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第一話 幸せの崩壊(前編)

一つ一つが無駄に細かいです。よろしくお願いします。本編はかなり後になると思います

知音編から本編です。

「――忘れないで」




 嫌な夢から俺の意識を釣り上げたのは目覚まし時計の電子音だった。

 すぐさまアラームを止め時計に目を向けるとデジタル表記で9月15日6時30分という表記が目に写る。

 俺は額の汗を軽く拭き取り、一階のリビングへ駆け足で降りる。



「おはよう、弘成」



 母さんだ。俺が起きる前から食事の支度を済ましてくれていた。



「おはよう、母さん」



 いつも通りの挨拶を交わしてから椅子に座った。親はいつも食事を作るとすぐに仕事に出掛けるので、あまり話をすることはない。朝食を食べ終わった頃には既に居なかったので洗い物を済ませ、余裕が合ったのでシャワーを浴びる事にした。家を出る時間にはもう7時20分だ。



「いってきます」



 誰も居ない家に向かって声を出した。



 学校までは30分で着く。

 俺の名前は深谷弘成ふかたに ひろな

 クラスでは学級委員長をしていて、今日も特別な日にするつもりだ。


 学校に入るとすぐに賑やかな声に包まれる。



「おっはー!」


「おはよう。今日はテンション高いなぁ。明人」



 彼は高山明人たかやま あきと。いつもテンションが高くて思わず心が弾む。



 そして、昼休みになると、



「皆! 準備はいいかー? 行くぞー!」



 そう言って、皆を動かせた。

 明人の声にクラスの皆は笑顔になる。みんな明人に着いていく。

 俺達は二階の技能教科教室エリアに向かった。

 そう、今日計画していた事は俺達が毎月行っている『お楽しみ会』がある。


 このクラスは三十数名ほどだが、それぞれが仲が良く笑顔で家庭科室に入っていく。

 俺は慣れた手つきでDVDをセットし再生を始めた。後から来た先生も嬉しそうだ。無事に再生が始まっているのを確認し、俺は定位置に座る。所謂仲良しグループに入る。勿論、明人も一緒だ。





 * * *

 一時間経っただろうか、映画も中盤に差し掛かる。劇中ではゾンビが大量に表れ主人公達に襲いかかり、仲間達がドンドンと殺されていた。名作映画だが、一度見たことがあったのでそろそろ退屈になり、ふと廊下を見る。



「……え?」



 そこには、人よりも大きく、3M〜5M、いやそれよりもあるのか、筋肉はくっきりとしていて、人とは思えない()()がいた。




 非現実的なその光景に俺は声が出ない。外を見続けている俺に気付いた明人は、視線の先を向き、すぐに外の様子に気づいた。



「うわぁぁぁぁぁ!!!」



 明人が悲鳴を上げたと同時にその怪物は此方に走り出し、腕で勢いよく窓を突き破った。その音だけが響き、騒ぎ出す声によって割れた音がかき消される。



 怪物は窓から室内に入ってくるとドアに一番近い俺は急いでドアを開けるが、後ろから逃げ惑うクラスメイトに押し出された。その時に初めて気づいた。外では悲鳴どころか、物音すらしない。人が消えている。教室から聞こえるはずの賑やかな声はなく、代わりに嗅いだことのない異様な匂いがする。



「皆、逃げろッ!」



 背後からクラスメイトの声が聞こえた。俺は明人が付いて来てるか気になり俺は振り返る。すると、ベランダから逃げようとしている様子が見えた。教室内はよく見えなかったが鈍い音が聞こえてくる。



「ハァッハァッ」

 


 俺は息を切らしながら走り出し、一階へ降りる。そのまま駐車場へ駆け抜けると二人の先生が学校車に乗って待機していた。俺らはすぐにその車に乗り込む。



「皆さん乗りましたね! すぐに行きますよ」



 学校車に乗り込めたのはたったの12人。その中に明人はいた。



 全員がパニックに陥り、口を噤んだ。どこに向かうかも分からないまま二十分が過ぎる。沈黙が続き、俺はその空気と状況に耐えきれず運転している先生に話しかける。



「――どこへ向かってるんですか?」


「………安全な所です。絶対に安全ですから」



 会話はそれで終わる。

 6人も乗っているはずの車内は静まり返り、空気が重い。あの明人ですら黙っていて、俺は頭がパンクしそうになる。

 ……何も考えたくない。自分も皆に合わせ、顔を伏せる。落ち着くために。そう言い訳しながら眠った。

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