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クリティカル・リアリティー  作者: ガラン/藍染
最終戦 (VSトラバネ)
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第六十六話 ツムグ

 一度使っただけで、この能力を理解出来た。それ程この怪物の思考が頭に流れてくる。俺はこの糸を全身に纏い、四方に伸ばす。



「……こんな所でオレは!! 死ねるかよッ!!」



 トラバネの迫力ある叫びは俺の心に刺さるような声だった。


 ――この声、何処かで聞き覚えがある。これは……お父……さ……。



「飛龍さん避けてッ!」



 山田さんの声が聞こえたその瞬間、天地が崩壊する。



「……何が……おきた? くっそ……!」


「チッ……何よこの威力……」



 俺は咄嗟に能力を発動して押しつぶされない程度に展開する。

 もしかしてと思い、健人の方を見た。健人は倒れている。

 ……それだけじゃない。この場の()()が攻撃を食らっている。どうやら飛龍さんは山田さんの声に反応して咄嗟に受ける事が出来たらしい。俺の全身を纏った糸も半分剥がれた。トラバネも例外ではない。恐らく、反動が大きいから、トラバネの肉体まで欠け始めた。



「ヴォイッ! くたばれやッ!!」



 トラバネの顔からは血が溢れ出す。血眼で、整った鼻筋からは鼻血を垂らし、口から飛ばす唾は真っ赤に染まっている。



「弘成ァ……! やっとこれで……お前を殺せるッ!」



 人とは思えない速度で、俺に迫る。体勢を崩した俺は刀を構えるのが間に合わない。……あの時の感覚を思い出せ。暴走してもいいと思っていたあの自分を。

 血の唾が俺の頬につく直前に停止し、トラバネに向かって吹き飛んだ。雫は鋭利に変わりトラバネの目に刺さった。



「!?」


「――もう誰も犠牲は出させねぇよ!」


「……貴方は……?」



 現れたのは――誰だ。見た事もない男だが、血を飛ばしたのもこの男だろう。



()()のピンチ知らせに来たが、こっちもこっちでやばいのかよ……真凛の居場所はここだ」


「あの子を知っているのね……」



 そういってメモ帳を投げつけられた。



「少し時間を稼げれば俺はいい! 君が弘成君かな? 君は体力を温存してくれ、私が多少の時間を稼ぐから。まずは顔からだな」


「……目的は分からないけど、協力するわ。弘成は下がってなさい。ドラゴネット、来なさい」



 飛龍さんは周りに七匹の砂の龍を浮かせ迎撃態勢を取る。男は右手を前に出しトラバネを指差すと顔面で何かが爆発したような威力で血が溢れ出た。



「……ッ!?」


「……()()君に聞いたが、トラバネで間違いないようだな。お前がしてきたツケが回ってきたんだ」


「……ドラゴネット。ここで削ります。」



 トラバネは呻き声を上げ、右手で顔を抑えている。

 冷静になって周りを見ると、崩落も糸のお陰で次第に収まった。天井はかなり低くなったが、思いっきりジャンプしてもぶつからない。外の景色は何も見えないし、ただ微かな光でようやく周りの顔が見えるくらいだ。



「消えろ、雑魚」


「ヴッ!?」


「!? な……」



 男の右腹部が潰れ、衝撃波でそのまま投げ飛ばされた。男は血を吹き出し、顔を歪ませた。一方飛龍さんは右肩を吹き飛ばされたが、徐々に砂で再生していくのが分かった。



「……ふはは……報いを受けろよ。私はな、自分の血も操れんだよ」


「ドラゴネットッ! トラバネを、殺しなさい!」


「それがどうした?」



 悪寒が走った。ここまで削られても、ボロボロの肉体だとしてもこの威圧感は健在だ。何か仕掛けられ……



「オワリだな」



 そうポツリとトラバネが呟いた。全身を纏っていたはずの糸が足元に散らばる。目の前で大量の砂が舞い、飛龍さんの肉体が、砂が零れ落ちていく。男は、崩落した壁に血溜まりを作って動かなかった。

