第六十四話 裏切り者
「……おい、どういうつもりだ愛莉?」
「元々仲間なんだから当然でしょ?♪ 貴方こそ、そっちに付くのはおかしいんじゃない?」
「……何も覚えていないんだな……」
「……だから! 人を殺せるんだよ!!!」
地面が揺れる。俊樹はこんな能力は持っていないはずなのに、これは何だ?
「避けろーっ!!」
またどこからか声が聞こえた。直ぐ様反応し端へ飛び込む。その瞬間砂が吹き荒れた。と同時に愛莉も叫んだ。
「死になさいトラバネ!!♪」
巨大な蔦は無数に張り巡らされ、トラバネ以外の俺達全員を庇った。
「……!! なんで俺まで……」
「……決まってるだろ? 俺達はクラスメイトだから、殺すわけないだろ?」
「はあはあ……やったの?」
「まだです希那さん♪ どうにかしてトラバネの動きを止めます。私達で食い止めますので!」
「……オレは、やっぱりお前らを許せねえよ。弘成、お前をぶっ殺したいんだよ」
「なんでだ?」
俺はたずねたが、理由は何となく分かっている。
「……そうだよな、思い出したんだ。俺は、生きる為に……クラスメイトを……傷つけた……」
「だから何になるの? ねぇ俊樹」
「……は?」
割り込んできたのは陽向だった。怯えることなく俊樹に近づき彼の顎を掴んで無理矢理目を合わせに行った。あまりの強引さに俊樹の顔から凄く汗が出ているのが直ぐに分かった。
「アンタは私達を皆殺した。それでおあいこ。どれだけ恨もうがそれは奴らの策略にハマってるだけ。なんの為にトラバネとここまで来たの? 無意味に私達をまた殺す為? 裏切り者め」
信じられないほど罵倒を浴びられた俊樹は微妙な表情になっている。陽向が危ないかもしれない。そう思い一歩近づいた。
「裏切り者でしかないから、これから死ぬ気で頑張ってよ。ぶっちゃけ一番俊樹の事嫌いだし手を貸すつもりすら無いから」
「なんでお前ら側につくことになってんだよ……」
「前の俊樹なら、ここで私の事殺すでしょ? 今なら裏切った事をギリギリ許せるけど」
二人以外は困惑していた。二人だけの特別な空間があるようだ。俺は無理矢理割り込んだ。
「俊樹! 俺が俊樹に恨まれるような事してきたのは分かってる、ごめん……俊樹は……俺は友達だと思ってる。皆は俊樹を受け入れてくれる。だから、こっちに来い俊樹」
「あ……」
二人は黙った。そして、俊樹と陽向は、俺に向けた視線を戻し見つめ合う。
「あははははッ!」
二人して笑いだした。何か変な事言ったか……?
「やっぱカッコイイわ弘成」
陽向が半笑いで俺の顔を指差す。それを見て俊樹も大笑いし始めた。
「なんか、笑ったら迷いも無くなった。ずっとふわふわしてたけど俺弘成を信じるわ」
「そ、それって……」
「言葉よりも、行動で示すぜ今から」
そう言って俊樹は立ち上がって腕を蔦の方に突き出した。
「俺も愛莉の援護するぜ。トラバネを仕留めよう」
「またすぐに寝返るのね♪」
「裏切り者でいいさ。俺は信じたい方信じて勝つから」
「トシキィィィィ!!!」
うめき声にも近いトラバネの声が蔦から聞こえてくる。
「捕まえた!」「捕まえたよ♪」
二人の声が揃った。
そして、決着が着こうとしていた。




