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I 始まり

プロローグ  退屈の悪魔


朝の陽射しが俺の顔を照らす。

退屈な一日の始まりだ。

毎日毎日。同じ道、同じ学校、同じ顔、同じ話。

本当に退屈だ。

別に平穏がいらないと言ってる訳じゃない。耐えられないとは言ってない。

ただ。ただ、ウンザリなだけだ。

見慣れた門をくぐり、校舎へ向かう。高等部と書かれた板の下を通って教室を目指す。

教室に入ってクラスのナカマの輪に加わる。

でも、俺じゃなくたっていい。

そこでボケるのは俺じゃなくったっていい。

そこでつっこむのは俺じゃなくったっていい。

ここで話している俺は・・・俺である必要はない。

俺じゃなくったって誰も気にしない。

誰か俺と変わってくれ。俺を解放してくれ。

でも・・・

解放されてどこへ行く?

ワカラナイ。

だからここにいるんだ。




肩をつつかれて目が覚めた。

ここは?・・・あ、教室だ。

黒板には難解な英文法が並び、その横で偉そうな中年が解説をしている。

「昨日、遅かったの?」

前の席の高橋美咲が小さい声で問う。黒板の横の時計を指して続ける。

「もう5分前〜。さあ、まにあうか」

俺はため息をついて伸びをした。40分も寝てたとは。

「な〜んて。ノートなんて作ってないか。いいね天才は」

「秀才ね。天才は、学校なんて来ないから」

美咲は少し考え込む様子を見せてから言った。

「いや・・コンは天才だよ。やっぱり」

俺が意味を追求しようと口を開いたその時、チャイムが鳴って話は中断された。

ここは、田舎の小さな中高一貫校。周りは一面畑や田んぼだが、幸い市の中高一貫校はここ一つだけのため、生徒数は多い。

ついでに、コンとは、俺のあだ名で、光本健一だからコウケン。それだと言いづらいからコン。

美咲は幼馴染で、家はすぐ隣にある。昔はよく遊んだが、俺も美咲も、もう怪獣ごっこをして遊ぶ年じゃない。

みんなが大好きな昼食時間がやってくると、

ダッシュで売店から戻ってきた、自称、ミスター・インフォの谷原弘一がクラスにジャンク情報を配り始めた。

谷原情報の半分はガセなので、隣のクラスのミス・インフォ 自称 の浜口の情報と合わせ、重複しているネタを信用するのが前提となっている。

谷原は、息を整えてから低い声で話し始めた。

「いいか。これは確かなスジから手に入れた情報だからな」

これは谷原の決まり文句。毎回聞くが、信憑性は皆無だ。

「理科の吉岡いるだろ。あのメガネの七三」

吉岡は理科の 生物・地学を担当している。ちなみに、吉岡の七三には偽装頭髪疑惑がかかっているから、今回はその話かもしれない。

「吉岡のゴシップなんていらないよ」

「コン!話は最後まで聞けよ。あ、あとヅラの方はな、学校に早く着いたっていう女子生徒が、吉岡が教員室で一人でつけなおしてるの見たって情報が来てるぞ」

「それはガセだろ」

長瀬がつっこむ。

「まあまあ、今日の本題はそっちじゃないんだよ」

谷原が、いっそう声を低くして続ける。それに応じて男子の輪が狭まる。

「実はな・・・・・・・」

右で鈴木が唾をのむ音が聞こえた。

「実は・・・・・・・・」

輪の外の男子が聞き耳を立てる。

「ここからは有料で」

一斉にに谷原の頭に平手が飛ぶ。まったく。今までも同じ手にはめられてきたのに、だまされるのは、コイツの演技力か?単に俺らが馬鹿なのか・・・・・

谷原が組み伏せられてギブアップするまでにしばらくかかって、やっと本題に戻った。

「アイツ、よく研究室にこもってんじゃん」

谷原が同意を求める言い方で話し始めた。

確かに、谷原はよく研究室にこもっている。以前、経費を材料費に使って、問題になった事まであるほどの熱心な研究家だ。

「それで、勇気のある3年が、研究室に忍び込んでみたらしいの」

鍵はどうやって開けたのだろう?という俺の素朴な疑問は、吉岡は実験用白衣を理科室内に吊るしておいていた。という記憶に到達し、納得した。

「そんで、むさ苦しい室内に入ったらなんとそこには・・・・・・・」

柔道部副部長の松島が拳を構える。

谷原は急いで後を接いだ。

「・・・領収書があったんだよ。吉岡あての」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・え、それだけ?」

「そんな訳ないだろ。得体のしれない物が大量に散乱してる吉岡の研究室で、何で、そのただの領収書が目を引いたと思う?」

一同は沈黙のまま続きを待つ。

「領収書は売り手匿名。品物名は 七ホシ 」

「でも驚いたのはそこじゃない。その品物、いくらだったと思う?」

谷原が、人差し指を立てた。

「1万!?」

谷原は指で輪を作り、人差し指の横につけた。

「10まん!!?」

谷原は、ニッと笑って、もう一つ輪を足した。

「・・・・・100・・?」

まだ、ミステリっぽく無いですが、長い目で見てもらえれば幸いです。

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