第五十六話 人を超えし怪物
健人を止める事は出来るのか。
「…………戻って来た……?」
俺の視界の先には夢を見る前と何も変わらないように見える。時間は、どれくらい経ったんだ?
「……弘成……健人を止めるよ」
「……能力が、暴走したのか?」
「うん。殺すんじゃなくて、思い出させてあげるの。健人が皆の悪夢を壊したから、私達で健人の悪夢を終わらせてあげないとね」
「……ううっ」
続々と目を覚まし始める。明人と希那さんも今の状況を察したようだった。
「この六人なら出来るさ、だろ? 弘成」
「ああ――」
空気が一瞬淀み、そして揺らいだ。俺は咄嗟に能力を使い、刀で衝撃を受け止める。
「くっ……」
その威力は今までの健人と比べて間違いなく倍以上になっている。
「うわぁ!」「キャッ」
「!! 皆!?」
五人は健人の攻撃を受け切れずそのままに壁に押し付けられた。
「う……うっ」
「雅姫さん!」
勢い良く背中を打ち付けられ、うめき声をあげる雅姫さん。本当に健人の意識は残っていないようだ。
「俺が雅姫さんを守る! だから弘成達は健人を止めてくれ!」
「明人、ミヤちゃん。後は私達四人に任せて。ここに戻す為に、頑張るから」
「行くぞ!」
「あ゛」
健人から漏れ出た言葉も聞き取れず、気が付くと身体が、足が地面についていなかった。
「ち、近づけない……」
「……弘成、昔の事覚えてるよね? あの合わせ技するよ」
「……はい!」
健人を助ける為には、この記憶をフル活用しないと助けられない。
「硝子の世界!」
「ッッ!!」
この世界に入っても壁は残り続ける。なんなら、入るのが一秒でも遅かったらこの攻撃を直にくらっていただろう。そして、どんな攻撃なのかも分かった。自分を中心に壁そのものを作り周りを圧し潰す攻撃だ。最初の一発目はまだ威力が低かった。しかし、これ以上打たせると一撃で死ぬ威力になってしまうかもしれない。
「斬りますッ!」
刀を一振りするが、傷一つ付かない硬さ。刀では斬れない程の分厚さだ。
「世界が戻る……」
「希那さん俺の後ろに――」
刀を使い、希那さんを背に世界へ戻る。その直後に二回目の衝撃をくらった。
「……っ」
陽向はなんとか衝撃を緩和したようだが、かなりの衝撃をくらっていたから立ち上がれなさそうだ。
「まずい……」
これじゃ埒が……。
と、何処からか物体が飛んできた。
「攻撃範囲現状約20m。これを放置しておいたら危なそうね。拙者が招いた事だ。少しだけ協力してやろう」
「忍者……」
「彼は素晴らしい夢を見ている、だが、夢が浅い。寝相が悪過ぎるね、だからもっと拙者がぐっすりと寝れるようにもう一度能力を使う。そうすれば沈静化を――」
「あ゛あ゛」
三回目の衝撃が、忍者の話の最中に飛んできた。さっき飛ばしたクナイから身を守る為に発動したようだ。
「発動条件は攻撃されたらなのか……?」
「ぐ……はぁ、は、はぁ……当てる方法までは考えてないわよ」
……いや、方法ならある。この場にいる全員が協力し合えば、間違いなく上手く行く。
「陽向! 頼む俺達の近くまで来てくれ! 忍者は、俺達に向かって能力を使った奴を投げ込んでくれ! 明人はそのまま守って健人の攻撃が病んだら健人まで走って。いける……! これなら止められる!」
「弘成。如何すればいい」
「希那さんは俺の声に合わせて能力を使ってください!」
「分かったわ」
「……弘成っ、来たよ」
「忍者! 手裏剣を!」
「りょーかい!」
手裏剣は斜め右上から俺に向かってくる。刀を作り、構えて伸ばし、それを斬る。刀に手裏剣が刺さった状態になり、声を上げた。
「今です!」
「硝子の世界! 陽向も!」
再度この世界に入る。俺の右側に希那さんが、そして陽向も加わった二人もいる。
「陽向! この壁を壊して! 陽向なら出来る!」
「そんなの――当たり前ッ!!」
「レイッキャノン!」
その光は貫通させるためではなく、壁全てを破壊するための攻撃。砕けた硝子の隙間から、健人が見えた。
「斬るッ!」
手裏剣を斬った勢いで半時計回りに回った俺は右足で刀の勢いを止め、軸足を左足に入れ替え、刀の向きを変える。
そして、健人に掠るように振りかぶった。
「届いた……」
その瞬間に元の世界に戻り、壁が辺り一帯に飛ぶが、俺達の所だけはただ風が通り過ぎただけだった。
「健人ッ!」
能力を使い身体を強化した明人が雅姫さんを守りながら健人の元へと飛び込んでいく。
「致命傷は与えてないはずだ……」
健人に能力は効いたようで、先程までのうめき声は聞こえなくなり、動きも止まった。
「健人……?」
これで、やっと健人を助けられる。
「お前を――」
「人のままで――」
「――いや、怪物なんかにはさせないからな」
健人の目は俺をじっと見つめていた。
六人の協力により、健人の攻撃を止める事に成功!
無事に健人を助けられるのか……?




