第五十八話 破滅
「ガキ共を殺せえぇ!!」
「背の小さいガキから狙え!」
大量の大人が襲い掛かってくる。能力は前に健人や知音と合流したときの奴らと同じか?
「それって……」
「俺ら兄妹の事馬鹿にしてんだろうが!!」
「「許さない!」」
聞いたこともないような、衝撃音が響いた。二人の能力の合わせ技は完璧なコンビネーションで次々と敵を殴り飛ばしていく。
「二人に続いて戦うぞ――」
遠くから小さな物体が此方に向かってくるのが見え、即座に刀で切りかかる。これは、銃弾だ。
「……何処からだ」
「あっちだ弘成! 行くよ!」
「分かりました希那さん!」
俺達は撃ってきた方向に向かって行く。
バン!
銃声が何発も聞こえるが刀で凌いでいく。
「硝子の世界!」
二人で硝子だけの世界に入り、すぐさま刀を作り直した。
「くらえっ!」
作った刀を思い切りガラスに向かって投げる。前の自分なら、投げてもすぐに刀は消えていたが、今の俺なら少しだけ持続する。
「割れた!」
投げた刀はぶつかり、ガラスは割れていく。そして、もう一度刀を作る。
「おらっ」
残った硝子に切りかかり、力づくで壊した。
そして、世界は戻った。
「何人切れた?」
「六人。それでもまだまだ……」
「副作用とか! 気にしなくていいのか?」
敵を吹き飛ばしながら明人が俺に近付いてきた。
「副作用なら心配ない! 健人がいるから!」
「……! なら安心だな!」
安心した表情で明人は離れ、敵をまた次々と倒していく。
「弘成君! 私も戦ってみせるわ!」
「雅姫さん!?」
雅姫さん達の方を向くと、鞄の中にずっと眠っているあの怪物の心臓を掴んで出した。
……が、何一つ変化しない。心臓も消えないし雅姫さんの様子も変わらない。
「な、なんで!?」
「あのバカ女を殺せええ!」
「目立ってる目立ってる! キャアアアアア!」
「俺がいるからそんな叫ばないで!!」
賑やかであの空間だけ楽しそうに見えた。
「死ねえぇぇ!」
「当たるか!」
すべての攻撃を壁で守り切った。そして、跳ね返した。
「うわぁぁ」
弾き飛ばされた大人達の情けない声が俺にも聞こえてきた。
「……姉さん、これは使わないでおこう。お互い気まずいだろうし、無理はさせたくないからさ」
「うう……ごめんね健人」
「……弘成! 明人! こっちは大丈夫だから残りを!」
「「分かった!」」
俺と明人の声が見事にハモる。こんな日が来たのは久しぶりだ。何故だろう、人を殺しているのに、楽しい。
「――あれ、スマホに通知が……」
「! 弘成! 知音からだ!」
知音から連絡……? 嫌な予感が頭によぎりはじめる。
「読み上げるぞ! 『皆ごめん。学校に怪物一体、俊樹にトラバネが襲ってきた。それに他の能力を持った奴もいる。飛龍も敵だ。助けに来てほしい』」
情報量が多いが、何よりもこの敵の数を知音一人で凌ぐどころか全滅まであり得る。それでも。
「学校まで向かうぞ! それいつのだ!」
「……五分前。急がないと!」
「でも敵の数が……それに、クラスメイトとはいえ、あんな言われようでも助けに行こうって思えるの?」
「当然じゃないですか! 希那さんと一緒! 仲間なんですから!」
「陽向の言うとおりです! 唯智君もいます! この七人なら絶対に倒せます!」
「……拙者は行かない」
「え?」
思わず、疑問の声が漏れた。美奈香さんは俺達に目を合わそうとせずにそう呟いた。
「トラバネや飛龍には効かないだろうね、この能力は。それに……」
「これ以上、皆に人を殺してもらいたくないよね」
ハッと気付かされた。人を殺していた事に何も疑問を抱かなかったなんて。ここに居る全員その事に気付かされたようで、思わず黙り込む。
「ここは任せて。この敵全員夢に堕とす。追いつけそうなら、追いかけるよ。だから、皆行って」
「……分かったミナカ。雅姫さん、車探しますから、運転お願いします!」
「トラックでも何とか運転するから、任せて!」
「美奈火さん、ありがとうございます」
「……弘成君。貴方が希那や皆を守ってね。君なら絶対に出来るから」
「……ありがとうございます」
美奈香さんに向かってお辞儀をして、俺達は建物を走り抜けた。
「逃がすなあ!」
「眠れ!」
「ぐうぉ……」
「おらっ!」
「お前らの攻撃は防げるぞ」
健人と美奈香さんのお陰で簡単に逃げる事ができた。
「車探せ探せ!」
「皆乗れる普通車かでっかい車!」
「あったよ!」
「これだ!」
見つけたのは六人乗りなんて余裕で出来る巨大な車だ。
「都会便利だな!」
「行くわよー!」
急いで俺達は乗り込んだ。そして、勢い良く車は発進した。
「は、速い! 100キロ超えちゃいますよ!?」
「運転技術は一流よ! 任せんしゃい!」
「キャラも変わってるし!」
「いざという時は俺がいるから問題ない!」
「問題ある!」
最早アトラクション並の速さで走っている。希那さんは怖いのか、少し声が震えていた。それに対して陽向はいつも通り冷静なままだった。怖い。
「作戦ターイム!」
明人の大きな声で作戦会議が始まった。
「健人! なんか言いたそうにしてたよな! 言ってくれ!」
「それなんだが、さっき使わなかった怪物の心臓を利用する。もしかしたら、俊樹を助けられるかもしれない。そうすれば、烈王さんの居場所も分かるかもしれない」
「その作戦の内容詳しく!」
「それは――――」
* * *
「……で、どうだ?」
「……なるほど」
「いけそう」
健人の作戦を基に考えた結果、かなり完成度の高い作戦が出来た。これなら、上手く行くかもしれない。
「あと数分で着くわッ!」
「わかりました!」
これなら初めて助けられるかもしれない。救世主になれるかもしれない。
そう……ヒーローに。




