第六十一話 条件
寝坊しました
「弘成。以前見せた暴走状態になろうとしてるだろ」
俊樹にそう言われても辞める気はしない。構えは解かない。
「……明人! 雅姫さん連れて逃げて」
「……! なるほどね、雅姫さんは俺が守るんで着いてきてください!」
「逃すかよッ!」
「硝子の世界ォウ……!!」
コイツ本当に希那さんの能力をコピーしたのか⁉だとしたらマズい。この能力は必中。つまり、……誰か一人はこの攻撃を受ける……‼
希那、雅姫、明人、陽向、そして俺。確実に受けられないのは雅姫。陽向と明人は攻撃しても耐えるか回復出来る。逆に、俺や希那さんは能力で受けきれない限りは弱い。
……なら三択か。俺か希那さんか雅姫さん。
「――硝子の世界!」
トラバネが能力を発動し全てが飲み込まれる寸前に希那さんが能力を使った。入れるのはトラバネと希那さんだけの世界。
……俺ならこの時点で誰を狙うかなんて分かる。暴走する前に理性を働かせようか。
* * *
「――硝子の世界!」
咄嗟に能力を発動出来た。野放しにして貯まるか。時間を稼ぐだけでいい、他の四人を守るんだ。そうやってこの世界にはい――
「短期決戦だぜえええ!」
「ウブウッ……!!」
重い右ストレートが鳩尾を打つ。他の硝子の興味無しで私を潰しに来たのか……。
「オリジナルは倒さねえとなぁ!?」
「これでも喰らいやがれ!」
砂が吹き荒れ、全方位に舞った砂のせいで視野が狭まる。威力も範囲も桁違い。そして私にはとてつもない衝撃波が飛んできているのは一発当たって気付いた。
「アァァァ!!」
全身が溶かされるような、痛みが走る。意識を失わないようにするのがやっとで、何秒経ったか分からないまま時が流れるのを待つだけだ。
* * *
二人以外には刹那、二人にとっては数秒の時が流れた。
「ガハァ!」
希那さんが吹き飛ぶ。それの意味は全員が理解した。
「予想通り」
トラバネの懐に入り首を斬った。落とすまでは出来なかったが首筋から血が溢れ始める。
「が……あっ……」
下手な演技だ。光来さんの能力で何とでもなる。カウンター狙いか?
「……サンキュー。雅姫さん希那さん連れて逃げますよ」
「待て!」
「――俊樹の相手は私よ」
「チッ陽向かよ」
三人はこの場を離れていく。きっと利名子達を見つけてくれる筈だ。
こっちは二体二だが、陽向なら心強い。陽向が今あの心臓を持っている。俊樹を正気に戻す事が出来ればトラバネに勝てる。
* * *
「あークソ……これじゃ弘成達と合流出来ねぇ……」
「そうですね、先ずはこの二人を倒さなくては……」
怪物を健人に任せたと思ったら、今度は目の前に立ち塞がる砂使いと仲間の男が現れた。コイツらは面倒だ……幾ら状況が違えど、この空間上で有利なのは相手だ。それは俺達の地形の理解度を含めてもだ。
「君達は何時間……耐えた?」
「……そんなのどうでもいいだろ?」
「……私達は一時間半耐えました。貴方達こそ、外での見張りに飽きたのでしょうか?」
鈴木先生がそう言うと、女も黙り、沈黙が流れる。そして、何かを決心したような顔で言葉を話す。
「提案があります」
「……提案?」
「全員でトラバネを倒しましょう」
「……は?」
二人の真剣な表情で嘘はついていないことは分かる。…唐突過ぎて理解が追いつかないが。
「………………なら、一つ条件があります」
「先生……」
「軽く殴り合ってお互いの実力を把握しましょうか」
「……いいですね、初めて見ましたが貴方面白いですねえ」
「……よく言われるんですよ」
大人二人が話を進める中、女より少し若そうな男と俺は困惑していた。
「……いやいや」
「「何で!?」」
奇跡的にツッコミが重なる。ただ、俺も男も多分この人達を信用している。だから、きっと戦うしかない。
俺は備えていた刃物を落とし、代わりに打撃系の物だけに絞った。
「……殴り合いならこの子が強いわよ」
「……ッス! 死なないように頑張れよ!」
いつもとは状況が違う、戦いが始まった。
弘成VSトラバネ
陽向VS俊樹
健人VS糸の怪物
知音&鈴木VS飛龍&山田
そして
真凛&荒野VS変化する怪物
彼等は全て勝つ事が出来るのか




