第五十九話 吸血少女
58話の少し前から。
「このままじゃ、駄目だ」
そう言って私は飛び出してきたんだ。なのに、何も出来ていない。
あれから2日経った今、初めて人を見つけた。しかし、相手も能力者だ。
「フゥ〜今日の分終わり! 気付いたらもう五十人か! もうこれ俺の土地だな!」
……独り言を呟く小太りな男だ。男の言う通り大量に死体が男の足元に転がっている。これは、私が止めるしかない。
「おい、何やってるの」
「お? 子供がまだ生きてたのか……まあいいさ、同じ目に遭わせてあげ」
「そういうの、いいから」
私は男の声を遮り近付く。誰でもいい、血を貰わないと。男でも死体からでもいい。そうすれば間違いなく男に勝てる。
「虎」
虎を作り出し、男に送りつける。
「屍共よ! 血を捧げろ!」
男が叫んだ。その瞬間、幾つもの死体から血が鋭く鋭利な形に変化し襲い掛かってくる。私にとってそれは最高だが。
「……ッ! 血はどこに行った!? 俺の血は!?」
「喰ったんだよ私が。お前じゃ一生私に勝てない」
体がドンドン軽くなっていく。飲む度相手の攻撃が遅く感じる。
「ガキ一人に負けるわけねぇだろ!!」
* * *
「……勘弁してくれ……いや、してください」
「……ここの人達を、生き返っては殺すのを繰り返してたんだよね? 私とこの場所から遠のいてくれるなら許してあげるけど」
「……分かりましたよ」
男は渋々私に従うようだ。……しかし、この戦いに意味はあったのだろうか。虚しい。
「……そうだ」
「貴方の名前は何ていうの」
「荒野斗真……年齢31歳」
「倍も違いますね。荒野さん着いてきてください。あと攻撃しようとしても無駄ですから全部吸収します」
* * *
あれから4日間、二人で色んな所を周った。今は海廊中まで行くのに何時間もかかるとこまで来ている。此処からなら貴田財団に向かう方が若干近いのかな。
「明日で9月ももう終わるのか」
荒野さんが呟いた。あれから色々あって今では普通に喋っている。
「……気配がする」
「……え? どこだ!?」
近くに怪物を気配を感じる。一体どこから……
「いや……怪物は、お前だ。荒野」
「な、何を言って」
「荒野さんに成りすますなァ!」
腕に凶暴な爪を生やし、切る。男の正体は怪物だ。
「チッ! 久しぶりだねえ、君は一人で何してるんだい? もしかして、仲間外れになっちゃった? ハハハハ!!」
私には見覚えがない。恐らく前回会った怪物なのだろう。それでもここで殺す。
* * *
「はぁはぁ……」
「手を止めてると負けますよ!」
「くっ……おらぁっ!」
「そんな攻撃は私に通らないわよ!」
「おーい三人共一体ストップ! 大変だ、貴田暁が……来たぞ!」
「おい知音! 聞いたぞ! 無事か!? 心配で一人でここまで来てしまったぞ!」
「烈王は、烈王は無事か!?」
「……烈王さんは、拉致されました……」
「そんな……」
「……………………知音以外の貴方達は一体……?」
「魔莢です」
「愛莉です」
「この子達の担任、鈴木です。よろしくお願いします」
* * *
「なるほど、そんな事が」
俺達は今まで起きた出来事を全て話した。ここには俺達以外居ない事、この三人は元々能力者だった事、そして四人で鍛えて皆を守ろうとしている事。
「……何故、ここまで来ようと?」
「それは、向こうに居たときに聞いたんだ!」
「聞いたって……誰から!?」
「それは……」
「…………あれ、誰だっけ」
「暁さんはここに居てください。愛莉、知音! ここから出るぞ! 鈴木先生に後は任せます!」
魔莢は俺達を引っ張り、武道場から飛び出た。
「まさか――」
「ああ、間違いない。これは罠だ。直ぐに奴らが襲ってくる。お前ら時間見てないと思うから言うけどもう八時だぞ!? 俺達が全員を守らないといけないんだ」
「……怪物が一匹、近い」
「……ワイヤー?」
「ッ!」
寸前で愛莉がこれを切り、何とか避けられた。
「一体、どこから」
「居た。上だ。愛莉、魔莢。やるぞ」
「おう!」「分かった!」
皆は、俺が守る。




