎ! じゃあ、やっぱ、一緒に買い物行こうよ」


「おお、いいよ」


「なんで今はあっさりあっさりおっけーするの? あ、もしかして、たいせ、もう解く教科間違えて模試大失敗から立ち直った?」


 沙音華はにこにこしながら、僕の予備校のマイページに乗っている情報を口にした。


「なんで知ってるんだよそれ」


「たいせのスマホ後ろからのぞいてました~」


「なんだよ」


「解く教科間違えてE判とか間抜けすぎてウけるー!」


「うけなくていいから」


 大体人がたくさんいる歩道でそんな話しないでほしい……。


 僕は、話を終わらすために、沙音華よりも先に、道を進んでいった。


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