 硝子の世界を使われた。トラバネは顔色を変えず俺に語る。



「他の奴等は……死んだ。これでお前とオレで一体一。どう足掻いてもお前は死ぬんだよ。さっきの奴等も弱かった。オレの顔に傷を付けただけだ」



 体の震えが止まらない。死ぬ? いや、そんな事考えるな。まだ、何かが残っているはず。あの人が稼いでくれた時間が糧になるはずなんだ。犬死になんかじゃ無いんだ。



 ガコッ。何かが動くような、岩と岩が擦れるような音が響いた。トラバネは俺からその物音の方向に目線を逸らした。その先にはうつ伏せになった俊樹がいた。



「……なんだ、裏切り者。まだ生きてたんだな」


「……俊樹、逃げろ殺される」


「……分かってる。だから()()()


「……遅延か」



 物音の正体は俊樹が能力で倒れた仲間を動かしていたからだった。健人や、陽向、山田さん、希那さんの四人はこの場から居なくなっていた。だが、愛莉の肉体だけは外に出しきれず中途半端な位置で残っていた。



「後から割り込むような奴等はもう居ないだろう?お前ら二人が生きていた所で勝ち目は無い。新しい能力を手に入れたところでな」



「……忘れてたわ」



 そう言って俊樹が消えた。



「オレに近づいただけで肉体は衝撃波で吹き飛ばされるぞ? そんな透明でも……な!」



「うぉっ!?」



 案の定俊樹は弾き飛ばされる。受け身は取ったがその飛んだ先が愛莉の胴体で俊樹は痛そうにしている。



「……何故余裕ぶれる? もう限界じゃないのか?」


「弱かったらお前の付き添い役なんて務まんねーよ。それに……決着を付ける準備は出来てる。トラバネ、()()()体がボロボロで死にそうだなぁ」



 ニヤリと笑う俊樹は素晴らしいほど気味が悪かった。



「……仲間だったときよりもイキイキしているな。オレはどっちも嫌いだ」


「そんな事言うなよ。実は隠してきたんだが、お前と行動していた時から才能があったからか、能力は()()持ってんだよ。一つは幽霊。もう一つは()()状態を戻せんだ」


「……ハッタリか? 一度も聞いたことがないし見た事もないぞ。気でも狂ったか」



「気なんてずっと前から狂ってんだよ」


「なあ弘成ァ!?」



 …………ずっと前から狂っている。だから戦ってんだ。じゃなきゃ、()()()()()()()()()()()


 糸を伸ばした。何処に刺さるかなんて誰にも分からない。とにかく、お互いの視界が阻まれるように万遍なく広げてそれに乗っかった。これを足場としてトラバネに向かっていく。最後の一本を作り出して駆け出す。糸を全身に纏い直し、刀には先端から柄の全てを包んだ。



「無駄だと言うのにッ!」


 衝撃が飛んできた。糸を振動させ、威力を軽減する。道を臨機応変に作る。作れば作るほど、最後の一撃の威力が増す。相打ち覚悟でとうとう正面に当たる。



「刀で……お前の能力で……お前自身を消してやる」


「力で……負けるかよォォッ!!」



 トラバネの刀を折った。血塗れの俺の拳が震える。



「終わりだァァァッ!!」



「ド――」



 今だ。トラバネの口からその()()が出た瞬間にやると決めていた事。張った糸すべてを操って俺とトラバネに向かわせる。



「……!? 愛莉ィィィッ!! 貴様ァッ!」



 トラバネの足に蔦が絡まる。愛莉は能力を振り絞って発動したお陰でトラバネは動けなくなっていた。



「ドラゴネットを出そうがァ……俺とここでお前は死ぬんだよォッ!!」



「黙れッ……ドラゴネットッッ!!」



 龍が見えた直後に爆発した。俺の下半身を吹き飛ばしたのがその後に走った激痛で理解した。糸がトラバネを切り刻んでいく。四肢をもいでいく。蔦によって固定された足から逃れるように胴体が地面にうつ伏せになる形で落ちる。



