第四十八話 読み違い
「私をこんな皆の前に出させたのは何でなの?」
俺達の目的を知らない彼女は腰に手を当て頬を膨らませた。俺達は今、教室棟の二階にいる。周りにはクラスメイト達が何をするんだと眺めている。今から俺と女との関係を断つ。それは、殺す以外の選択肢は無いが。殺した後は何も考えていない。結局俺は、その場しのぎの作戦しか考えられなかった。恐らくは、体育館か何処かに閉じ込めておくしかない。
「君が俺達を騙していた『裏切り者』、なんだろ」
「……愛莉」
答えを待たずに俺は構え刀を作り出した。鞘の付いた刀を。
* * *
「……何を……言ってるんですか、明人君に健人君」
「そ、そうだぜ。突然俺を能力で抑えつけてさ!」
「俊樹、もしそうじゃないなら謝るが今嘘付いてるなら許さないからな」
「…………私達は戦う理由はないです」
「間違いない……か」
そう言うと明人はなんの迷いも無く鈴木に襲い掛かった。能力を使い腕を増強させ、鈴木の顔を殴ろうするが右腕で防がれた。防いだ右腕の生地が破れて腕の部分が露出された。表れたのは黒光りの大砲のような物だった。
「これが私の能力です。貴方達の気力を削がせていただきます」
「黙れ!」
「保健室には行かせない」
現在地は保健室前の玄関付近。ここで二人を殺すなり抵抗出来ないようにしなければならない。明人達は覚悟はしているが、健人は謎の違和感の正体に気づいた。
何故、俊樹と鈴木がここまで協力的ではないのかと。本当は、仲間ではなく俊樹は何も関係無いのかと色々な疑問が頭の中で駆け巡り始める。しかし、その無駄な思考のせいで、目の前の出来事に対する判断が遅れた。
ドガン。鈴木の大砲から本物のようなとても重い玉が健人の鳩尾に直撃するが、間一髪能力を使い薄い壁を作り上げ、軽減させた。吹き飛ばされながらも何とか耐え切ると、鈴木は汗を垂らしながら覚悟を決めたような表情で構えた。
「二人を、守らないと」
* * *
「……やっぱり争うのは辞めよう知音」
「そう思ってるなら能力を使用しないでくれないか、魔莢」
魔莢はそう言われるとニヤけ、机を操り、知音のいる方向に投げつける。どうやら魔莢の能力は金属製の物を操るに違いない。だがそれは知音にとっては相性が良過ぎた。知音は能力を止めない魔莢を止める為、操っている物を自分の能力で打ち消し反対に操る事を試みるが、操るのに普段以上の力を入れてもびくともしない。
「重複させたいなら、もっと力を加えないとだよ。まあそう簡単には出来ないけどね」
「くっそ……」
「俺達は生き延びてやる」
その言葉に知音は違和感を感じたが、気にしない。目の前の敵を倒す事だけを考えていた。
* * *
「……何だよこれ」
「……弘成の能力が限界を迎えている」
「え?」
「私達の能力じゃ、それが限界って事よ」
愛莉の言っている意味が分からない。何で俺の限界が分かるんだ。いや、俺自身は限界なんてある訳がないと思っている。だが、この刀に付いた鞘を抜く事が出来ない。封印されているようだった。
「……これでも戦ってみせる!」
鞘から抜け出せない刀で俺は彼女に飛びかかる。が、直ぐに植物の枝で守られ彼女の半径1mより近くに入るこむ事ができない。
「に、逃げろ!」
「愛莉、嘘だ!」
クラスメイトの悲鳴が、より不安を増長させる。慌てて周りの皆は逃げたが、今の自分では太刀打ち出来ない相手だと分かり、迷っている。
能力が使えるようになったきっかけがそもそも愛莉で、俺に敵を倒す覚悟を決めさせたのも彼女だ。彼女が居たから今ここにいるだけで、彼女の居ない俺に存在価値なんて無かった。
「俺にとって、君は恩人だ。だからこそ俺は、君を超える。愛莉を超える事が、今ここでいる意味なんだ!」
「――それは違うよ。私はそんな事なんて望んでない。私にとって貴方は」
「――覚悟はしてたんだ。どんな壁があっても、全て壊すって」
俺は、鞘を無理矢理抜こうと力を入れる。びくともしないが、暫く無かった頭痛が復活した。力を込めればそれだけ頭痛は激しくなる。
「もう、もうやめてよ! 私はそんなの……」
愛莉の今にも泣きそうな声を無視し、もっと右腕に力を込める。
「ハァッ!」
鍵が解けた音がし、鞘から刀身が露わになる。今までとは違い、刃先は真っ赤に染まり、異常な程重くなっていた。
「ッ!」
愛莉の植物が襲い掛かってくるもこの刀を振り回し、切り刻んでいく。一度切り込みも入れた瞬間に、刀が軽くなっていく。
「……殺し合いだ」
最早意識は朦朧としているが、愛莉の為ならそうなってもいい。俺は愛莉を殺す為刀を握り構えていた。




