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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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ホラー

首狩り競争

作者: 山目 広介

 夢を夢と認識できるという明晰夢。これがそうなのだろう。初めての経験だ。

 だが慣れていないせいか、思うように動かない。

 状況も支離滅裂だ。

 ちょっと旅行をしていただけで、こんな悪夢を見ることになるとは。


 悪夢。そう、目の前の光景だ。

 目出し帽を被った者が、猿轡と目隠しをされた黒髪の男を押さえつけて、髪を持ち大振りなナイフを首筋に当て、ストップウォッチを片手にした他の者の準備を今かと待ち望んでいる様だ。

 もう一人目の者は終えていた。

 明晰夢だからか、むせ返る血の匂いに吐き気がして胃液が咽喉を激しく焼いた。

 そして始まる二人目のタイムアタック。

 一人目の褐色の肌の男とは違い、二人目の事務仕事で日に焼けていないような青白い肌の黒髪の男は、より自分と照らし合わせて似通っているために共感と呼ぶべき物を湧き上がらせる。

 妙に鮮やかに色付く赤が飛び跳ねる。心臓の鼓動の所為か、噴き出る血液の勢いが一定ではなく波打ち、自身の鼓動が激しさを増す。

 ごりっとした音とともに刃が止まる。頸椎に引っかかったのだろうか。その後多少手こずったが首を持ち上げて自慢げに掲げる。

 恐怖に股間が痛いほど縮こまり、押し上げてくる。鳥肌が立ち、背筋を悪寒が走る。

 あまりのリアルさに意識を失ってしまう。


 目が覚めると、なんて恐ろしい夢だったろうと息苦しさを覚えた。上手く呼吸が出来ない。

 周りを見るとよくあるパターンだと気付いた。

 まだ悪夢から覚めていなかったようだ。

 首を持った目出し帽と持っていない目出し帽。その前には蹲る首のない者と首のある者。

 首を持っていない目出し帽が3人。首のある蹲った者が2人。

 目出し帽の一人がストップウォッチを持っているから数に問題はない。そう問題はないはず。

 蒸し暑さを感じていたが、肌寒くなり冷や汗が止まらない。エアコン要らずだ。

 背中を伝う汗を気にして、後ろ手で背中を掻く。

 そして残っていた者の首が切り離された。

 なぜか。

 ストップウォッチを持っていた男が他の者に手渡し、腰から大振りなナイフが引き抜かれる。

 ドキリと緊張した。

 刃を確認してまた鞘に納める。

 鼻から安堵のため息を漏らす。

 そのまま眺めていると長い布を手に持ち、こちらを向く。

 なぜか、なぜか、視線が合う。

 ドクン。鼓動が激しくなる。

 本などの知識での客観的ではなく、主観的に心臓って左に寄っているんだと感じた。

 逃避している間に近寄ってくる。一歩また一歩。

 ははは、と乾いた笑いを漏らそうとするも、ふごふごとくぐもった声しか出せなかった。

 後ろに回り込まれて目隠しをされる。

 髪を掴まれ、首筋に冷たい物がが触れる。

 ああ、目が覚めたら、布団を干さないと……

 恥ずかしいなぁこの年でお漏らしとか。

 熱い物が流れ、顔が冷めていく感覚。痛みはどこへ行ったのか。なんて悪夢だ。


 最後の者は一番のベテランなのだろう。手際良く、意識が途切れることもなく胴から切り離されたのが分かるぐらいだった……




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