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クリティカル・リアリティー  作者: ガラン/藍染
愛と青春と裏切りの旅編
50/95

第四十二話 無表情

「……急に、どうしたんですか」


 ……。



「……何の用ですか」


 その言葉で意識を取り戻す。ここは何処だ。真っ白で汚れのない、見覚えのある景色だ。目の前にはベットに腰掛けている純真無垢そうな少年がいた。


「……良かったら椅子にでも座ってください」


「……ああ、ありがとう。でも、遠慮しておくよ」


 そのまま俺は立ち尽くす。何の目的で俺はここにいるのか。




 ――すぐに思い出した。俺はこの少年が()()()()()()()()()()()()に選ばれた事を、祝いに来たんだ。



「そうだ、おめでとう! これで君も、人の為に生きる事ができるね!」


「そうですね」


「俺達四人で、君をサポートする。五人で、世界を作

 り変えるんだ」


「!……」


「……どうしたの? 下を向かなくていいよ、大丈夫だって」



 少年は下を向いたまま、顔を上げようともせずに話を続ける。



「弘成さん、ボクはアナタが他の三人と違うと思ってたんですよ。今の惨状を、不幸だと理解出来る人だと」

「……俺は、今を不幸だとは思わないよ。幸福も不幸も平等にあって、その不幸だけを少し減らすつもりだからさ」


「ならさ……今すぐボクを助けてよ。そんな……そんなつまんなそうな顔で見てんじゃなくてさ!!」



 少年は怒りを顕にし、俺に向かって右手を伸ばした。が、壁のパイプに繋がれた手鎖のせいで届く事はない。



「さっさとこれを解いて! こんな所にボクは居たくない!」


「それは無理だ。俺は鍵持ってないからね」


「洗脳されてる事に気付いてよ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……今日はここまでにしておくよ。バイバイ」



「――怪物と同じじゃないか。無表情の怪物」









 * * *


 ピシャ!


 近くで雷が落ちた。それに先程までの匂いとは違う香りに包まれる。どうやらまた場所が変わったようだ。辺りを見渡した。これもまた、見覚えのある景色だ。



「こんばんは、お兄ちゃん見なかった?」


 この声は聞いたことがある気がする。振り返ると綺麗な容姿をした女性がいた。香水の匂いが嗅いだことのあるような匂いで、誰かに似ている。



()()さんなら、外の空気を吸ってくるって言ってましたよ」


「そっか。ありがとう! 弘成も……あの子と仲良く出来そう?」

「…………元々、顔見知りだから仲良くなれると思ってたんですけど、俺が何か話し掛けても、なんか興味がなさそうで……」



「えー! そうなんだ! でも、あの子に聞いた時は仲良くなりたいって言ってたけどなー」


「ちょっと、希那(キナ)さん本当ですか?」


 希那さんはニヤけながら俺を見ている。


「君の事が好きみたい」




 * * *


 爆発音が轟く。その衝撃で気を失っていた俺は目を覚した。ここは……どこだ?



「弘成! 逃げなさい」


「希那……さん?」


 ボロボロになった希那さんが、倒れてこちらを見ていた。辺りを見渡すと、謎の機械ばかり。誰も居ない。



「ど、どういう事ですか?」


「!! 貴方はまだ何も見ていないのね……なら、今すぐ此処から出て行って、殺される」


「分かりました」


 俺は希那さんに背を向けて走った。ここで違和感に気付いた。自身の思考と、行動が一致しない。というか、勝手に体が動いている。



「こんな下らない事、ここで終わらせるんだッ!」


 灯りもない為どこにいるか分からないが、声が聞こえた。中性的な声だ。この声は、聞き覚えがある気がする。


「どこに居るんだエ――」















 * * *


 チュンチュン。何処からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。目をさました俺はゆっくりと瞼を開く。



「あぁ……? 起きたぁ? ……よがっだぁ」


 声のする方向に目を向けると、目の下に深いクマが出来た、雅姫さんが椅子に座っていた。目以外は保健室に居ても何ら不思議はない様子でいた。


「……ここは?どこです?」


「……ごめんね、君達の学校なの」


 雅姫さんは深いため息をつきながら自分を責め立てるように、頭を抱えた。


「……弘成君が目覚めたのは良いことだけど、まだ陽向ちゃんは目を覚まさないし、殆ど死んじゃったからどうしようもなかったの、ごめんなさい」


「い、いや謝ることなんてないですよ。それと、ため息は吐くと幸せが逃げますよ」


「はは……そうよね、次からは気を付けるわ。体は大丈夫そう? 副作用とか」


「大丈夫ですよ! 今の所……は」


 激痛が脳に響く。何かを忘れたような感覚。



「俺は……」


「? どうしたの?」



「俺は、()()()()()()()()


「え? 今言った通りだけど……」


()()()()()()()()()()()()()()()

雅姫はあれからずっと起きていたそうです

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