第五十二話 争奪
現在生き残り
真凛、陽向
死亡者
弘成、明人、健人、烈王、希那
陽向視点から
ピピピピピピピ……。部屋中に時計のアラーム音が鳴り響き、私は目覚めた。鳴り響いた音を止め、時間を確認した。
「もうこんな時間……?」
スマホの画面には大きく16時と表示されていた。今朝はすごく体調が悪かったが、今は何とも無くなった。でも……なんだろう、この不安は。保健室には私以外誰も居ない。外で何かが起きている……そんな不安が襲い掛かってくる。ベッドからすぐに出て置いてある私の服に着替えて外に飛び出た。
「……真凛?」
「……何してんだよ、俊樹」
地面には健人と明人が伏せており、真凛が能力を使用している。それどころか俊樹までも能力を使っているように見える。
「まさか俊樹――」
「黙れ!」
「!……」
俊樹の怒号が飛び、私達は黙り込む。それで私は察した。彼が不安の正体だと。
「……ねぇ俊樹、こんな事辞めよう?」
普段の私だったらこんな事は言わない。それは俊樹にだって真凛にだってすぐ分かっただろう。二人とも動揺している。でも、私は本気だ。
「なんで私達で殺し合わないといけないの? 無意味だって……だから、手を降ろしてよ」
涙が零れ落ちそうだ。
「いつもみたいに馬鹿にしてみろよ! ビビってんのか!?」
「俊樹……貴方は何でこんな事してるの」
「え?」
真凛の思いがけない一言で、俊樹は止まる。
「お、オレはただ……世界を救おうって…………いや
違う! オレがしたかったのは……何だ?」
「オマエの目的は四人を連れ帰る事だ俊樹」
教室側の廊下から謎の男が現れた。しかし、その風貌には見覚えがあった。
「お前は、あの時の!」
この男は前回、生き返ってすぐの時に出会った怪物とバットで殴り合っていた奴だ。あの時よりも強そうに見える。
「あ? ああ、あの時の泣いてた弱虫かぁ。構ってる暇ねえから逃げるぞ俊樹」
「くっ……」
よく見ると男は三人の死体を抱えていた。弘成と、烈王さんと、希那さんを一人で抱えていた。三人が殺された事実も辛いが、それよりも優先しないといけないのは三人の身体を守る事だ。
「陽向! 俊樹の能力は幽霊を操るの!」
「ゆ、幽霊?」
「首とか狙ってくるから気を付けて!」
「分かった。こうすれば……いいでしょ!」
光を全方向に打ち出し、それを全て動かした。前はこれで明人達を殺してしまったが、今度は大丈夫だ。真凛だけなら当てずに済む。
「やべえ、当たる」
……わざと当たろうとしている? 能力を解除して、反応を探る事にした。
「……お? まさか気付いたか? オレサマの能力がコピーって事によ!」
「ペラペラ喋ってくれてありがとう、知らなかったよ」
「は? あぁ苛々するなぁ! 面倒くせえ」
と言う事は死んだ二人の能力も使えるかもしれない。刀を使うか、それとも加速だったり減速させたり操れるかもしれない。警戒しないと。
でも、私達二人で勝つのは無理かもしれない。三人を助けるにはどうすれば……。
「おい俊樹動けよ、外で待たせてるだろうが、ワープ出来ねえぞ」
「……はあ」
「硝子の世界」
なんだ――――――
一歩踏み出したと思えば、目の前から男と俊樹は消えていた。誰の能力は分からないが、やられた。
「まさか逃げられ――」
「まだ、逃さない」
真凛がそう言うと、外に二人の姿が見えた。
「!」
一言も話さず駆け出した。真凛は翼を生やし異常な速さで窓をぶち破った。割れた窓から勢い良く二人揃って飛び出し私は光を撃ち込んだ。
「チッ、まあいい当ててみろ!」
「お前には当てない!」
男の目の前で分断し、俊樹に数発あて残りを三人の死体に当てた。
「そんな事してなんの意味が……!」
「!!」
光を当て死体ごと吹き飛ばす。二人の死体は私達の足元まで届いたが、一人の死体は反対方向へ飛ばされた。そして、その先には黒いフードを被った小柄の人物が立っていた。
「……そんな」
「まって壁を――」
言葉よりも先に光の壁を作り出す。最低でも二人の死体を守らないと。半球体の壁を作り、私達と死体を囲んだ。
半透明の光の先に奴等が見える。
「おいトラバネ、急がねえと! このワープ維持するのキツイんだッ」
「追いつけぇ!」
真凛の獣達が三人に襲い掛かろうとするが、彼等の牙や爪は空を切る。
「じゃあな、頂いていくぜ」
「待てっ!!」
「あと三人……」
そう言い残して男達は消えて行った。そこに誰も居なかったように。静かになってしまった。
残った死体は弘成と希那。
「負けたんだ……私達」
「……奪われたあいつらに」
二人揃って膝を落とす。烈王さんとの最後の会話は思い出せなかった。
足元の死体を見るだけで涙が溢れだす。――このまま死ねたらどれだけ楽だろう。死んだ皆はどう思うだろう。新たな不安に今度は押しつぶされてしまい、気を失った。




