第七十四話 思いは繋がり
――ッ。どうやら落ちた衝撃で少し意識が飛んでしまったようだ。片手には知音の携帯を握っていた。壊さずに済んだみたいだ。下敷きにしている物はここに来るのに使った車のようで、随分とヘコんでいる。身体は能力のお陰で傷一つない。腕を動かしても痛みも感じなかった。
「……早く、屋上に向かわなきゃ」
車体の上で寝返りを打ち、地面に落っこちる。
「……また階段昇るのか?」
空を見上げる。いや、飛ぶという方法もある。しかし、それだと身体に負担がないとは言い切れない。
「君、いつまで考えているんだ?」
「……誰?」
知らない男達が俺を囲んでいた。手には銃らしき物を持っている。
「……怪物の子で間違いないな。撃て」
「――な」
咄嗟に能力を発動し壁を貼る。壁は影のように薄黒くなっていた。けたたましい轟音が響くが、銃弾は俺に触れる事無く地に堕ちた。
「何がッ、目的なんだよ!」
「君達、いや怪物を処分する為に来た。俺達はこの世界に生き続けたい。だから、お前らには犠牲になってもらう」
「――そうはさせないよ」
今度は建物の方から怪しい光を纏う女が現れた。
「誰だ貴様は!?」
「能力、使わないんだね」
そう言うと、女の指先から黒を纏った光が放たれた。語彙の少ない俺が例えるなら日食のような景色だった。
「……陽向……?」
「……誰かは分からないけど、彼女だったりする?」
「……そんなんじゃないです。俺の友達……って違う、お前は誰だよ」
「失礼だな、私は君を助けたんだぞ?」
そう言われて周りを見渡した。男達は腹部や頭部を消されて息絶えていた。
「…………えっと、貴方は?」
「そう! それが礼儀……じゃなくて起き上がること出来る?」
「大丈夫です」
俺は車に持たれながら立ち上がった。そうだ、時間が無い。面倒だが、この人の話を聞く暇はない。俺も戦わなければ。
そうしてこの人に感謝の意を述べさっさと立ち去ろうとした。
「待って! 何が起こってるのか知りたいんだけど」
「屋上で仲間が戦ってる。俺も向かわないと」
「さっきの子と同じ事言ってるー。手伝おっか?」
「手伝うって……何をですか?」
俺が首を傾げると女性は指を鳴らし誰かを呼んだ。
「私はね、貴方達の味方。さっきの男達は貴方のような怪物の能力を使う子供を殺して……恐らく上にいる奴に献上しようとしてる。それを止めに来た」
「何の利益が」
「――世界を救いたい。って――言ったら?」
俺は少し悩んだが、その言葉を信じることにした。
「協力しよう」
お互いの手を握り誓いあった。
* * *
頭がまだズキズキする。目を開けると外が見える。窓が割れ、涼しい夜風が入り込む。
「う、うう……」
「雅姫さん!」
何故ここにいるのか分からないが、あの男に突き落とされたのだけは覚えている。誰かが助けてくれたんだ。多分、健人だろう。
「も、もぉう何も、考えたくない……」
手を握ったが、雅姫さんに振り解かれた。無理もない。恋人に親友の一人を失ったんだ。私はそっとしておくことにした。
私は立ち上がった。
「戦わないと」




