第四十九話 大誤算
凄く文章が汚いです。
前回は
弘成視点、健人視点、烈王視点が目まぐるしく移り変わりましたが、如何でしたか。面白かったでしょうか。
「あの時を思い出したよ愛莉」
「ずっとずっと思ってたんだ。ソイツだけは絶対に殺さないと、って」
「……愛莉を殺せるのは、俺だけだ」
身体も刀も重い。これ以上の能力の使用は脳が持たない。一生記憶が壊れたままかもしれない。それでも俺は、彼女を殺さないと。
「な、何を言ってるの……?」
「は?」
愛莉が今更震えた声で話し出した。こうなったのも全部自分のせいだというのに。
「……弘成と居られたあの日々はとても幸せだった。今は敵同士だった。……私の言いたいこと、分かる?」
「――全く分からないし、分かりたくない」
「……!」
「今までの愛莉はもうどこにも居ない」
俺がそう言い切ると、先程までの愛莉は消えた。躊躇いを見せない、俺のよく知っている仮面女に成った。
「あーあ、私は二人で逃げるつもりだったのにな♪ もー、酷いよ弘成♪」
「時間制限なしの再戦しようぜ、絶対に殺すよ」
* * *
「はあはあ……先生、中々強いじゃないすか……」
「……やっぱり戦うのは辞めましょう」
鈴木先生は落ちかけた眼鏡を戻し汗を腕で拭き取った。
「そこにいる俊樹君が、一番の罪人だ」
「……」
「彼が、私達全員を騙している。最悪の能力者を使って全員消すつもりだろう」
「……」
「ああもう! 俊樹何か話してみろよ!」
明人が沈黙に腹を立て、俊樹の胸ぐらに掴みかかろうとした。しかし、掴む直前に明人は静止した。
「……明人? どうしたんだよいきなり……グッ!?」
何者かに首を絞められる感覚。息が本当に出来なくなり焦りだした。
「やっぱセンコーにはバレるか。ああ、そうさ。俺が……いや、俺達がおめえら全員殺す」
「明人は何も止めようとしない、ただの傍観者。そのまま能力なんか持たなかったらこんな酷い目に遭わずにすぐ死ねたのにな、まぁ自業自得だ、そのままくたばれ」
「次に健人。お前は可哀想に今のままじゃ誰にも見向きされないよ! こんな弱い健人なんて、誰も望んでないからね!」
「……!」
俊樹の言葉が、突き刺さる。言い訳も出来ないほどの正論で俺自身すら思っていた事だ。でも、こんな所で死ねない。
俺は何が俺の首を絞めているのか分からないが能力を使って引き剥がす事にした。締め付けられた部分から空気の壁を作り、首を中心に円を巨大にしていく。少しずつ緩くなり数秒で呼吸が出来るようになった。
「ッハーッ!! ……はぁはぁはぁ」
何とかこれで戦える。俊樹は俺が。
「オォラァ!」
俺は吹き飛ばされた。壁にぶつかる衝撃で俺はその事に初めて気付いた。思わず動揺して能力が途切れた。また首が締まりだした。
「ン……あ……ぁ……グ……ァァ……」
「オレが最強の能力者、トラバネだ。俺も狙いは例の四人だけ、
雑魚には構ってられんさっさと息絶えロ!」
「トラバネ。無駄さ、コイツラもう死んでるから」
トラ……バネ……?誰だ?何故だか聞いたことがあるような名前だ。でも、思い出せない……
ごめん、陽向。今の俺じゃ駄目みたいだ。
そのまま俺は息の根を止めた。
* * *
「……ヤバイ」
「突然どうしたよ?」
唐突に目の前で魔莢が焦りだした。普段でもここまで焦る魔莢は見たことが無いぞ。一旦戦う手を止めて話を聞いた。
「鈴木先生達が俊樹達に襲われている」
「は? ……俊樹はお前達の仲間じゃ」
「そんなんじゃねえよ! 俺達と俊樹は違う。俊樹は最強の――完成した能力者と共に行動している。これの意味……分かるか? ……分かるよな?」
まさか。
「二人が俺達を殺しに……!?」
「そういう事だね。俺はもう逃げる」
「は!?」
「ここに居たら、皆死ぬぞ?」
* * *
愛莉と戦い始めてから五分。お互い息を切らしながら、己の武器を使い戦っている。周りは植物で視える範囲がかなり制限されているがこの刀で断ち切ることで視野が広がる。烈王さんと希那さんの声が聞こえているが最早どこにいるかも視認出来ない。
見えた。植物の出処がはっきりと分かり、刀を構えた。あの時の一戦を思い出して走り出した。
「くらえっ」
「罠だよー♪」
愛莉に切りかかった俺の身体は余りにも無防備過ぎた。茨がいたるところに突き刺さり、掠り、傷を増やしていく。でも、そんなので俺は止まらない。
「死ねェ!」
「――辞めなさい!」
は? その言葉が俺と愛莉で揃った。目の前には希那がいた。大袈裟に言ってる訳ではない。本当に唐突に目の前に現れたのだ。
「遂に思い出しちゃったね♪ この――」
「最悪なタイミングにね♪」
入り口の方から突風が吹き出しているのがこの室内でも分かる。植物で閉じ込められていた俺はあっという間に障害物全てが消えていったことにすら気付けなかった。今までとは反対に頭が冴える。
「うああああああああああああああああ」
自分でもう身体を操れない。この雄叫びも自分の意識外からだ。この不思議な感覚を恐れながらもどうしようもないため、それに全てを委ねた。
「おいおい五月蝿えなクソガキ。トラバネ様が相手してやらあ。全員ぶっ殺してやるからよ」
「愛莉、烈王、希那、そして弘成。お前らが全員揃って、しかも能力まで思い出させた。最高だよ」
烈王達は俊樹の言動に困惑していた。何も知らないからそうか。特に烈王はトラバネという名前に聞き覚えがあるようだ。だが、貴方が知っているトラバネとは別人だということを俺は知っている。
コイツは俺と陽向しか知らない、狂人だ。この戦いに生き残る事が出来たなら。俺は、俺達はこの狂った事件の全てを知る事ができる。俺の記憶が、そう囁いていた。
トラバネ。
現在習得判明能力
砂を操る。衝撃波を与える。