「お前はまだ死なせねえぞ弘成ァ!」



 俊樹の叫び声が微かに聞こえる。意識も遠のいているようだ。そこまで距離はなかったのに、聞こえる音が無くなっていく。



「三秒戻したァッ!!」



 ……俊樹の声がさっきよりくっきりと聞こえる。下半身の感覚も戻っている。何なら足を何かに触られる感覚がする。



「幽霊越しに弘成の体を触った! 二つ目の能力はこれなんだ!」



 何の伏線もない、トリッキーな戦法。それが俺達にとって正解なのかもしれない。

 俺が糸を操ったせいで瓦礫が周囲に、それも100mを超える遠くまで消え去った。視界が開け月の光が辺りを照らした。



「「負けるかァァァッ!!!!」」



 俺とトラバネが能力を使ったのはほぼ同時だった。足で踏ん張り、下から斬りつける体制に入った。トラバネは四肢こそ無いが硝子の世界以外の全ての能力を使った。



「――希那は、私が護る」



 誰かの声が目の前の男の能力をほんの一瞬だけ消失させた。



「――――……ああ……」



 何かを悟った声を男は漏らし、そのまま俺は男を斬る。それが遺言になった。









 * * *



「……は……はぁはぁ……」


「ギリギリ…………間に合った」


「……夢川(ゆめかわ)さん……良かった、生きてたんだ……」


「……そんな事よりも希那は? それに貴方の仲間は……」



「弘成! 希那さん! 動かないでッ!」



 雅姫さんの声がした。そう言えば、皆は何処に……。



「心配しないでください弘成君。知音君と魔莢君が生徒を守ってくれましたから。それより動かないで安静にしてください。……ただ、急ぎましょう。先程の青年が言う通りなら真凛さんが危険です」



 綺麗な長髪を靡かせながら急ぎ足で先生が向かってくる。



「……俺に任せろ」



 フラフラになりながらも明人が立ち上がり、俺の体を触る。が、俊樹の能力で致命傷は受けていないからか触れて直ぐに完治した。

 その後明人は戦った全員を触り怪我を治していく。



「……どうだ明人」


「……この男の人は即死してる。飛龍さんと山田さんは辛うじて生きているけど、まともに戦える状態じゃない」



「……」



 この男の人から貰ったメモ帳を開いた。とても綺麗な字で文章が書かれていた。



「『私の名前は荒野(あらの)斗真(とうま)。ここまで来た理由を簡潔に話す為にここに書き記した。私と真凛はとある事情で共に行動していた。しかし、突然現れた怪物に苦戦している。勝てるか分からない。だから君達のもとに来た。ここが戦っている場所だ。』」



 記された場所は何度も訪れたことがあった。急いで向かう準備を始めた。



「まて弘成。車で行こう。俺と雅姫が運転するからグループ分けしてくれ」


「……暁さん」


「……あの、私も乗せてください」


「……愛莉。……当然だ。あの時は勝手に勘違いしてごめん。俺はもうあんな酷い事しないって誓うよ」


「……ありがとう…………き」



 消え入りそうな声の愛莉を抱き締めた。すすり泣いているのが俺にだけに分かるように。



「あー……いちゃいちゃもいいけど決めてよ……?俺車探してくるから」


「いや、車はありますよ。部活で使う車二台無事でした」


「知音……いいね早いよ対応」


「乗るメンバーも決めました。俺が今から見せます」



 知音のスマホのメモを使って書いたものを見た。

 上から

 暁、雅姫、希那、弘成、明人、知音、健人、俊樹、陽向、愛莉、そして最後に利名子と書かれていた。

トラバネ撃破。向かう先は真凛の元に。詳しくは次話。



十二人


(何人生き残るでしょうか?)

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