第七十話 Bチーム
「……もう貴方に負けるなんて、あり得ないんですよ」
血の巡りは十分だ。
「……俊樹はなんでいるの……?」
「色々あってさ、……まあ俺が勘違いしてたってだけだ」
「真凛、俊樹を許してくれ」
「私からもお願い! これから一緒に戦ってくれるって」
「知音、利名子……。分かった。皆に酷い事したって分かっているなら何も言わないよ、その……『よろしく』。……これからは、仲良く――」
「頼むから戦ってくれ!! 俺死ぬぞ!?」
健人がとんでもないくらいの攻撃を食らっていた。爆音と閃光を交互に感じる。
「雅姫さんと利名子は誰かの近くに居て、後は俺達で倒すので!」
「……待って知音、実はさ」
そう言って、さっき倒して放置したままの怪物の心臓を拾い皆に見せた。
「……!」
「これを利名子か雅姫さんに受け取ってもらいたいの」
「……」
二人は黙っている。でも、片方からは覚悟をした表情から目線を向けられている。
「……いけそう? 利名子」
「……真凛が飛び出た日、皆バラバラになっちゃって……それで、置いてかれた気がしてたんだ。知音が残ってくれなかったらきっと諦めていたと思う。ここにいる皆の為の恩返しがしたいんだよ、私」
その声にはまだ迷いが残っていた。勿論、私にも迷いがある。利名子を危険な目に合わせていいのか。――いや、私には選ぶ資格なんてないか。
思わず笑いが溢れてしまったが、真剣な表情に切り替えて、利名子の掌に乗せた。
「――あ」
利名子の驚く声と共にそれは光った。利名子のショートヘアが風で靡き光で全身が一瞬包まれた。閃光に対抗するように光った利名子はその内曇っていた顔まで照らしている。
「……ようやく、皆の為に何か出来るんだね」
そういった利名子の顔は今までで一番明るく、いつもの利名子でもあった。
「私、キンニクプリズン大好きなんだよ実は。アハハッ!」
初速が速すぎて目で追えなかった。辿り着いた目の先ではあの主人公の肉肉太郎の姿で戦う利名子がいた。名前とは裏腹に見た目があまりにも青少年すぎる作品として有名で、そっくりそのままの姿で戦うその光景に思わず目を擦りかけた。
「利名子が好きなの、皆知ってたよ……」
「てかはええ……」
知音が普段見せないような顔で驚いている。これはどっちの驚きだろう。
「お前らはよ戦えや!!!」
利名子と戦っている健人が叫んでいる。ハッと気が付き、構え直した。
「……行くぞ」
「うん」
一斉に怪物に群がる。五人で怪物を囲み技を連発する。
「――これで、死んでくれ」
熱を浴びた直後全身が爆発する感触に襲われる。
「……させるかッ!」
ギリギリ肌には直接は当たらなかったが体が弾けるような気がした。私を含めて皆は受け身を取るためにこの攻撃を避けた。
「終わりッッッッッ!!!!」
利名子以外は。
「……! ッ、何故お前のような女に! あの時ただの雑魚でしかなかったお前なんかに!」
「私は何も変わってない! 変わる事のない強さなの! だから、ここで私は貴方を倒せる!」
言い切ると同時に怪物と利名子が光って、見えなくなった。
* * *
「……利名子、よくやったな」
「……う、ううん」
「……こんなに、呆気なく死ぬのか俺は」
「……それも、悪くないな。大将として誇れるか、俺は」
「ああ、お前は強いよ。お前に健人も一度殺されてる。弱いというのは失礼だ」
「そうか――」
そう言い残して怪物は少しずつ灰になっていた。
「――呆気なく終わった」
「……これが一番の目的じゃないしね」
「……え?」
健人は何とも言えない表情をしていた。
「弘成達が一緒に戦わない理由さ。アイツらは貴田財団に向かってんだ。この事件自体を終わらせる為にだ」
「じ、事件……? 怪物を倒す事は最優先じゃないの……?」
「それよりも凶悪な敵がいるかもしれないからな……所詮、俺達はBチーム、って事だ」
「Bチーム……」
自分達をそう言う知音は笑っていた。
「これを判断したのは俺だけどよ、向こうのチームは全員強い。健人も強いが、人数合わせかつ利名子と雅姫さんを一人で守るために入れただけだ」
「とにかく……思ったよりも早く倒せた。急いで向かうぞ」
「で、でも車は……」
「――それなら、私に任せてよ」
ボロボロの利名子が私の肩を掴んだ。
* * *
「皆運ぶからしっかり掴んでね!」
「一応俺も能力で落ちないようにするから、頑張ってくれよ利名子」
「うん!」
そう言うと利名子はまたもやキンニクプリズンのキャラクターに姿を変えてジェット機並の速度で飛び立った。
「道なら私分かるから迷ったら言ってねえええ!!」
「ちょちょ手で隠してたら周り見えない!!!!!」
「……下に追手いないかだけ確認しとくわ」
皆が無事である事を祈る事しかできない。全てが解決することを願いながら利名子にしがみついていた。
「……真凛、どこ掴んでんのっ!?」
「ええ!? ご、ごめん!」




