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第八十四話 竜胆

「うわああああああああああああ! 助けてくれェ!」


「……やっぱり、この映画はイイね。この一般の人達の棒読み。幸せな気分に浸っちゃうな、ついつい」


「利名子、語るのはよしときな。ネタバレしそう」


「えーネタバレしないよ陽向、だって初見みたいに楽しめるもん!」



 俺達は予定通り映画を見ている。勿論、キンニクプリズンだ。なのに、なんだろうかこの違和感は。



「……お……い――おーい……聞いてるか? 弘成!」


「……は」



 まずい、長い間意識が飛んでいたみたいだ。何も覚えていない。



「大丈夫かよ……? もう終わるってよ。この教室は俺達で片付けることになってんだ、動いてくれ」



 知音が優しく俺の肩を叩いていたのに気が付かなかった。確かに周りを見渡すと同じ班の人しかいなかった。



 齧り付くようにキンニクプリズンを見る利名子にゴミを片付ける健人と俊樹。それに箒を持ってゴミを集めている知音、真凛、陽向。

 でも、何かが――。



「部活があんだ、急ごうぜ」


「ああ――」



()()()()()



 誰も居ないはずのベランダから、声が聞こえた。声の方を向くと銃らしき物を構えた男がいた。そして、銃口を俺に向いていると分かり、咄嗟に机の裏に隠れる。



「避け――」



 バァンと爆音が一発鳴った。鈍い衝撃が机越しに伝わってくる。



「利名子危ねええ!!」



 知音が利名子に椅子ごと倒す勢いで突っ込み、二人とも机の下へ飛びこんだと同時にもう二発銃声が鳴り響いた。



「チッ、なんで一発も当たらないんだよッ」



 そ、そうだ。なんで俺達は避けられた。まるでこうなると知っていたみたいに。



「お前、誰だよ! なんで銃なんて……!」


「ほ、本物?」


「いや、健人、銃なんて普通持ってないだろ!」


「何……これ」



 皆の叫び声が室内を包み込んだ。俺はどうすれば……。



「……まあいいさ、銃なんていらない。温存してやるさ、来い! ()()()!」



「ああ」



 音も出さずに現れた謎の男。ソイツが俺の目の前に突如現れ、俺の首を掴んだ。



「くっ……」


「殺す」



 ガラスの割れる音からして、俺は廊下に投げ出されたようだ。窓にぶつけられた衝撃と地面を滑っていく衝撃で俺の体がピクリともしない。



「弘成ァッ……これはお前が選んだ答えだ。つまり、お前はミスったんだ。いや……既に終わっていたんだ……ククク、ハハハハッ」


「何が言いたい……」


「黙れ」



 再度、首を掴まれ2階から1階に向かって俺は投げ出された。



「し、死ぬッ……」



 空中で何も出来ず、全身に激痛が走り、鈍い音がしたが、床の感触から花壇の上に落ちたと分かった。とにかく何かしなければ。



「カラダ……動かせ」



 うつ伏せのまま、俺は右手を伸ばして立ち上がろうと土の上に手を突いた。そこには変な感触の物があった。



「花……か」



 名前も知らなければ、生えていたことすら知らなかった花。こんな状況なのに、気にする余裕なんてないのにこの花に魅了されていた。

 いや、名前は知っていた。いつ知ったかは知らないが青く綺麗なこの花の名は。



「リンドウ……か」


「…………そうだ、俺って花が好きだったんだな……」



「立てよ。まだ戦いは終わってない」



 ()()()()()()()()()と目の前のハザマは言い、()()()()()()()だと言うあの銃を持っている男が、違和感の正体。




黒纏(コクテン)



 健人の絶叫声が2階から轟いた。

 こんな普通なら聞き取れないような呪文も今の俺なら分かる。



「あー……そーゆーコトね。ハザマ……もう終わらせよう」


「終わりにするぞ、弘成」


「ああ……()()



 花を護るように右腕から順に黒い煙が溢れだす。弔いや仇討ちなんかじゃない。これは俺の戦いだ。17回目の新世界で、数十回生きてきた俺達が終わらせる。手の平にあるのは『正義』。ここにいない彼等そのものだった。



「今、終わらせるよ。皆。だから、俺達だけ新世界に取り残さないでくれよ」

連鎖する記憶

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