はざまから
句切りが悪いので、投稿
背丈の二倍はあるような扉。
それに背中を押し付けるように寄り掛かります。
荒れた風の声、地面を叩く降り荒む雨の音。
そんなモノ達にまぎれるように、長い長い廊下の奥からオルゴールの音は静かに、ゆったりと流れていました。
玄関先であろうこの場所に、照すほどの明かりはなく、薄暗く高い天井は、見上げても暗いだけで何も見えはしない。
今立つここもまた、薄暗く、扉の小さな丸窓から差し込む──
なぜ外が明るいのか、気を配る気にもなれない。
不安で、こわい。
長く長く続く廊下は、三歩進めば闇のよう。
暗い暗い影のみち。
勝手に上がり込んだ手前、声を掛けない訳にもいかない。それとも、今すぐに外へ戻るのか。
いや、ソレは絶対に嫌だ。
ナニカがいた、ナニカがこっちを見ていたのだから。
それに、だれかに会うためにここに来たのだ。
不安に駆られ、奥に進もうかと一歩を踏み出したとき、足下に何か居ることに気がついた。
何かの影は足にまとわり付き、横腹を押し付けて来る。
薄暗い足下は、ぼやぼやしていて、よく分からない。
何が居るのか分かず、しばらくはジっとしていた。
ふいに、足下をくすぐる感覚に何かの憶えをいだく。
「──ッネコ?」
なぜ知っていたのか、なぜ解ったのか。
それは誰にも知れない事だ。
それでも確かにそれは、猫だと解る。
しゃがみこみ、猫の眉間上のおでこに、震える掌を添える。
ゆっくりと流すように後方へと動かして、
掌を耳に被せる。
首の手前に来ると、ぴょこんと耳は元に戻る。そのまま背中を撫でる。
その耳と触れる毛並みが、彼の心を癒すかのようだ。
猫は、撫でられながら、特に逃げるわけでもない。
不思議そうにそのまんまるのクリクリとした目で、こちらを見上げる。
少し不安も薄れた。
猫の脇に手を差し込み、ゆっくりと抱き上げる。
わずかな薄明かりにうつるのは、猫の綺麗な黒い毛並み。
艶やかではなく、沈むような優しい黒。
抱き上げた黒猫は、変わらずこちらを見上げる。
左右色ちがいの青と黄金の、その瞳で───
ふいに黒猫は、腕から飛び降りた。
トコトコと、
こちらと影の境目の、その狭間に立ちながら、こちらに首だけ振り替える。
相変わらず、不思議そうに見上げるその瞳。
まるで、誘っているような。
そんな感覚を覚えた。
もう、戸惑うこともなく。その黒猫の背中を追うように歩きだし──────
◇◇◇
薄暗い通路には、猫を追う少年の足音だけが、響き渡る。
オルゴールの音は消え去った。
いつのまにやら、消え去った。
誰にも、何にも気が付かれもせず。
流れ去ったその音色達。
それは、きっと散っていく。
きっと、誰もがすぐに忘れてしまう、そんなおと。
外は、まだ。
騒ぎ立てる彼らの世界。
しばらくすれば、それもきっと止むでしょう。
<忘れし昔を思うモノ> より 第一章、オルゴールの音に乗せて~
たぶん、次回辺りは、ホラー要素が薄めになるかと
(不定期投稿です)
よかったら、感想とかアドバイス等々くれると嬉しいです!
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それでは、皆さんの良き小説ライフを~
(† ̄ω ̄Τ)Κ <マタネ>