二十九話 意思表示
出来るのか?できないことはないかもしれない。でも、もし取り返しのつかない事態になったらと考えるだけで辛くなる。
「……分かった。任せてよ」
「……ああ」
覚悟はしていた。そうやって勢い良く飛び出した。
「真凛! コレ持ってて!」
遺物を真凛に託し前を向く。泥に向かって手を突き出し構え打つ。
泥が吹き飛ぶ音に重なって鳴き声が聞こえた。烏の鳴き声。
「キャッ!」
烏達は真凛を襲い、外へと投げ捨てる。
「真凛!」
考えるよりも先に体が動いたが、それは私だけではなかった。誰よりも早く、明人が走り出し、二階の廊下から真凛を追って飛び込んだ。
「そんな……」
「いいから向かえヒナタァ!」
ごめん、明人、真凛。壁を殴ったような音が聞こえたが先を急ぐ。
「光循環ver2!」
全身に光を巡らせ、泥の中に飛び込んだ。今度は全身から漏れる光で泥を溶かす。簡単に教室棟まで入ることに成功した。外よりも泥の数が少ない。そうやって痕跡を辿っていく。暫く奥に行くとより複雑な泥が増えてくるが、ポカンと穴が空いたように隙間があったので通り過ぎて源へ向かった。
体育館のギャラリーに入ることの出来る扉の前に辿り着いたときにはもう周辺に泥はいない。静かに扉を開き、中に入る。柵の隙間から除くと、巨大な泥を纏った怪物と対峙する弘成が見えた。息を潜める私と対象的に息を切らしながら怪物を見据える弘成。よく見ると怪物も息遣いが荒い。
「中々やるようだね……僕の玩具をこんな簡単に倒せるなんて、想像以上だよ……‼」
今回の怪物は他のとは様子が違う、何かを知っていそうだ。
「まぁまずは鼠を利用させてもらおうかな」
突然、視界が真っ暗になる。意識もだんだんと薄れていくように感じる。一体何が……。意識外から自分の体は操られた。




