第八十一話 適合者の到達点
命衣と陽向はなんだかんだ俊樹にここまで連れてきてもらいました
「……ハザマ。私がここに居る理由は、二人の仇を取りに来ただけじゃない。貴田財団の者として貴方達を止めに来たのよ」
淀みのないその目は、ハザマだけを睨み続けている。命衣さんの瞳はこんな暗闇の中でも光り輝く、まるで怪物と既に共鳴しているように。
「……素晴らしい。計画通りだよ……貴田家という最後のピースが欲しかった。その血筋が、その若さが、理想そのもの。最強の怪物を吸収したのも良かった」
「何が言いたいのか、よく分からない。中身が小学生の影響があるのかな」
命衣さんの煽りにムカついたのか、無数の蔦が闇の向こう側から襲い掛かってくる。今度は脱力した状態で蔦を斬る。
そして、音もならず、静かに蔦は切れた。
「……別々に相手してやるよ」
「なっ」
今までとは比にならない程の、まさに無限の茨の壁が襲い掛かってきた。俺は後ろに退いていた。これで俺達の分散を図っているようだ。というか、既にまわりが見えなくなる位蔦に囲まれている。ここは黒纏で強化した刀で斬り続けるしかないか。
「うおぉぉぉっ!」
二刀流となり、斬り続けるがやはり一向に壁は減らない。切り落としてもまた次の壁が生まれる。
「だったら……無限を斬るッ! 流閃斬!」
力は要らない。ただ、速度を上げて斬り続けていたのを一点に集中して、そこを斬っただけだ。蔦に囲まれて完全に光を遮断される中、一筋の光が降り注いでいた。
目の前の壁が真っ二つになり、奥が見えるようになる。その先に肩で息をするハザマの姿を捉えた。目線が合い、中身の少年の顔が重なって見えた。
「邪魔ッ!!」
爆音が轟く。辺り全てを照らす光と共にその轟音の正体は、命衣さんだった。命衣さんは現れると同時にハザマに向かって飛び掛かる。迷いのない行動をする彼女をさっきの光が、そして陽向の光が彼女の纏う物まで照らしていた。
「あの黒いのは一体……」
「黒纏ッ!!」
目の前がピカッと光ったと思ったら、今度は闇が全てを包み込んだ。
「……もう黒纏を使えるとは……流石は血筋――」
「それが何なの。今の私達にまだ勝てると思うの?」
「当たり前だろ? だってオレだって本気だしてねーから」
この悪寒。間違いない、命衣さんとハザマは俺が視認できないほどお互いに黒纏を出し合っている。
「黒纏を持つ者同士がぶつかり合うとどうなるか……これがお前達に教えなかった理由さ」
「……させるか」
ハザマの頭部を彼女は掴み、爆音が響く。それでも二人はピタリとも動かない。
「クッ……流閃斬!」
離れていた距離を、一歩で詰め切る。これが通用するか、ここで試すしかない。蔦には効いたが、本体にはどうか。
「刃が……当たらない」
刀は黒纏を斬るが、本体まで届かず空を切った。俺は咄嗟に声を上げた。
「黒纏を解――」
「――黒纏ッッ!!」
地面が揺らぎ、崩れ始める。地下室は倒壊せず、床だけが抜け落ちる感触が全身に響く。
落下する俺達には、ハザマの黒纏によって何も見えない。それでも、何処にハザマがいるかは刹那の感覚が捉えていた。
「烈王さん! 貴方の力、借ります!」
「硝子の世界――」
黒纏を解除している今の俺は、あの時の状態に近い。だったら、あの再現もきっと出来る。むしろ、完成形だ。糸を纏い、刀を足元に作り、踏み台に変えた。刀を踏み、上に飛び上がる。何も見えないが迷いは無い。
「雷斬」
ハザマをは落雷のような爆音で、ハザマの発動の直前、俺の方が速かった。叫び声混じりの乱れ声が耳に響き渡る。
「一撃で終わってくれよハザマ……」




