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第五十三話 決裂

「このままじゃ駄目だ」



 遠くなる意識の中聞いた言葉。彼女は立ち上がり、一歩ずつ私から離れていく。気が付くと彼女は飛び去って消えた。




「……クソ!」



 少しして自分の意識がはっきりと戻ってきた。烈王さんを連れ去られ、真凛はトラバネ達を追って消えた。ここで生き残っているのは私だけだ。トラバネと戦って皆殺された。私達はトラバネ達に敗北した。

 ただ、地面を叩いている余裕なんてない。



「真凛……待っててよ」



 すぐに立ち上がり、真凛を追うために駆け出そうとするが、血の匂いを感じ止まった。



「………弘成」



 私達が守った二人の死体がいる。玄関には明人達がいる。四人を守るべきなんじゃないか。


 でも、真凛はたった一人の親友だ。ここで追わなかったらもう二度と会えないかもしれない恐怖。



「お前は仲間を捨てないと思ったが」



 そう、何処からか声が聞こえた。誰の声かは分からないが、私はその声には覚えがあった。



「……怪物?」



 当然だが返事は無い。それでも確信した。私の怪物が言った言葉、それを信じる事にした。

 弘成と希那さんの死体を持ち上げ、学校の中に連れて行く。真凛の事は一旦諦める事にした。






 * * *


「ごめんなさい……」



 両膝を着いて、頭を下げ土下座をする。烈王さんが連れ去られた事を雅姫さんに告げた。相手の顔を見れる余裕なんて何も無い。全て私のせいだから。



「……他の皆は?」


「他の皆は、死んで入るけど体は取られませんでした。ここまで持ってきた全員です。そして、俊樹は……私達に嘘をついていて」


「……分かった。……色々言いたいことあるけど」



 怖い。どんなに怒られても仕方ない事をしたんだ。思わず目を瞑ってしまった。



()()を守ってくれてありがとう」


「……え?」


「烈王が連れ去られたなら、取り返せばいいもんね! 何だかんだ烈王は生きてるから! 心配しなくていいのよ!」


「……ごめんなさい」



 結局、謝る事しかできなかった。辺りはもう暗くなり、続々と私達の元に集まり始める。そして、四人の死体を見て驚き涙目になっている友達もいた。



「…………皆、死んだのか」



 遠くから疲れきった顔で知音が現れた。



「ごめん、烈王さん私のせいで……真凛もどっか行っちゃったし……」


「ああ、とにかく詳しい事は明日話そうぜ。皆が生き返ってから――」


「これからどうするか、決めよう」



 そう言われ、あっという間に一日が過ぎた。

 日付は九月二十四日。ループするまでは残り十三日。もう既に十日も過ぎた。怪物は半分残っているが、良いペースだ。でも、ここまでボロボロの状態じゃ今回も駄目かもしれない。



 16時になるのを待つ間外のベンチに腰掛けていると、後ろから知音が隣に座ってきた。



「……どうしたの」


「望月姉弟は弟の唯智の方は学校に残るってさ。雅姫さんが烈王を探す為に外に出させるのは危険だって。陽向はこれからどうするつもりだ?」


「私は……戦うよ。烈王さんを取り戻す為にも、俊樹を倒す為にもね」


「……そうか。実は俺、これ以上戦うつもりはないんだ」


「………………え」



 今まで必死に戦ってきた知音の意外な言葉に驚いた。



「な、なんで」


「これじゃ、勝てない」


「……ッ!」


「利名子達を巻き込みたくないんだ。俺と利名子は学校に残る事にした、どうせ皆戦うつもりだろう? 話し合う必要もないさ」



 私が黙っていると、そのまま立ち上がり、また中に戻って行った。

 勿論、知音をとめる言葉は思い浮かばず、また一人で考えていた。







 * * *


「知音、本気で言ってんのかよ」



 16時をとっくに過ぎていた事に気づいた私は急いで学校に戻った。そして戻って直ぐに聞いた言葉がこれだった。



「明人、悪いな。俺はここの皆を守る事にする。俺一人が欠けただけで戦力なんて変わんないだろ?」


「ふざけんなよ……」



 明人は怒りを顕にするが、それを堪らえようと必死に握り拳を作り震えている。



「……分かったぜ知音。俺達で真凛と烈王さん達を探しながら怪物を殺してくる。……もし、ここが襲われたなら、電話してくれよ、すぐに駆けつけるから」


「……ああ、分かった。雅姫さんも、希那さんもそれで大丈夫ですか」


「勿論だよ、私の能力で今度こそは取り戻すよ。……兄さんは今まで私を探し続けてくれたんだから、私が見つけて上げないといけないんだ」



 希那さんはそう言いながら笑ってみせた。本当は二人とも辛いはずなのに、笑顔を取り繕ってくれる。余計自分の弱さが目立って居づらくなってしまい、すぐに出ていくことを決めた。




* * *


 ここから出ていこうとする七人。私以外に明人と、健人と、弘成と、そして希那と雅姫。知音と利名子を置いて外に出ていくことになった。



「……ありがとう陽向」



 突然、健人が私に話しかけて来た。いつもなら少しオドオドとした様子で話し掛けて来るが、今回は違った。



「何?」


「俺の能力の事ありがとう」


「え?」


「もう一個、俺には能力があるってこと教えてくれてありがとう。絶対、思い出してみせるから」


「うん! お互い、頑張ろう」



 お互いを励ましあって学校を離れた。三人のいない学校に。







 * * *


「……これからどうしようかな」


 俺は離れていく七人の背中見て思った。何も出来なかった俺に価値はあるのだろうか。本当は、俺さえ居れば烈王さんまで救えたんじゃないか。そんな後悔が襲ってくる。でも、後の祭りだ。



「これ以上、後悔はしたくねぇ」



 皆には悪いが、俺にも俺なりの目的がある。来るべき日の為に、そして、この世界を守る為に。俺は学校に残る事にした。



「特訓だ」



 そう呟き、七人を最後まで見る事はしなかった。()()()()の所へ向かっていった。

俊樹裏切り、真凛失踪、知音と利名子離脱、烈王誘拐

ばらばらにされた彼等は今でも戦い続ける。

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