第三十五話 成長
………………。
あ……あれ?……いつの間にか寝ていたのか、辺りは暗くなっていた。体感で日が変わる直前くらいだろうか。
「あ、弘成起きた? ガムでも食う?」
「烈王さん……食べます」
烈王さんからガムを頂く。起きているのは烈王さんだけだ。
他の三人は肩を持たれあって寝ている。知音は死んだ皆の近くで眠りに落ちている。ガムの包装を外してガムを噛んだ。
「なぁ弘成、なんでこんな次々と俺達は襲われるんだろうな?」
「…分かりません」
思わず顔を背ける。烈王さんからこの質問が来る事自体予想外だった。
「正直に言ってくれよ、『おかしいです』と」
「……」
「俺が君らと会う前まではここまで遭遇しなかった。俺達を確実に殺すつもりか、それともどこか連れて行こうとしているかは分からないが全力で襲い掛かってくる」
「……明らかについて来ている奴がいる。俺達の中に」
「もしくは学校内にいるかもしれない」
「そうだよな、弘成。どこかに『内通者』がいる。見つけ出さないといつ仕掛けられるか分からない」
「……烈王さん、なんで今この話を? もし、俺が内通者だとしたらどうするんですか」
「……弘成だけは有り得ない。俺の勘がそう言ってる」
「そ、それだけで……」
「俺とお前は何処か似ている気がするんだ」
「そう……ですかね?」
「能力じゃなくて、行動が似ている気がする。俺達には明確な目的があるだろ?」
「「怪物を全滅させる」」
声が揃う。烈王さんの顔は冗談を言っている訳でないと訴えていた。でも、その表情には何か違和感があって、それがなんなのかある程度検討は付いている。
「妹の為じゃないんですか」
「伏せッ」
咄嗟にしゃがんだ。外から大量の砂が風に吹かれてこの高台まで飛び散っている。
「敵だ」
「四階建てなのに攻撃出来るって強そうですね……」
「今までの人間とは違う。完全に殺意を持って襲いに来ているぞ。砂も当たったら相当危険だ。気を付けろ」
「えッ!?」
俺の気の抜けた声で寝ていた皆が起き出した。
「……うるせえな弘成」
「知音、敵が来てる」
「……怪物?」
「いいから起きろ」
陽向と知音は目を覚ましたが、疲れが溜まっているのだろうか、利名子は眠り続け、真凛と唯智君はまだ虚ろな目をして、ボーッとしていた。
「……俺、能力使ってもいいですか?」
「副作用が怖いが……とりあえず自衛の為なら使っていいぞ」
「了解です」
「ギャァッ」
陽向の叫び声に振り返るとそこに姿は無かった。代わりに下から物が落ちたような衝撃音が聞こえた。
「陽向ァ!?」
四階から下を見下ろす。
「待てっ弘成ァ!」
俺は砂に掴まれ、外へと放り投げられた。
でも、こんな事を陽向に、仲間に対して行った奴は許せない。殺してやる。そう思った瞬間、右手には刀が握られていた。
「オラァッ!」
砂を切り、地面スレスレで受け身を取ることができた。打ち付けた箇所が痛むが、対峙している敵を殺さないと。奴は100m程離れた場所で砂を操っている。女だ。
「アンタらには悪いけど、殺しに来た」
「ウォッ!」
鈍い音がし、後ろを振り返ると、烈王さんがうめき声を上げながら地に伏せていた。
「ちょ、烈王さん大丈夫ですか?!」
「て、おーい! アタシの話を無視すんな!」
「……誰だ?」
「さっき言ったよね? 私はアンタ達を全員殺しに来た。理由? 聞かれても答えないから」
「……俺達に3対1で勝てると思うのか?」
俺はコイツが何か隠しているように見える。相当な実力者であることも分かるが、何か隠し玉でもあるのか?
「3対1? 良くないなぁ……大人に嘘つくなんて。上にもう一人いるでしょ」
「……ッ‼」
「だとしても、私は負けない。さぁ、かかってきなさい」
左手でクイックイッと挑発した素振りを見せてくる。こんな時に体力は消費したくない。能力を使った以上記憶が飛ぶことを承知で、出来るだけ短期決戦を目指すか。
とりあえず、落とされた二人の状況ははっきり言って良くない。だから、まずは俺一人で戦うしかない。
刀を強く握り、俺は走り出した。




