第六十九話 サイカイ
殺された子供の血を使い、場を支配する。血の雨を降らし次々と獣に姿を変えていく。そして全身に飛び散った血は武器に成り代わる。翼は剛翼に、爪は鋭利になる。
「……」
「……不気味だねぇ」
声が聞こえた瞬間に地面を蹴り上げ、飛び立つ。姿を変える前に一撃を与える。
「ッ……」
「……」
たとえキングに姿を変えても攻撃の手は止めない。ひたすら攻撃し続けて、隙を与えない。
「……ソイツの死因、再現してあげようか?」
「!?」
肩を掴んで頭に思い切り噛み付いた。
「なっ!?」
「噛まれて死ね」
脳天を貫く。普通に噛もうと思ったら、砕くのは難しい。なら、血を混ぜて噛み砕ける力のある牙に変えればいい。
結果、頭蓋骨を砕かれ、怪物の血が吹き出る。
「……は、ははっ。私はずっと思っていたんだ。なんで、ここに居るんだろうって。私が力を求めたから、皆と生きていたかったから! なのに、一人で何してんだろ」
「う……ぐ……ぁ」
「……またね」
怪物の体が崩れ、私も地面に叩きつけられる。
「……はあはあ……」
「……」
仰向きになるように寝返りを打った。
「……」
「夢は見れたか?ガキ」
「……お前は……」
「俺はカイ。能力は爆発だ。最後の怪物でもある」
「……この戦争も終止符が打たれる」
掌を私に向ける。怪物は笑わない。
「……遺言は?」
「……私はここで死なない」
微かに地面が揺れている。音が聞こえる。
「……何だ」
「――真凛ちゃああああああああああああああんんん!!!!」
「雅姫さん……?」
「!? クソ!」
車に掌を向け直すが、車体に当たらず寸前で爆発する。
「そのまま轢くわよッッ!!!!」
鈍い衝突音がした直後にカイが轢かれたのが見えた。私は首だけ動かして見つめ続ける。
「……クソガキ共が……抗うなァッ!!」
暗闇の中、閃光が目に入る――直前に何かに全身を包まれた。それは感覚で分かった。
「……わっ!」
私は吹き飛ばされた。
* * *
「……これで全員護れた」
健人が怪物に向かって語っていた。奥には炎上した車が見えた。
「……前はお前に皆殺されたんだ、今度こそ俺達が倒してみせる」
「……そうか」
「……これで最後にする。お前のような犠牲も、俺らみたいな犠牲も出さない為にも」
「だから、真凛。立ち上がってくれ。一人じゃない。ここにいるのは皆仲間さ!」
へったくそだった笑顔が、自然な笑みになっていた健人を見て、理解した。私が半ば諦めたようになったわけじゃなくて、それでも仲間を信じ続けていた事。お互いを理解し合う努力をしてきた事が、頭に入ってくる。
「……もし、真凛が自力で起きる事が出来ないなら記憶をあげるよ。……復讐心は芽生えさせないでほしいけど」
そう言って私の頭を触ってくる。すると、とてつもない情報が流れ込んで来た。前回までの全ての記憶が。目の前の怪物が何かまで理解した。
憎むべき相手なのかもしれない。だけど、同時に混じって入ってきた健人の記憶が私を抑制する。
「……ああ、うん。まだ……よいしょ……戦うって……」
皆が居たからまた立ち上がれた。向き合う事が、出来たんだ。




